これぞウメノキゴケ!? 梅の木じゃないけど
ウメノキゴケ。
漢字では「梅ノ樹木毛」。
名前に「コケ」とありますが、地衣類というコケとはまったくちがう生き物。
コケは植物ですが、地衣類は、強いて言うなら菌類。
キノコかカビ。
それが光合成をする藻類と共生したもの。
地衣類の代表格と言えるウメノキゴケ。
名前のように梅の木についていることが多いですが、ほかの木にもつきますし、石などにもつきます。
そのウメノキゴケと出会いました。

場所は和歌山県九度山町の丹生官省符神社(にうかんしょうぶじんじゃ)の石造大鳥居。
ここは、高野山の参道の一つ、町石道(ちょういしみち)のスタート地点、慈尊院の上にあります。
慈尊院と丹生官省符神社を結ぶ石階段の途中に町石道の始まりを表す百八十町の石の卒塔婆(そとば)がたてられています。
その隣りにあるのが、石造大鳥居。

梅の木についていないこと以外は典型的とも言えるウメノキゴケかもしれません。
『「木毛」ウォッチングのための手引き 中級編 近畿の地衣類』によるとウメノキゴケの特徴は。
灰白色から灰緑色
葉状(平たい苔類のコケのような形)
大きさは10cm以上になることも
地衣体の中央部に裂芽(ちいさなつぶ)がある
通常は子器(胞子をつくるところ)はつけない
樹皮状や岩上で生育する普通種

腹面は黒だけど先端は淡褐色
葉縁にはシリア(黒くて短い毛のようなもの)がない

おお、ぴったり!
ウメノキゴケです。
ウメノキゴケなどが木に寄生して枯らすという人が時折います。
石(多分、栄養がないことで有名な花崗岩)の上でこれだけ大きくなるのですから、樹木からの栄養で育っているわけでないことは明らかでしょう。
この鳥居が立てられたのは宝永ニ(1705)年。
ただし、この場所には明治四十三(1910)年に移されたそうです。
それからおよそ100年。

地衣類はとても成長が遅く、1年で数ミリと言われます。
10センチ育つためには数十年。
このウメノキゴケはここに移されてしばらくたってから芽を出したようです。
人間の寿命と同じくらい生きているかもしれません。
町石道の歴史とくべると一瞬ですが、それでもかぞえきれないほどの巡礼者を見送ってきたのでしょう。
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タグ: ウメノキゴケ 地衣類 丹生官省符神社 石造大鳥居 高野山町石道
