落ち着いて! 猛毒だからって危険じゃないよ! ヤマカガシ
兵庫県で中学生がヤマカガシにかまれるという事故がありました。
報道などを見ていると、日本在来のヘビの中で最も強い毒を持つ「毒ベビ」という部分ばかり強調されます。
動物の毒の強さを表す指標に「LD50」というのがあります。
その数字が小さいほうが毒が強くなります。
ヤマカガシは0.27mg/kg。
マムシは1.5㎎/kg。
沖縄の毒蛇のハブは3.42㎎/kg。
この数字で言えば、ヤマカガシの毒はマムシの5倍以上、ハブの12倍以上。
確かに日本在来の有名毒蛇を遥かに凌駕する毒の強さ。

でも、そんな猛毒のヤマカガシがどうして知名度が低かったのでしょうか。
それどころか、何十年か前までは無毒とされていました。
ものすごく不思議です。
まず、毒の強さと毒の作用の強さは必ずしも一致しないのです。
強い毒でも、量が少なければ影響も弱いですし、弱い毒でも量が多ければ影響が強くなります。
毒の強さは一つの目安で、実際は強さと量の掛け算になります。
毒蛇の場合は少量でも安心できませんが、そもそもかまれて毒が注入されなければどんな強い毒でも影響はありません。
つまり、ヤマカガシは滅多なことでは毒を注入しない、またはできないので、猛毒でも毒蛇と思われていなかったのでしょう。

ヒキガエルの毒を首の毒に再利用
ヤマカガシは山いけばよく出会うヘビですが、そっとしておけばすぐ逃げていくでしょうし、決して危険なヘビではありません。
ヤマカガシを捕まえなければならない事情があるのなら別ですが、普通はそんな事情はないでしょう。
ただ、動物は危険と感じた場合身を守る行動を取ります。
ヘビの場合、かみつくことも身を守る行動の一つ。
ですから、いたずらにヘビを刺激してはいけません。
また、ヘビは人間の気持ちなどわかりませんので、悪意や敵意がないことは伝わりません。
必要以上に近寄らないことがいいでしょう。

しかも大阪では準絶滅危惧(NT)です
また、ヤマカガシは首のあたりにも毒腺があり、捕まえたときなどそこから毒を飛ばすことがあります。
こちらも目に入ると失明することもある強い毒です。
牙の毒は攻撃にためというよりも、捉えた獲物をおとなしくさせることが一番の目的と考えられますが、首の毒は完全に防御用。
つまり、攻撃しなければ、毒を使うこともないはず。
ヤマカガシに出会っても、なにもしないことがなにより。
もちろん、噛まれた場合や毒液をかけられ体調が悪くなった場合は、いち早く医療機関へ行くことをおすすめします。
■参考外部リンク■
兵庫:公園で毒ヘビにかまれ小5男児重体 ヤマカガシか - 毎日新聞
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