『恐竜の骨をよむ 古脊椎動物学の世界』犬塚則久 著 講談社学術文庫 刊 この本を読めば恐竜展でつっこめるようになる、かもしれません
タイトル通り骨(化石)から恐竜が生きていた姿を再現していく本。
と言っても、特定の恐竜を復元するのではありません。
復元していくための「骨のよみかた」を教えてくれます。
まず最初に、博物館の復元骨格の見方が描かれていて、読めば恐竜展でツッコミができるようになるかもしれません。
言うまでもなく、恐竜は今はいません。
地面の下から掘り出される化石から、大昔に存在していたことがわかるだけ。
警察関係のドラマなどで、被害者の骨から事件の様子などを解き明かし、そこから犯人逮捕につなげていくことがあります。
それができるのは、本人を含めて多くの生きている人間のことがわかっているから。
しかし生きている恐竜を見たことがある人は、一人もいません。
ですからドラマのようにはいきません。

今はいない恐竜と言っても、近い仲間の爬虫類や鳥はいます。
そして体のバランスや力の出し方、筋肉のつき方などは今の動物と共通するところも多いはず。
ですから今いる動物からわかったことを元にして、恐竜を復活させます。
そのための古脊椎動物学の教科書として書かれた本です。
わかるようでちょっと想像しにくい「古脊椎動物学」については、まえがきにこのように書かれています。
古脊椎動物学の真髄は復元結果の見本市ではなくて、脊椎動物の骨学や筋学、歯学、それに比較解剖学、機能形態学、生体力学などを手がかりに恐竜など絶滅動物の真の姿を探る謎解き、推理の面白さにある。
確かにこの本を読むと、骨だけからでも読み取れる情報が多いことがわかります。
今まで幾つもの骨格標本を見てきました。
中には二度と見ることができないものもあったかもしれません。
もっと早くこの本と出会っていれば、見え方も変わったでしょう。
〈大阪市立自然史博物館常設展示〉
四肢を広げて泳ぐのが得意そう
指も大型動物らしく立て気味の新しい復元

四肢を真下に伸ばした牛のような格好ですが
指を開いてぺたりとつけるのが違和感を感じる古い復元

著者が絶滅動物の科学的復元をはじめるようになったきっかけが
デスモスチルスなどの束柱類だそうです
ただ、ちょっと、いやかなり残念なことは、骨の図説が少ないこと。
巻頭に恐竜の骨の説明がありますが、ほとんどそれだけ。
ところが、そこに名前が示されていない骨や、哺乳類などの骨の名前ががどんどん出てきます。
研究者を目指すのなら基礎的な知識は持っているものというのはわかります。
しかし、講談社学術文庫というシリーズの性質からすると、知識を深めたいけど専門家でない読者も少なくないと思います。
やはり、もう少し本文に出てくる骨の説明をする図版がある方がいいと思います。
いや、必要だと思います。
もちろん、図版が少なくても、恐竜の生きていた姿に興味がある人は、読むべき本の一つなのはまちがいないと思います。
■参考外部リンク■
『恐竜の骨をよむ 古脊椎動物学の世界』(犬塚則久):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
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