『とりぱん』18巻 カモだってお肉を食べます!
もう20巻がでたというのに、ちょっと古い18巻です。
『とりぱん』とは、4コマを主体とする野鳥マンガ。
くわしくは、こちらに。
まずはいきなり肉食カルガモ。
といっても、ほかの鳥やネズミなどを襲うのではなく、産卵を終えて力尽きたサケを食べます。
カモ類というと、多くの人は植物を食べる草食とイメージするかもしれません。
実は、カモ類だけでなくときおり虫などを食べる「草食」の鳥は多いのです。
たしかに、カモ類は草の葉や実などを食べます。
でも、実は、エビやカニや水生昆虫なども食べます。
もともと、鳥は肉食の恐竜から進化した生き物。
肉食でも不思議はありません。
海で育ったサケを食べる陸(淡水)のカルガモ。
陸から流れでた栄養で育った海の生き物を陸(淡水)へ戻す循環を、カモの肉食で表現しています。

そしてアメリカ西部の旅行記。
目的のハチドリをはじめアメリカの珍しい鳥が次々に登場しますが、観光案内の比率が高く、鳥の観察が少ないのがちょっと残念。
ということで18巻の鳥は、肉食系カルガモ。
と言いたいところですがちょっと出番が少ないので、別の鳥。
それは、カケス。
カケスはカラスの仲間ですが、派手な模様とケンカを売っているような目つきが特徴。
そしてなによりも、しわがれた不気味な鳴き声は一度聞いたら耳についてしまいます。
平安時代の京都を恐怖に陥れた妖怪鵺(ぬえ)の鳴き声はこんな感じでは?
そんなカケスですが、まだキャラが立ってなく、愛称もついてない新顔扱いですが、これからの活躍に期待。
ちなみに、鵺の鳴き声の主はトラツグミと言われていますが、聞いたことがないのでよくわかりません。

『とりぱん』にはいろいろな鳥が登場します。
カケスの他、ゴジュウカラにアカゲラにアオゲラと、大阪では山に登らないと出会えないような鳥たちが庭にやってきます。
ちょっと信じられないほど、すごい!
いつもものすごくうらやましくてたまりません。
『とりぱん』に出てくるのは、実は鳥だけではありません。
植物ネタ、つけものネタ、いろいろな動物ネタも魅力のうち。
動物の中でもよく出てくるのが、虫。
しかし、世の中には鳥が好きでも虫が嫌いな人がいるのが現実。
ネットでも見るに耐えない言いがかりのような文句を見かけることもあります。
そのためか、一時期、虫ネタの減少、虫表現の簡略化が目立つこともありました。

それが18巻ではなんとアゲハ子カフェ(案)が登場!
猫カフェのようにお茶を飲みながらアゲハチョウを愛でる場所。
それも、蝶じゃなくて、幼虫。いもむし。
その気持、わかります。
イモムシは飼ってみると、これが意外と可愛かったりします。
それに温室に蝶を放している昆虫館なら、すぐにもできそうです。
『とりぱん』のいいところは、「鳥かわいい!」と偶像扱いするのではなく、生き物としての鳥のリアルな姿を描いているところ。
さらに、鳥だけでなく、虫を含めて多くの生き物と一緒に生活している姿も描いているところ。
そこにはもちろん見ている人間もいます。
それがとりぱんのいいところで、すごいところ。
動物の行動を物語として描いた作品は『シートン動物記』が有名です。
動物を擬人化しながらも、人間とは世界が違う生き物として描く『シートン動物記』とちがい、人間も鳥も虫も同じ世界の生き物として描く『とりぱん』が好きです。

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