公園ネコを考える2 分類学的にネコについて考えてみることにしました。
【公園ネコを考える1 ノラネコについて考えてみることにしました。】
の続きです。
「ノラネコ」について知ること
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」
中国の古典「孫子」の言葉。
相手についても自分についてもよく知ることが大切ということ。
それで「ノラネコ」について、どういう生き物か考えてみることにしました。
「ノラネコ」は分類学的な種類ではありません。
分類学的には「リビアヤマネコ」を品種改良してつくられた「イエネコ」に含まれます。
ノラネコから飼猫まで、普通「ネコ」と呼ばれる身近な動物は、みんな「イエネコ」です。
みんな同じ種ということですが、人間が様々な品種をつくりだしたため、同じ種とは思えないほどちがいが出ています。

「ネコ」は分類学的には次のように分けられます。
ヤマネコ
和名:ヤマネコ 学名:Felis silvestris
言葉としては野生のヤマネコや、山に住むようになったイエネコなどいろいろな種類が含まれます。
分類学としては、ネコ属の「ネコ」。
ヨーロッパ周辺の在来種の野生の猫と、そこから品種改良された身近なネコも含まれます。
日本在来種のイリオモテヤマネコやツシマヤマネコはベンガルヤマネコ属という違う属になります。
イエネコ
和名:イエネコ 学名:Felis silvestris catus
ふつうに「ネコ」と呼ばれる動物。
ヤマネコの亜種、つまりヤマネコという種をもっと細かく分類した時の名前。
飼猫も野良猫もみんなひっくるめた名前になります。

ベンガルヤマネコ
和名:ベンガルヤマネコ 学名:Prionailurus bengalensis
ベンガルヤマネコはベンガルヤマネコ属ですので、ネコ属のイエネコとはちがう種類になります。
日本在来種の「ネコ」イリオモテヤマネコとツシマヤマネコは、ベンガルヤマネコの亜種。
つまり、日本在来種の「ネコ」はベンガルヤマネコだけで、身近な「ネコ」はすべて外来種ということになります。
イリオモテヤマネコ Prionailurus bengalensis iriomotensis
ツシマヤマネコ Prionailurus bengalensis euptilurus
「学名」の見方
ここで学名の読み方を少し。
学名を覚えるのは大変ですが、学名の仕組みを覚えると学名からいろいろなことを知ることができ、とても便利です。
学名は世界共通に使われる名前で、基本的に一つの種に一つしかありません。
いろいろ細かいルールがありますが、簡単に見方の基本をイエネコの学名から説明します。

Felis silvestris catus
イエネコの学名は3つの言葉からできています。
最初の「Felis」は「属」という分類での名前で、頭文字を大文字にします。日本語では「ヤマネコ属」のことです。
次の「silvestris」は生物分類の基本的な「種」の名前で、専門的には「種小名」といいます。こちらはすべて小文字。日本語では「ヤマネコ」のことです。
学名の基本は属名と種小名の2つで表し、「二名法」といいます。
余った最後の一つは何かというと、「亜種名」。
日本語では「イエネコ」のことです。
「亜種」は生き物としては同じ種ですが、見た目や体のつくりなどでちょっと違う特徴をもったグループのことです。
植物の場合は亜種名の前に「ssp.」や「subsp.」とつけますが、動物の場合はそのまま続けます。

ということで、上の「ネコ」の学名3つを並べてみると、いろんなことがわかってきます。
ヤマネコ Felis silvestris
イエネコ Felis silvestris catus
ベンガルヤマネコ Prionailurus bengalensis
最初の属名は、ヤマネコとイエネコは同じですので、とても近いグループ。
ところがベンガルヤマネコは違いますので、別のグループということがわかります。
次の種小名もヤマネコとイエネコは同じですので、まったく同じグループということがわかります。
最後の亜種名がイエネコにしかありませんので、ヤマネコの中のグループということがわかります。
これらは日本語の名前からはわからないことです。
このように、学名を覚えていなくても、学名の仕組みがわかればいろいろなことがわかってくるのです。

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