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二酸化炭素はぐるぐるまわる その3「二酸化炭素と植物」


 今、地球温暖化の原因として問題になっている二酸化炭素。

 地球にはもともとはもっとたくさんの二酸化炭素がありましたが、空気中から取り除くシステムのおかげで、ほとんどなくなるまで減ったのが、現在の地球。

 前回は海のシステムについて書きましたが、もちろん陸上でも二酸化炭素を取り除くシステムがあります。



今までの「二酸化炭素はぐるぐるまわる」
その1「地球温暖化と二酸化炭素」 その2「二酸化炭素の行き先」



 陸上で二酸化炭素の姿を変えるのは植物。

 学校で習うように、植物は空気中の二酸化炭素を使って炭水化物(たんすいかぶつ)を作ります。

 炭水化物はもちろん栄養として生きるために使いますが、それ以外に体を支えるためにも使います。
 「木」として見える部分、「木材」として使う部分は、二酸化炭素が姿を変えた炭水化物でできているのです。

 ですから二酸化炭素を減らすために植物を植えようという声がよくあります。

 それについて考える前に、まずは二酸化炭素と植物の関係を考えてみましょう。



高野山の大きな杉も二酸化炭素の塊
高野山の大きな杉も二酸化炭素の塊




植物は二酸化炭素のかたまり?!

 植物が二酸化炭素からつくりだす炭水化物は生き物に必要な栄養で、酸素を使って二酸化炭素と水に分解するときのエネルギーで生きています。

 もちろん植物も同じですが、それ以外に炭水化物を植物繊維にして体を支えるために貯めこみます。

 ですから大きな樹木はたくさんの二酸化炭素を形を変えて蓄えています。

 つまり植物は二酸化炭素の塊ということもできます。



 樹木は人間よりも寿命が短いものも少なくなく、人間より長生きの樹木でも永遠に生きているわけではありません。

 寿命を迎えた樹木は、倒れ、朽ちていきます。

 この「朽ちる」というのは、カビやキノコや虫や微生物などに樹木が食べられてなくなることです。

 生き物が食べるということは、炭水化物を二酸化炭素と水に変えること。
 例外もありますが、多くがそうです。

 つまり、「木が朽ちる」ということは、木が溜め込んだ二酸化炭素を地球表面を覆っている空気、つまり大気中に戻すことなのです。

 実は、樹木が蓄えた二酸化炭素は、大気の中から一時的に取り除かれただけなのです。

 ですから地球の変化を考える学問では、植物の吸収した二酸化炭素の量は大気中にあるものと同じ、と考えられることもあります。



高野山の木を食べているキノコ
高野山の木を食べているキノコ




時間をかけてぐるぐる回る二酸化炭素

 樹木を永遠に朽ちさせないようにしないかぎり、いくら樹木を植えても大気中の二酸化炭素を取り除いたことにはなりません。

 一見、木を植えるとその木が大きくなっていく限りずっと二酸化炭素を大気から取り除き続けているように見ます。

 たしかに小さな視野ではそうですが、もっと広げた視野で見てみると、その木が成長している間にもどこかで必ず木が寿命を迎え、朽ちていきます。

 単純に言うと、木を植えて成長して二酸化炭素を吸収し続けいても、どこかで寿命を迎えた木が朽ちて二酸化炭素を発生させ続けているのです。



 樹木1本だけを見るのなら、間違いなく樹木は二酸化炭素を取り込んで成長を続けていっています。

 その樹木が人間よりも長生きしたら、二酸化炭素を吸収していく一方に見えます。

 しかし。

 視野を森全体、山全体に移していけばどうでしょうか。

 間違いなく、あちこちで木が寿命を終えて朽ちていっているはずです。

 蓄えた二酸化炭素をどんどん大気中に戻していっているのです。

 樹木をたくさん植えると、たしかに大気中の二酸化炭素を取り除くことができます。

 しかしその木ですら、子や孫、曾孫の代になって寿命を迎えると、逆に二酸化炭素の発生源になってしまうのです。

 このように大きく広い地球の環境を考えるときには、広い視野と想像力が必要なのです。



高野山の森のなかで朽ちていく木
高野山の森のなかで朽ちていく木




地球表面の二酸化炭素循環

 大気中の二酸化炭素は地球の表面をぐるぐる回っているだけで、樹木を植えても、樹木を切っても現実的には、量は変わりません。

 たとえば、木を燃やして木を植えるようなことを行っていれば、問題はありません。

 植物と大気の間をぐるぐる回る二酸化炭素サイクルの中にありますから、二酸化炭素の量は減りませんが、増えもしません。



 地球温暖化を防ぐ手段として「バイオマス燃料」「バイオ燃料」という言葉が聞かれます。

 工場で加工したり、微生物を使うなどして、樹木や食べ物などから燃料をつくろうというのです。

 これは、いきものに姿を変えた二酸化炭素を燃料として使うるわけです。

 バイオマス燃料を燃やしてももちろん二酸化炭素はできますが、それは地球表面にある生き物だったものから作られるのです。

 これは地球表面をグルグル回っている二酸化炭素のコースをちょっと変えただけですから、大気中の二酸化炭素を増やしたことにならないのです。



高野山の木々はどれだけ二酸化炭素を蓄えているのでしょうか
高野山の木々はどれだけ二酸化炭素を蓄えているのでしょうか




広い視野と想像力

 人間が文明をつくるようになって数千年。

 その間にも燃料として多くの植物が燃やされ、多くの森林を失いました。

 でも問題になるほど二酸化炭素の量が増えなかったのは、地球表面の二酸化炭素サイクルの中に収まっていたからかもしれません。

 IPCCの報告書にもあるように、大気中の二酸化炭素の量が増えてきたのは、地球表面以外の場所から、つまり地面の下深くから持ってきた炭素(石炭や石油などの化石燃料)を燃やしはじめたからと考えられています。

 化石燃料は、長い時間をかけて、地球が取り込んで地面の奥底深くに「封印」した二酸化炭素が姿を変えたものなのです。

 もちろん、そのお陰で大気中の二酸化炭素の量が大きく減ったのが、現在の地球です。



 実際には二酸化炭素サイクルにはいろいろな種類があり、複雑な経路を通っています。

 光合成ですら、とても複雑なシステムで、二酸化炭素を分解しています。

 とてもややこしいですが、数字や途中経過を抜きにして単純化して考えると、決してややこしくて難しいことではありません。

 むしろとても単純なことなのです。



 地球環境を考えるときには、ちょっと視野を広げて想像力を使ってみましょう。

 そうすれば、新しいことが見えてくるかもしれません。

 決して難しいことではありません。



タグ♦ 炭素循環 二酸化炭素

■参考外部リンク■
気象庁 Japan Meteorological Agency
(IPCC(気候変動に関する政府間パネル))

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