たった8種しかいない? それとも8種もいる? 日本の馬
恒例の新年最初の干支(えと)記事です。
今年は午年(うまどし)。
本来、干支と動物は関係がなかったのは漢字を見ての通り。
と言うのはさておき。
馬は犬や猫のように日常的に出会うような生き物ではありませんが、テレビでは身近な生き物です。
時代劇になると必ずと言っていいほど画面に登場します。
週末には多くの馬が競争しているところを中継されることもあります。
しかし、その馬は「日本の馬」ではないのです。
多くの場合は、ヨーロッパで品種改良された大柄な種類。
昔から日本にいた馬ではないのです。

阿蘇山草千里の馬
日本で見つかった馬の化石は500万くらい前のもの。
人類はまだ誕生していません。
その頃はまだ3本指だったようで、果たして「馬」と言っていいのか微妙ですが、その後絶滅。
日本から馬はいなくなってしまいました。
長い空白の後、馬が日本に現れたのは今から千数百年前の弥生時代後期から古墳時代と考えられています。
古墳からは馬の埴輪(はにわ)や馬具が多数出土しているので、古墳時代には日本にいたことは間違いないようです。
もちろん人間によってアジア大陸から持ち込まれたのです。
小柄なモンゴルの蒙古馬(もうこうま)の系統と考えられています。

古墳時代中期の石見遺跡出土の飾り馬埴輪
(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館)
日本にやってきた馬は、各地に分散し、それぞれの地域ごとの特徴を持つようになりました。
日本の馬の誕生です。
しかし明治になり欧米列強と戦うために大柄なヨーロッパ系の馬を導入、日本の馬と交配させ次第に純粋な日本の馬が減っていったのです。
そして自動車などの発達もあり、農耕にも使われなくなり、各地で馬はどんどん減っていってしまいました。
現在、日本馬事協会が「日本在来馬」として8種類の馬を認定しています。
この場合の「種類」は、生物学的な分類の「種」ではなく、それよりも更に細かい「亜種」、というよりも人間がつくりだした「品種」と考える方がいいと思います。
北海道和種馬(ほっかいどうわしゅば)
地域:北海道俗称:道産子(どさんこ) | |||||
![]() 北海道和種馬 摩耶姫号(六甲山牧場 2010年) | |||||
木曽馬(きそうま)
地域:長野県木曽地域・岐阜県飛騨地方長野県天然記念物 | |||||
![]() 木曽馬(六甲山牧場 2010年) | |||||
野間馬(のまうま)
地域:愛媛県今治市(いまばりし)今治市天然記念物 | |||||
![]() 野間馬(天王寺動物園 2009年) | |||||
対州馬(たいしゅうば)
地域:長崎県対馬市(つしまし) | |||||
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御崎馬(みさきうま)
地域:宮崎県都井岬(といみさき)国の天然記念物 | |||||
![]() 御崎馬(宮崎県都井岬 2009年) | |||||
トカラ馬(とからうま)
地域:鹿児島県トカラ列島鹿児島県天然記念物
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| 宮古馬(みやこうま)
地域:沖縄県宮古島沖縄県天然記念物
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| 与那国馬(よなぐにうま)
地域:沖縄県与那国島(よなぐにじま)与那国町天然記念物
| ![]() 与那国馬(六甲山牧場 2010年) |
馬は主に農耕や荷物の運搬などに使われてきました。
もちろん今ではそれらに使われることはなく、せいぜい観光用に人を乗せる程度。
半ば野生化しているような馬もいますが、多くは有志が集まって絶滅しないように飼育をしている状態です。
半ば史前帰化のような動物ですが、千年をかけて日本で誕生した馬です。
世界中、いや日本でもほかの地域にはいないような馬。
しかしすでに役割を失ってしまった馬たち。
これからどうなっていくのでしょうか。

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