《ビオトープとは その4》水槽に水草とメダカを入れたらビオトープでしょうか?
インターネットショッピングで「ビオトープ」を検索してみると、よく水槽と水草のセットが出てきます。
水槽に水草とメダカを入れるとビオトープの出来上がり、のようです。
「ビオトープ」のはじまり
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発展していくドイツで、自然を開発から守るために考えだされたものです。
日本語の漢字では「生物生息空間」などと書きます。
もうちょっとだけわかりやすく書くと、動物や植物など様々な生き物が一緒に暮らすひとまとまりになる場所のことです。
つまり、場所という視点で生き物をみることです。

都会の中のビオトープの新梅田シティの新・里山
なにがビオトープ?
例えば森の中の池。自然の池は浅いところや深いところがあり、それぞれの深さに応じた植物が生え、浅いところには葦が茂っていたりします。
池の周りにもいろいろな植物が生え、その周りには水辺でも平気な樹木が生えます。
池の中には昆虫から魚までいろいろな動物がいます。
水辺の植物や池の周りの木々にもいろいろな動物がいるでしょう。
池があるところとその周辺にはそれぞれの環境に応じた様々な生き物がいます。
そして池から離れてしまうと、池とは関係のない森の植物が育つことになります。
つまり、池とその周りには水が好きな生き物、水が多いほうがいい生き物などいろいろな水辺に関係する生き物たちが多様性を保ち、周囲の森とはちょっとちがう集まりを作っています。
これが池のビオトープなのです。

まわりが住宅街の池のビオトープの久米田池
となると、ビオトープとは人間が手を加えていない自然のことを言うのでしょうか。
そうではありません。
自然というのは常に移り変わっていくもので、特に人間が一度手を加えたものは手入れを怠るとすぐ違う形に変わっていこうとします。
例えばきれいな庭もなにもしなければあっという間に雑草だらけになるでしょう。
それはビオトープも同じ。
生き物の多様性を取り戻すために人工的に作ったビオトープも、手入れを怠ると崩壊してしまい、場合によっては生き物の多様性を失ってしまいます。
ビオトープは場合によっては人間が管理をするものでもあります。
もともと「ビオトープ」は人工的に生き物の多様性を戻すため、または維持するために考えだされたものです。
「水槽+水草+メダカ」を考える
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上の説明を見ると、どうやらこれもビオトープっぽく感じます。
しかし、恐らくこのような組み合わせだと、餌を毎日与え、ときおり水を換え、たまに水槽を洗わなければならないでしょう。
ビオトープの管理とは、手取り足取り行うものではなく、自然の移り変わりを調整して、生き物の多様性を守ることです。
そして出来るだけのその場所に元からいた生き物を集めること。
ということで、「水槽+水草+メダカ」もメダカが住むところにいるいろいろな種類の生き物を集め、水槽の大きさも考え、餌をやらなくても、水もしょっちゅう換えなくてもいいのなら、小さなビオトープかもしれません。
しかし、餌を毎日あげたり水をよく換えたりしなければならないのなら、ビオトープとは言えなさそうです。

田んぼも立派なビオトープの下赤阪の棚田
ビオトープのポイント
ビオトープのポイント。動物や植物などいろいろな種類の生き物が一緒にいる。
それが地域の生き物で構成されていること。
人間が管理をしても環境を整えるだけで、餌やりなど積極的な飼育や栽培はおこなわない。
そしてそれらの生き物が関係する一つの環境としてのまとまり。
ビオトープとして大切なことは生物の多様性。
いろいろな種類の生き物がいること。
これが「ビオ」の部分。
そして、もう一つ大切なことがつながりのあるひとまとまりの場所。
これが「トープ」の部分。
つまり、色々な生き物が共存できる関係のあるひとまとまりの場所が、ビオトープなのです。

人工的に作られた河原も時間がたてばビオトープの淀川のわんど
小さな水槽はビオトープと呼ぶのはちょっと難しいかもしれません。
しかしビオトープを意識して生き物を育てるということは、いろいろな生き物がいる自然について考えるききっかけになるでしょう。
まずは小さな水槽、ひとつの植木鉢からビオトープを感じてみると、生き物と環境、それがひとつになった自然について新しいことが見えてくるかもしれません。

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