【 2017年08月】

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植物から恐竜世界を考えてみる!「メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる-」〈大阪南港ATCホール〉

 巨大竜脚類をテーマにした恐竜展ですが、植物の展示もあります。
 恐竜を怪獣ではなく動物として見る場合、恐竜が生きていた環境を知ることはとても大切です。
 そうでなければ恐竜が生きていた姿がわかりません。
 それを知ることができるものの一つが、植物。
 解説書でもまったく紹介されてないちょっと可哀想な扱いですが、ぜひこの機会に見てください。
メが恐竜たちを支えていた植物たちです。

参考【年代層序表〈顕生代〉β2 動物と植物】

関西初公開のヨーロッパ最大の恐竜 トゥリアサウルス
トゥリアサウルス

 恐竜が生きていた時代だけでなく、まだ陸上に動物はいなかったかもしれないような時代から展示されています。
 植物の出現は動物よりも遅く、今から4億年あまり前。
 すでに菌類や藻類などが陸上に進出していたと思われていますが、おそらく水辺の周囲にかろうじて集まっているだけで、陸のほとんどは不毛な大地だったでしょう。

 その頃の植物は小さく、形も単純で、葉もなく、花も咲かず、種もできず、胞子で増えていました。
 今で言うと、トクサやスギナのような形だったようです。

クックソニア 生体復元
シダ植物 リニア類
シルル紀(約4億4千万~4億2千万年前)
水辺のシダ
枝分かれは単純
クックソニア

アステロキシロン 生体復元
シダ植物 ゾステロフィルム類
デボン紀(約4億2千万~3億6千万年前)
水辺のシダ
アステロキシロン

プシロフィトン 生体復元
シダ植物 トリメロフィトン類
デボン紀(約4億2千万~3億6千万年前)
プシロフィトン

ゾロテロフィルム 生体復元
シダ植物 ゾステロフィルム類
デボン紀(約4億2千万~3億6千万年前)
水辺のシダ
ゾロテロフィルム

 次第に光合成を効率よくするために「葉」がつくられ、今も残るシダのような形になってきました。
 石炭紀には、そうしたシダの中から、木のように大きくなるものも出てきました。

アルカエオカラミテス 実物化石
シダ植物 トクサ類 アルカエオカラミテス類
石炭紀(約3億6千万~3億年前)
年輪がありません
筋のある茎が現在のトクサ類に似ています
アルカエオカラミテス

 木(裸子植物・被子植物)は、毎年幹が太くなって大きくなっていく体を支えることができますが、シダは一度成長した「幹」は太くなれません。
 そのため、大きくなっていく体を支えるために、「幹」からたくさんの根を出し、それで小さな「幹」を覆って大きくなる体を支えました。
 そういった木性シダの「幹」の断面は年輪がなく、小さな管のようなものがたくさん集まっています。
 その1つ1つが体を支える根です。

プサロニウスの茎(幹) 実物化石
シダ植物 シダ類 リュウビンタイ類
石炭紀(約3億6千万~3億年前)
高さ10m以上の巨大シダ
丸く見える根がたくさん集まっています
プサロニウス

 そうやって大きくなったシダたちが水辺に倒れ、土の中で分解されることなく埋もれていったのが石炭と考えられています。
 この頃、大量の植物が石炭になったことが石炭紀の名前の由来です。
 そして大気中の二酸化炭素が大幅に減ると同時に、地球は寒冷化していきました。

 やがて、植物は胞子を葉で守ったタネ(種子)を作るようになりました。
 種子植物の誕生です。
 恐竜が誕生した三畳紀には、今につながる裸子植物が誕生していました。

アラウカリアの球果 実物化石
裸子植物 毬果類 ナンヨウスギ類
三畳紀(約2億5千万年前~2億年前)
アラウカリア

バイエラの葉 実物化石
裸子植物 イチョウ類
三畳紀(約2億5千万年前~2億年前)
葉の切れ込みが深くなっています
今のイチョウの葉になったのは白亜紀の終わりごろと考えられています
バイエラ

トディテスの羽片 実物化石
シダ植物 シダ類 ゼンマイ類
三畳紀(約2億5千万年前~2億年前)
今の2回羽状複葉のシダの葉と同じ
葉裏面全体に胞子嚢
トディテス

アラウカリオキシロンの幹 実物化石
裸子植物 毬果類 ナンヨウスギ類
後期三畳紀(約2億4千万年前~2億年前)
珪化木
抱えきれないほどの太い幹の大木
アラウカリオキシロン

ベネチテス類 生体復元
裸子植物 ソテツ葉類 ベネチテス類
中期ジュラ紀~白亜紀(約1億6千万年~7千万年前)
現在のソテツに似ています
ベネチテス

ソテツ葉類の羽片 実物化石
裸子植物 ソテツ葉類 ベネチテス類
白亜紀(約1億5千万年~7千万年前)
中生代に繁栄し恐竜とともに絶滅
草食恐竜の食べ物と考えられています

セコイアの球果 実物化石
裸子植物 球果類 スギ類
後期白亜紀(約1億年~7千万年前)
セコイア

 白亜紀には被子植物が誕生し、花を咲かせる植物が増えていきます。

サピンドプシス複葉 実物化石
被子植物 双子葉類
白亜紀(約1億5千万年~7千万年前)
複葉が現在のムクロジ科に似ています
サピンドプシス

 紹介できたのはほんのわずか。
 恐竜ばかりに目が行ってしまいますが、植物もいろいろあります。
 そして、草食恐竜の食べ物。
 ということは、肉食恐竜の間接的な食べ物です。
 ぜひ、恐竜時代の環境を想像してみてください。

 ほんとうは、植物だけでなく昆虫の化石も見たいところですが、今回はメガネウラ程度。
 ちょっとさみしい展示なのが残念です。

■参考外部リンク■
メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる- 大阪開催【公式サイト】
大阪市立自然史博物館

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第48回特別展「瀬戸内海の自然を楽しむ」でクジラのふしぎがいっぱい!〈大阪市立自然史博物館〉

 特別展「瀬戸内海の自然を楽しむ」の見どころの一つは、クジラ。
 初お目見えのザトウクジラをはじめいくつもクジラの骨格標本が展示されています。


 え、展示されてるのはイルカばかりじゃないかって?
 いえいえ、イルカはクジラです。
 ハクジラの中の小型のものを「イルカ」と呼びます。
 分類学的にはクジラとイルカのちがいはありません。
 呼び名としては、どうも4メートルあたり境界があるようですが、名前に「クジラ」がつくか「イルカ」がつくかで十分でしょう。
 ということで、今回は個別の名前以外は「クジラ」で統一します。

 そのクジラの骨を見て、不思議に思うところの一つ。
 指の骨の数。
 クジラの指の骨は、人間より多いのです。
 人間の指の骨は、見えているところが3個で手の甲の中に見えないのが1個の計4個。
 親指だけ1個少なく3個です。

ザトウクジラ 最も長い指で9個


でも指が4本しかなかったり骨の数が増えてない指があったりと
必ずしもすべての指の骨が増えたわけではありません

 クジラと人間では見た目も生活の仕方もちがうので、指の骨の数がちがっても当然。
 と思うかもしれません。
 人間とクジラは同じ有胎盤類の哺乳類。
 同じ先祖から分かれてきました。
 魚のようなクジラも元は四足の動物。
 そして、霊長類は哺乳類の古い形(基本的な形)をわりと残しています。
 もちろん人間も。
 つまり、クジラの指の骨は、増えているのです!

大阪湾にも住んでいるスナメリ 人差し指と中指だけが増える



 進化すりゃ増えることもあるだろう。
 と思うかもしれません。
 ところが、脊椎動物の進化は基本的に減る方向に進みます。
 そして、一度なくなったものはもとに戻りません。
 たとえば、一度陸上に出てから再び水中に戻って魚のようになった脊椎動物にクジラのほかに魚竜がいます。
 どちらも尾鰭には骨がなく、皮膚を変化させヒレの形を作っています。
 陸上に上がって失ったヒレの骨は戻らなかったのです。

 人間の指の骨の数は哺乳類の基本的な数です。
 展示されているクジラの手の指と比べてみてください。
 足の骨を骨盤以外なくし、腕の骨も短くしたのに、指の骨だけを増やしたふしぎなクジラ。
 その理由を考えてみるのもおもしろいかもしれません。

ハセイルカ
人差指(9個)と中指(7個)が増えていますが薬指と小指は減っています



 クジラは「瀬戸内海の自然を楽しむ」展以外でも見られます。

博物館前ポーチのナガスクジラのナガスケ
小指はなくなっているようですが指の骨数は増えてるか変わっていない



ナガスケのとなりのマッコウクジラのマッコ
指の骨はやはり人差し指と薬指が増えています


親指がわからないほど細くなっていますが5本そろっています

 本館第3展示室にもナガスクジラがいます。
 まるでくじらの博物館のようです。
 また、自然史博物館が主催しているもう一つの夏の展。
 ATCの「メガ恐竜展2017」にもクジラが展示されています。
 「瀬戸内海の自然を楽しむ」と「メガ恐竜展2017」は相互チケット割引があります。
 What's New: 特別展「瀬戸内海の自然を楽しむ」×「メガ恐竜展2017」相互割引を実施します

メガ恐竜展2017のカミツキマッコウ
この復元では人差し指と中指の骨の数は増えていないようですが
まだ見つかっていないだけかもしれません


マッコウクジラの「ご先祖様」で古い姿を残していると言われています

指の数以外にも、歯がみんな同じ形をしてる(たとえば人間は犬歯とか奥歯とかいろいろな形の歯があります)とか、ほかの哺乳類とちょっとちがうところがあります。
 クジラの大きな体には不思議がいっぱいつまっています。

■参考外部リンク■
第48回特別展 瀬戸内海の自然を楽しむ~生き物のにぎわいとその恵み~
メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる- 大阪開催【公式サイト】
大阪市立自然史博物館

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タグ: 瀬戸内海の自然を楽しむ48th-setonaikaiスナメリハセイルカナガスクジラマッコウクジラカミツキマッコウクジラメガ恐竜展2017MegaKyouryuu2017

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恐竜は怪獣じゃないってことがよくわかる!「メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる-」〈大阪南港ATCホール〉

 恐竜の魅力は人それぞれと思います。
 なんとなく怪獣を彷彿させる姿がいいという人は多いような気がしますが、恐竜の面白い所の一つには、生き物としての限界への挑戦があります。
 それは、大きさへの挑戦。
 恐竜が怪獣でない理由の一つです。

 怪獣、たとえばゴジラ。
 最初は身長55メートル。
 その後増減をしながら最新作では118.5メートル。
 謎の熱線やら光線やらを出すのはともかく、この身長は怪獣の証です。
 なぜなら、動物が陸上でこの高さになるまで成長することは不可能だから。

ティラノサウルス生体復元
核実験でゴジラになるゴジラサウルスはこんな感じ
ちなみに実際にゴジラサウルスという恐竜はいます

 体が大きいということは、もちろん体重も重くなります。
 わかりやすいよう四角い立方体の生き物だとしてます。
 高さが2倍になると幅も2倍、奥行きも2倍。
 ということで、体積は2倍の2倍の2倍で8倍になります。
 体積が8倍ということは、重さも8倍。
 ところが、地面に接しているところは2倍の幅と2倍の奥行しかないので、4倍。
 つまり、8倍になった体重を支える面積はたった4倍にしかならないので、底で支える重さは2倍になるのです。

ディプロドクスの足の裏!

 仮にゴジラが立ち上がったヒグマと同じような体だとします。
 すると身長90メートルのゴジラだったら、体長3メートルのヒグマの体重の30×30×30の27,000倍。
 足の裏で支える重さは30倍。
 簡単にいえば、足を30倍丈夫にしなければならないということです。
 生き物の足を30倍丈夫にするなんて、どうすればいいのかちょっと想像もできません。
 だからゴジラは怪獣なのです(ほかにもいっぱい理由はありますが)。

クマではなくて巨大ナマケモノのパラミロドン

 怪獣のように生き物が体を大きくするというのは、それだけ難しいのです。
 それに果敢に挑んだ現実の生き物が、恐竜なのです。
 たとえば最大の恐竜と言われるアンフィコエリアス。
 全長58m。
 体高9.2m。
 半身展示されているヨーロッパ最大のトゥリアサウルスなら。
 全長30m。
 体高5.5m。

前半身だけでもでっかい!トゥリアサウルス

 アンフィコエリアスなら全長は初期のゴジラの身長を超えています。
 怪獣です!?
 いやいや、怪獣ではありません。
 恐竜の全長は、口の先から尻尾の先までを真っすぐ伸ばした長さ。
 現在恐竜は頭から尾を水平にしていたと考えられていますので、恐竜の高さ(体高)ではありません。
 アンフィコエリアスの場合は高さが10メートルたらず。
 ゴジラよりずっと小さい。
 でも、現在最大の陸上動物と言われるアフリカゾウの高さが3mあまりですから、陸上動物としてはとんでもない高さです。
 そういう意味では、怪獣の域かもしれません。

肩の高さ(肩高)3.8mとアフリカゾウより大きいコウガゾウ

 しかし恐竜は怪獣ではなく、現実の生き物。
 ゾウより大きくなるには、ゾウにはない秘密があります。
 たとえば隙間を多くして軽量化した骨、とても呼吸の効率がいい気嚢を持った肺。気嚢は軽量化の役に立っています。
 その他、大きな体を維持するために大量の植物をとにかく噛まずに飲み込む。
 さらに長くした首を動かすだけで体を移動しなくても(体力の消耗を最小限にして)広い範囲をどんどん食べていく。
 それらがパネルで次々と説明されます。
 ほかにもなぜここまで巨大化しなければならなかったのかや、巨大化のメリットとデメリットなど、幅広い解説も。
 それを絵や写真ではなく、巨大な恐竜の骨格を見ながら、読んでいくことができます。

巨大恐竜のまとめパネル

 そして、ショップでは公式図録。
 図録というと、展示物のカタログ的なものをイメージするかもしれませんが、これはちがいます。
 一応、展示されているものもほとんどの画像が載っていますが、むしろ読み物。
 恐竜巨大化のパネルの内容が、読みやすくまとめられています。
 今までの例からでも、一般書店では販売されないでしょうから(自然史博物館のショップやジュンク堂書店なんば店では棚に並ぶかもしれませんが)、恐竜巨大化の謎に興味を持った方にはおすすめです。

 そして、図録では、基本的に一つの展示物には一つの写真ですので、気になった恐竜、気になった骨は写真を撮ることをおすすめ。
 フラッシュや三脚の使用、動画の撮影は禁止されていますが、それ以外は「撮影歓迎」になっています。

■参考外部リンク■
メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる- 大阪開催【公式サイト】
大阪市立自然史博物館

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

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タグ: メガ恐竜展2017MegaKyouryuu2017恐竜ティラノサウルスディプロドクスパラミロドントゥリアサウルスコウガゾウアンフィコエリアスATCホール

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小さい小さい白い花は腐生菌寄生植物 雛錫杖

 杉が植林された山道を歩いていると、足下に白い花が落ちていました。
 まわりは杉ばかりで一体どこから飛んできたのだろう?
 よく見てみると、地面から生えています。


 茎も小さな葉のようなものも真っ白。
 緑色の葉や茎のようなものは見えません。
 ということは、光合成をしないということ。
 しかし花があるのでキノコではないようです。


 花は同じ形の繰り返しの放射相称なので、ランではありません。
 なんとなく、ソクシンランに似ているような気がします。
 ソクシンランは「ラン」となっていますが、ランではありません。
 ソクシンランはヤマノイモ目キンコウカ科。
 ランはキジカクシ目ラン科。


 それでこの花は。
 ヒナノシャクジョウ。
 漢字では「雛錫杖」。
 ヤマノイモ目ヒナノシャクジョウ科。
 多年草で林床に生える、いわゆる「腐生植物」。


 「腐生」は、動植物の遺体を分解して栄養とすること。
 真っ白な植物はよく落葉のたまるところに育つことから落葉を分解して栄養にしていると思われ、「腐生植物」と呼ばれました。
 ところが、植物は落葉を分解することはできません。
 実は、落葉を分解する菌類から栄養をもらっていたのです。
 それも一方的に栄養をもらうだけ。
 ですから、「腐生」ではなく「寄生」。
 でも「腐生植物」といわれています。

 ということで、「腐生植物」という言葉にはご注意ください。

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今年の新説にも対応してその場で確認できる!「メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる-」〈大阪南港ATCホール〉

 「メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる-」。
 タイトル通り巨大な竜脚類の化石の展示と、巨大化の謎解きのパネル展示がとても興味深い恐竜展。
 でも、見どころはそれだけではありません。

ニュートラムの駅から入ってくると出迎えてくれます

 恐竜の面白いところの一つは、目まぐるしく「新説」がでてくること。
 昨日までの常識が、明日の非常識になることは珍しくありません。
 たとえばティラノサウルス。
 トカゲのように鱗に覆われていたのに、数年前から背中が毛に覆われはじめました。
 この姿はティラノサウルスファンにとっては衝撃的だったようで、なかなか市民権を得られなかったように感じます。
 それが今は「やっぱり背中には毛はなかった」になり、元の姿に戻りそうです。

メガ恐竜展2017では毛が無い説のティラノサウルス

 そして、今年また恐竜の認識が大きく変わる可能性が示されました。
 恐竜の分類でよく使われるのが、竜盤類と鳥盤類。
 骨盤をつくる3つの骨の内、恥骨が前後に伸びて後ろ側が坐骨と並んでいるのがトリケラトプスやステゴサウルスのような鳥盤類。
 鳥の骨盤と似ていることが由来です。

鳥盤類のサウロロフスの骨盤 右が頭
(比べやすいように左右反転しています)

腰から左下へ伸びる2種類の骨の下の短いほうが恥骨(わかりにくい)

 そして恥骨が前や下の方に向いているのが竜盤類。
 竜盤類にはティラノサウルスのような獣脚類と、4つ脚で巨大な体のディプロドクスのような竜脚類に分かれます。

獣脚類のアロサウルスの骨盤 右が頭

腰から真下に伸びている2つの骨が恥骨
左に伸びているのは坐骨だけ

竜脚類のエウロパサウルスの骨盤 右が頭

腰から右下に伸びている2つの骨が恥骨

 ところが。
 新しい説では、獣脚類に近いのは竜脚類じゃなくて、鳥盤類だったのです。
 獣脚類と鳥盤類が一つになって「鳥肢類」という新しいグループができました。

鳥肢類新解釈パネル

 たしかに今までの「常識」を覆す説ですが、そもそも鳥盤類の名前の由来となった鳥は、竜盤類の獣脚類から進化しました。
 つまり、鳥のような骨盤(鳥盤)は、竜盤から変化できるということ。
 恥骨の向きというのは、生活様式でも変わってしまうようなもので、恐竜の大きな分類には使えない特徴だったのでしょう。

左からディプロドクス(竜脚類)
アロサウルス(鳥肢類・獣脚類)
ステゴサウルス(鳥肢類・鳥盤類)

 もちろんこれはあくまで「新説」で、まだ多くが認めた「定説」ではありません。
 そして「定説」になったとしても、新説が現れて「古い説」になるかもしれません。
 常識は常に非常識になる可能性を持っています。
 これも恐竜の面白いところです。

最初に見つかった恐竜イグアノドンの昔の生体復元

もちろん今の復元はまったくちがいます

 会場には竜脚類以外にも獣脚類や鳥盤類などいろいろな恐竜がたくさん展示されていますので、見比べてみるとおもしろいと思います。

■参考外部リンク■
メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる- 大阪開催【公式サイト】
大阪市立自然史博物館

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「神社合祀に関する意見」南方 熊楠 著 100年前なのに今の社会より進んでいるエコロジーの考えが感じられます。

南方熊楠さん

 南方熊楠さんが東京帝国大学(現東京大学)の白井光太郎(しらい みつたろう)さんに送ったものです。

「神社合祀に関する意見」のほか
粘菌の論文などが掲載

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 以前より有名になってきたとはいえ、さすがに日常的に耳にする名前ではないでしょう、多くの人にとっては。
 もちろん「みなかた くまぐす」と読める人には、説明の必要はありません。
 江戸末期の1867年に生まれ、昭和初期の1941年に没した科学者です。
 専門は生物学と民俗学、自然科学と人文科学というあまり繋がりがなさそうなジャンルですが、当時すでに古い言葉となっていましたが「博物学」という方がイメージしやすいかもしれません。

 まだ旅客機がなかった明治時代に、日本という枠を越え世界を渡り歩き、数か国語を操り、1890年代にはイギリスの大英博物館で働き、イギリスの科学誌ネイチャーの論文掲載数は日本人最高レベルというとんでもない人です。
 生涯、粘菌(変形菌)やキノコなどの研究を続けましたが、論文をほとんど発表しなかったため、日本では科学者としてはあまり高い評価は受けていなかったようです。
 でも、そこもすごいところです。

変形菌のクダホコリ

非欧米絶対視

 現在でも欧米文化や欧米で発達した学術研究する日本人は、欧米の価値観を「絶対的な正しいもの」として無批判に受け入れる人が少なくありません。
 それが文明開化もまだ途中の明治時代なら、欧米の価値観を疑う人はほとんどいなかったでしょう。
 ところが熊楠さんは欧米の「進んだ」価値観を受け入れつつ、おかしいものはおかしいと流されることはありませんでした。
 本当にすごい。

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白井光太郎さん

 白井さんは日本の植物学・菌類学の研究者。
 当時はまだ未発達だった日本の植物の病気についての研究を大きく進展させました。
 その白井さんに熊楠さんが送った、明治政府の神社を統合する政策に対しての反対意見です。
 熊楠さんは広く反対運動を行っていましたが、この手紙が文庫化されるなど手に入りやすく、内容もまとめられているので最も有名かもしれません。

神社合祀令

 まずはテーマである「神社合祀」とその周辺について。
 明治時代末期。
 政府が神社を整理しようとしました。
 その理由は、明治時代がはじまるときに国家が祀るものとした神社を統合して、経費を集中させ、管理をしやすくするため。
 そして、数を減らし、大きな神社に信仰を集中させることによって、神社の権威を高めるため。
 とすると、なんか神社を大切にしているように見えます。

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神社と信仰

 小さな神社や祠(ほこら)は日常的な神様ですから、集落の近くに必ず作られ、長い間人々によって祀られていました。
 それが統合によって、時には山の向こう、川の向こうなど遠くに無理やり移されてしまいます。
 そうなると日々のお祀りができなくなってしまいます。
 また大きな祭りのときなどは、村から遠く離れた場所にまで行かなければならなくなり、祭りの形も目的も変わってしまいます。
 むしろ、神社とその信仰を軽んじている政令なのです。

神仏習合

 神社は仏教と並んで日本の伝統的な宗教と思われていますが、今あるのは明治以後につくられた新しい姿。
 実は江戸時代まではお寺と神社は同じだったのです。
 これを「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」といいます。
 もうちょっと詳しく言えば、神社の神様は仏教の仏様が姿を変えて現れたもの(権現(ごんげん))で、仏様より下の存在とされていました。
 そして神社には必ずお寺が作られていました。
 今も残る有名な社寺で言えば、奈良の春日大社と興福寺です。

神仏分離

 それが、神社の信仰を政治に利用しようとした明治新政府によって、神社とお寺を分け分けることになりました。
 神仏習合は平安時代から始まり、およそ千年の歴史があります。
 つまり、日本の多くの神社とほとんどのお寺にとっては神仏習合していた期間が最も長いのです。
 そのため、日本には昔ながらの神様でも仏様でもない、かわった神様や来歴がわからない神様も少なくありません。
 それを無理やり神社かお寺に分けなければならないのです。
 それだけでなく、神社にするときは来歴のはっきりとした神様としなければなりません。
 また、修験道や陰陽道のように政府に廃止されたものもあります。
 その上、神社に規制を加えることになったのが神社合祀令です。

鎮守の杜

 「鎮守の杜」という言葉が表すように、神社には広大な杜(もり)がつきものでした。
 「杜」は信仰の対象になるような森のことです。
 それが明治に武士同様に所領が没収され、神社の杜はどんどん小さくなっていきました。
 社会の価値観が大きく変わったのですから仕方ないとはいえ、これも明治政府の規制のひとつといえるかもしれません。

ものすごく古い上賀茂神社とものすごく新しい明治神宮

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 たとえば京都の下鴨神社。
 平安京ができる以前からある古い神社で、元は明治神宮とは比べ物にならないほどの広さの杜を持っていました。
 それが現在は参道周辺に少し残るだけ。多くが住宅地などに代わってしまい、5分の1にまで小さくなってしまいました。
 最近、神社の維持管理の経費等のため神社境内にマンションを建てることについて近隣住民が大反対をしています。
 ところがその住民たちの多くは、もともと神社の杜だったところに住んでいるかもしれません。皮肉なことです。
 ちなみに、日本中の神社が国策で規模を小さくさせられる中、広大な土地を用意され新しく作られたのが、日本でもっとも正月の参拝者が多い明治神宮です。

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一つ目から七つ目

 さて。
 江戸末期生まれの熊楠さんにとってはお寺と別けられた神社は「当たり前」の存在だったかもしれません。
 それでも博覧強記の熊楠さんにとっては、その歴史的経緯もよく理解していたでしょう。
 熊楠さんはこの手紙の中で神社合祀に反対する理由を八つ挙げています。
 一つ目から七つ目までは、人々の生活や日々の信仰にかかわることです。
 言うなれば、民俗的なこと。
 もちろん熊楠さんらしい指摘だと思います。
 それに、当時の人にとっては身近な問題として感じることができたでしょう。

熊楠さんのスケッチで有名なキツネノエフデ

エコロジー

 そして最後の八つ目が自然破壊について。
 自然の生き物についてが一番最後のたった一つの項目というのは、自然の中の生き物を相手にしていた熊楠さんらしくなく見えるかもしれません。
 しかし熊楠さんは一番言いたいことをあえて最後に持ってきたように思います。
 実際に熊楠さんが神社合祀に反対した最大の理由が自然破壊だった、といろいろな方が指摘されています。

「合祀は天然風景と天然記念物を亡滅す」

 「合祀は天然風景と天然記念物を亡滅す」が八番目の理由です。
 神社を合祀することによって長い年月守られてきた杜が消え、そこに住んでいた貴重な生き物たちが失われるというのです。
 今なら、天然記念物という特定の生き物や場所のみの問題ではなく、もっと大きな範囲で、「環境」とか「自然」という言葉が使われるでしょう。
 こんな範囲の狭い言葉を使ったのは、熊楠さんといえども100年前のことなので仕方ないことなのでしょうか。

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 そうは思いません。
 熊楠さんはすでに「エコロジー」という言葉を使っていました。
 「環境」という言葉の意味を知っていたのです。
 つまり、「天然記念物」という具体的な言葉を使ったのは、当時の日本人、それも政治的力を持つような人々の認識の限界だったからでしょう。
 熊楠さんの書簡は、そういった人たちを動かすためのものですから。

 この「エコロジー」、つまり環境や自然など、あらゆる生き物が関係する問題は、今でも、いや当時以上に重要な課題になっています。
 たとえば、地球温暖化のように。
 さすがに天然記念物という小さな範囲だけで環境が守られるとは思われていないと思いますが、はたして、無数の生き物が複雑に絡み合っている「エコロジー」をちゃんと意識できているのでしょうか。
 まだまだ100年前の熊楠さんの背中を遠くから眺めているだけのような気がします。

 生誕150年の年にそんなこと考えました。

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天井高くてもちょっと狭そうな恐竜がいた!「メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる-」〈大阪南港ATCホール〉

 大阪南港のATCホールで夏の間開かれている恐竜博。
 夏のATCホールのmandai presentsとなると、対象がちっちゃな子供。
 今まで何度か恐竜展がありましたが、どちらかと言うとイベントの要素が強く、恐竜の学術的展示を見たい人にはちょっと残念でしたが、今回はちがいます。
 恐竜好きの子供はもちろん、恐竜の学術的展示を見たい人もや楽しめる恐竜博です。
 なぜなら、ベースが幕張メッセで行われた「メが恐竜展2015」で、毎年春に恐竜など古生物展を開催している大阪市立自然史博物館が主催メンバー。
 今回もブロガー招待が行なわれ、運良く当選しました。

 会場は9つのテーマに分けられ、恐竜の巨大化を中心に、生物巨大化の謎が解かれていきます。

メガ恐竜展2017

01 地球には巨大生物がくらしていた

 入るといきなり生きていたときの姿に復元された生体復元の恐竜が出迎えてくれます。
 おなじみのティラノサウルスは羽毛なし。
 最近、羽毛があったかもしれないと言われていたのが、今年やっぱりなかったかもしれないとなったので、ちょうどいいかもしれません。
 それに合わせた展示かどうかはわかりませんが。

ティラノサウルス生体復元

 奥に行くと、恐竜以外の「巨大生物」がたくさん出てきます。
 最大の魚竜とも言われるショニサウルスの頭。
 頭だけでもこんなにもでかい!

ショニサウルス

 天井からは首長竜のタラソメドン。
 頭は恐竜よりも小さいですが、体よりも長い首を持っています。

タラソメドン

 そして恐竜より昔の古生代に生きていた大型節足動物ウミサソリの仲間、ミクソプテルス。
 化石とよく似た格好をした生体復元が展示されています。

ミクソプテルス

 化石から得られる情報はどれも不完全で、そこから生きていた姿を作るのは、ほとんど骨しか見つからない恐竜の場合はほとんどが想像にならざるを得ません。
 そういうものの展示を嫌う人もいますが、等身大の生体復元モデルがたくさんというのは、生きていたときの姿が想像しやすく大歓迎です。

02 地球史上、最も大きな陸上動物「竜脚類」

 化石を中心に竜脚類がたくさん。
 それだけでなく、竜脚類の巨大化の秘密がパネルで展示されています。
 それを読んで、化石で確認できます。

竜脚類

03 竜脚類の起源「三畳紀」

 大きというイメージが強い恐竜ですが、誕生した三畳紀には小さい恐竜も当たり前だったようです。
 奥からプタテオサウルス(頭部)、コエロフィシス、エオラプトル、パンファギア。
 コエロフィシスですら、中型犬くらいの大きさ。
 重さならもっと軽いはず。

コエロフィシス、エオラプトル、パンファギア

04 竜脚類が大繁栄した「ジュラ紀」

 竜脚類が竜脚類らしくなったジュラ紀。
 竜脚類だけでなく、肉食の獣脚類や鳥盤類も展示。
 ディプロドクス、アロサウルス、ステゴサウルスなどの化石でジュラ紀の世界を再現しています。

ディプロドクス、アロサウルス、ステゴサウルス

 恐竜自体だけでなく、うんちの化石も。
 恐竜が巨大化したので、うんちも巨大。
 もちろん、文字通りに石になっていますので、汚くありません。
 そのはずです。
 化石の中には石英のようなものが見え、石になったことがわかります。

恐竜の糞化石

05 世界中に放散、そして絶滅した「白亜紀」

 アルゼンチンにいたアマルガサウルス。
 首から背中の長い骨が特徴です。
 ほかにもいろいろ展示されています。

アマルガサウルス

06 巨大化した獣脚類

 もちろん、最強の肉食恐竜と言われるティラノサウルスの骨格もあります。
 人が少なければ、最初に戻って生体復元と見比べると、おもしろそう。

ティラノサウルスの骨格

07 新生代の巨大動物

 恐竜絶滅後、恐竜に替わって地上で繁栄した哺乳類。
 コウガゾウのような大きな種類も生まれましたが、竜脚類の恐竜ほど巨大化はできませんでした。
 その理由が解説されます。

コウガゾウ

08 大きくなれなかった竜脚類

 信じられないほど巨大な獣脚類ばかりでしたが、エウロパサウルスのように「ちっちゃい」獣脚類もいました。
 なぜ「ちっちゃいのか」も解説されます。
 といっても人間よりずっと大きいですが。

エウロパサウルス

09 巨大化の謎にせまる

 そして、関西初公開の恐竜。
 ヨーロッパ最大の竜脚類トゥリアサウルス登場。
 前半身だけですが、ほんとでかい!
 前にある陸上哺乳類最大級のコウガゾウとくらべても、圧倒的な差。
 そして、どうしてここまででっかくなったかの総まとめ。

トゥリアサウルス

 最後はお約束のグッズコーナー。
 オリジナルグッズもたくさんで、そのほか恐竜グッズもいろいろ。
 子供でなくてもつい買ってしまいそうです。

 と、今年は今までとちがって恐竜の学術的展示を見たい人にとっても見どころ満載。
 博物館とちがい天井が高い見本市会場なので巨大恐竜たちもゆったり。
 一頭をのぞいてですが。

 もちろん、小さい子供にとっても巨大恐竜の化石や生体復元はおもしろいものばかりでしょうし、展示場の外にはいつものように巨大遊具や飲食コーナーもたくさん。
 ゆっくり見て、遊んで、食べて、もう一度見て、と一日楽しめます。
 そして、会場は駅に直結し、屋内駐車場完備、レストランやショップがたくさんのショッピングエリアもあって、外に出ればそこは海が見えるテラス。
 隣にはフェリーが停泊しているときもあります。
 恐竜展を見終わっても、いろいろ楽しむこともできるATCホールのメガ恐竜展2017です。

■参考外部リンク■
メガ恐竜展2017-巨大化の謎にせまる- 大阪開催【公式サイト】
大阪市立自然史博物館

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ヒアリ騒動の一番の被害者? アリじゃなくてクモなのに。 アリグモ

 ヒアリが上陸したと騒がれるようになってしばらくたちました。
 「噛まれたら死ぬ!」のような極端な内容が多くの人に注目されたのか、アリを見つけるとヒアリではないかとかなり懐疑的になっているようです。
 現在のところ、中国などからのコンテナが荷揚げされる場所や移送先以外ではヒアリは見つかっていないようで、まだ大騒ぎするほどではないようです。
 もちろん、油断はできませんが。

この記事にはの画像があります。


 そんな状態で、アリっぽい生き物を見つけると写真を撮ってSNSにアップすることが流行っているようです。
 ツイッターを見ていると、アリグモが結構間違われています。
 アリグモはクモですが、名前のようにアリにそっくりですので、まちがわれるのも仕方ないと思います。
 でも、アリではなくクモ。
 アリとクモはかなり離れた分類の生き物です。

なんか体が赤いところがヒアリっぽい?アリ ムネアカオオアリ

山や雑木林など朽木があるところを好みヒアリよりずっと大きい

 動物として大まかな分類では最も大きい「門」までいかないと一緒になれません。
 たとえば、人間と魚以上離れています(ものすごい乱暴な言い方ですが)。
 これは、ものすごく基本的な体の作りの特徴は共通していますが、それ以外はぜんぜん違うということ。
 それだけ離れています。

アリっぽいアリグモ

でもじっくり見ていると頭と胸のクビレが微妙な感じでなんか違和感

 昆虫とクモは見てわかるほど体の作りのルールがちがっています。
 昆虫の体の作りのルールは、
 体は 頭部+胸部+腹部 の3つで構成。
 ただ、アリの仲間はほかの昆虫とちがって腹部の先が柄のようになり、4つや5つに見えることもあります。
 脚は 3対(6本)。
 頭には 1対(2本)の触角。

 クモの体つくりのルールは、
 体は 頭胸部+腹部 の2つで構成。
 脚は 4対(8本)。
 頭には触角がありません。

オスは大顎(鋏角)が大きくなってアリっぽくなくなります

 ところが、アリグモは姿をアリに似せるためにちょっと工夫をしています。
 頭胸部をくびれさせ、まるで頭部と胸部があるように見せます。
 8本足の一番前の2本(1対)を前に伸ばして触角のように動かします。
 クモには触角代わりの触肢と言うものがありますが、アリグモは目立ちません。
 小さい生き物ですから、慣れないとアリと見間違っても不思議はありません。

ハエトリグモの仲間なのでハエトリグモっぽい顔

単眼が 小-大-大-小 と並んでいます

 でも、アリっぽく見せてもクモですから、体の作りのルールを思い出してよく見れば、アリかアリグモかはわかるはずです。
 危険なものから身を守るために必要なものは、正しい知識と対処。
 まずは、まだ広がっていないヒアリよりも、アリを正しく見分けることも大切だと思います。

■参考外部リンク■
環境省_ヒアリに関する諸情報について
大阪市:ヒアリ(火蟻)、アカカミアリに関するお知らせ (…>食品・衛生に関する情報>市からのお知らせ)
特別編集「ヒアリ」(文一総合出版)

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南極の地下には想像も表現もできない知的生命体がいた!『狂気の山脈にて』ハワード・フィリップ・ラヴクラフト著

 いよいよ、いや、ついにクトゥルフです。
 それもH.P.ラヴクラフトさんの作品です。
 今から80年前に他界したアメリカの小説家。
 一般的に有名かどうかわかりませんが、人気マンガ『文豪ストレイドッグス』にも登場する作家です。

 現在の日本でも彼が創作したと言われる「クトゥルフ(クトゥルー)神話」の影響は大きく、数多くの「二次創作作品」がつくられています。
 ところが、「クトゥルフ神話」を作ったのは、ラヴクラフトさんではありません。
 弟子のオーガスト・ダーレスさんがキャラクターや世界観を整理し、善悪二元論的な対立の神話に構成したことがはじまりとされています。
 もちろん、ラヴクラフトさんの頭のなかには大きな物語世界が作られていて、それをわかりやすい形にまとめ上げたのがダーレスさんなのかもしれませんが。

 小説のジャンルとしては、ホラー、恐怖小説です。
 ただし幽霊とか妖怪とかが出てくる「普通のホラー」ではありません。
 この地球、そして宇宙には人知を超えた無数の生命体があり、独自の歴史を紡いでいて、人間との接点ができたとき、それがホラー(恐怖)になるのです。
 なぜホラーかというと、その生命体は人間の理解の限界を超えた、多くの人が嫌悪を抱くような存在だから。
 つまりよくある宇宙人とも幽霊ともまったくちがうのです。

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 その代表作の一つが『狂気の山脈にて』。
 物語は南極の地質調査隊が遭遇した恐怖の体験を綴った生還者の手記という形で進行します。
 手記というのはラヴクラフトさんがよく使うスタイルで、物語にリアリティを持たせるための手法です。
 読者にありもしない設定の物語で恐怖を感じさせるためにはリアリティが必要。
 それが当事者が書いた手記というスタイルと、科学的な裏打ちのある設定です。
 そのためSFとしての側面も持っています。

 『狂気の山脈にて』でも、手記を書いたのは地質学の科学者です。
 科学者の視点で、彼らが遭遇した異様なものが次々と描写されます。
 南極の山脈の地下で出会ったのは人類が知らない文明が築いた施設。
 そして、その主と思われる生命体。
 生命体は仮死状態なのか動かないため細かく観察されます。
 その異様さは尋常ではありません。

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 詳細は実際に小説を読んで想像するのが一番だと思います。
 マンガも出版されていますが、おすすめしません。
 ネットで探せば想像図が簡単に見つかるでしょうが、それも見ないことをおすすめします。
 もちろん、ドラえもんの映画も。
 なぜならラブクラフトさんのホラーの演出方法の一つに、人間の常識と想像を超えた表現があります。
 その生命体の「古(いにしえ)のもの」も、人間が持っているだろう「生き物の姿の常識」そして「知的生命体の姿のイメージ」を完全に壊します。
 体の部分部分は想像できても、生物として一つにまとまって動いている姿は想像することができません。
 その不安定な状態が、ラヴクラフトさんが狙ったホラーの一つでしょう。
ですから、それが具体的な形を持った絵になると、ホラーも半減するように感じます。

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 南極の地下施設に残されたものから調査隊が推測したのは、「古のもの」が地球にやってきたのは複雑多様な生命が突然現れたカンブリア爆発よりも前。
 それだけでなく、他にも人類が知らない生き物が地球に来ていたことも。
 もちろんどれも生き物の常識を軽く超えています。
 既存の常識を超えた生き物に対する恐怖。
 想像してみてください。いや、できないでしょう。

 クトゥルフ神話物の作品は作者の死後も作り続けられていて、今も新しい作品が誕生しています。
 それどころか、ホラーの対極とも言える萌えキャラすらつくられています。
 それらはいわばオーガスト・ダーレスさんの二次創作のさらに二次創作のようなもの。
 まずはラヴクラフトさんのオリジナルをおすすめします。

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タグ: 狂気の山脈にてラヴクラフトクトゥルフ神話クトゥルー神話古のもの旧支配者ダーレス

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落ち着いて! 猛毒だからって危険じゃないよ! ヤマカガシ

 兵庫県で中学生がヤマカガシにかまれるという事故がありました。
 報道などを見ていると、日本在来のヘビの中で最も強い毒を持つ「毒ベビ」という部分ばかり強調されます。

この記事にはヘビの画像があります。


 動物の毒の強さを表す指標に「LD50」というのがあります。
 その数字が小さいほうが毒が強くなります。
 ヤマカガシは0.27mg/kg。
 マムシは1.5㎎/kg。
 沖縄の毒蛇のハブは3.42㎎/kg。
 この数字で言えば、ヤマカガシの毒はマムシの5倍以上、ハブの12倍以上。
 確かに日本在来の有名毒蛇を遥かに凌駕する毒の強さ。

砂浜のヤマカガシ

 でも、そんな猛毒のヤマカガシがどうして知名度が低かったのでしょうか。
 それどころか、何十年か前までは無毒とされていました。
 ものすごく不思議です。

 まず、毒の強さと毒の作用の強さは必ずしも一致しないのです。
 強い毒でも、量が少なければ影響も弱いですし、弱い毒でも量が多ければ影響が強くなります。
 毒の強さは一つの目安で、実際は強さと量の掛け算になります。
 毒蛇の場合は少量でも安心できませんが、そもそもかまれて毒が注入されなければどんな強い毒でも影響はありません。
 つまり、ヤマカガシは滅多なことでは毒を注入しない、またはできないので、猛毒でも毒蛇と思われていなかったのでしょう。

ヒキガエルを飲み込むヤマカガシ

ヒキガエルの毒を首の毒に再利用

 ヤマカガシは山いけばよく出会うヘビですが、そっとしておけばすぐ逃げていくでしょうし、決して危険なヘビではありません。
 ヤマカガシを捕まえなければならない事情があるのなら別ですが、普通はそんな事情はないでしょう。
 ただ、動物は危険と感じた場合身を守る行動を取ります。
 ヘビの場合、かみつくことも身を守る行動の一つ。
 ですから、いたずらにヘビを刺激してはいけません。
 また、ヘビは人間の気持ちなどわかりませんので、悪意や敵意がないことは伝わりません。
 必要以上に近寄らないことがいいでしょう。

金剛山の登山道で殺されていたヤマカガシ 必要のない殺生です

しかも大阪では準絶滅危惧(NT)です

 また、ヤマカガシは首のあたりにも毒腺があり、捕まえたときなどそこから毒を飛ばすことがあります。
 こちらも目に入ると失明することもある強い毒です。
 牙の毒は攻撃にためというよりも、捉えた獲物をおとなしくさせることが一番の目的と考えられますが、首の毒は完全に防御用。
 つまり、攻撃しなければ、毒を使うこともないはず。
 ヤマカガシに出会っても、なにもしないことがなにより。
 もちろん、噛まれた場合や毒液をかけられ体調が悪くなった場合は、いち早く医療機関へ行くことをおすすめします。

■参考外部リンク■
兵庫:公園で毒ヘビにかまれ小5男児重体 ヤマカガシか  - 毎日新聞

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