蝶と蛾の境界線の昆虫 アゲハモドキ
夏の金剛山の谷を登っていると、黒い蝶と出会いました。
真っ黒な翅の端に赤い斑点。
カラスアゲハの仲間のようです。
でも、なんかヘンです。
あまり日の当たらない谷筋のさらに日陰。
飛び方もなんかふらふら。
見た目以外は蛾のようです。
蝶と蛾は誰もが知っているような身近な生き物。
でも、その境界はなんだかあやふや。
それもそのはず。
どちらも分類ではチョウ目(鱗翅目)。同じ仲間です。
蝶と蛾のちがいは何でしょうか。
よく言われるのは。
見た目がきれいなのが蝶、汚いのが蛾。
昼間飛ぶのが蝶、夜飛ぶのが蛾。
触角が糸状で先が丸くなっているのが蝶、櫛状になって先がとがっているのが蛾。
蝶と蛾を区別する方法としてはまちがいではありません。
ただ、分類学的には、この条件で分けることはできません。
どれも例外を持つ分類群がでてきます。
特に「きれい」「きたない」では、人によって境界線はちがってくるでしょう。
科学的ではありません。
現在、蝶とされるのはチョウ目のなかでアゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、シャクガモドキ上科とされます。
この3つの上科の昆虫が蝶の特徴とされる条件を持っているものが多いのですが、それでも例外はあります。
そして3上科以外のチョウ目の昆虫が蛾になります。
つまり、蝶というグループは、昆虫の進化の過程でできあがったものではなく、人間の勝手な都合でわけられたもの。
それどころか、世界には蝶と蛾を区別しない文化もありますので、分類学的には蝶と蛾を区別することはあまり意味が無いようにも思えます。
もちろん、文化的には意味があることです。
ということで、この黒い蝶っぽいのは、アゲハモドキ。
図鑑と見比べると、後翅後端の赤い斑点がちがうようですが、翅の筋(翅脈)の形がアゲハモドキと同じなので、まちがいないでしょう。
チョウ目アゲハモドキ科アゲハモドキ属。
つまり、蛾です。
アゲハモドキは毒を持つジャコウアゲハによく似ていて、毒があるふりをして捕食者から逃げようとしている擬態(ベイツ型擬態)をしていると言われています。
たしかに、黒地に赤の腹部は見るからに毒々しい。
蝶のような姿をした蛾には、意味があったようです。
蝶のジャコウアゲハそっくりの蛾を見ていると、蝶と蛾の区別はほんとうに人間の都合なんだな、と思います。
昆虫研究業界的分類では、アゲハモドキは「蛾」ということになりますが、さあ、個人的分類では「蝶」と「蛾」のどちらに分類したほうがしっくりくるでしょうか。
考えてみましょう。
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