特別展「スペイン 奇跡の恐竜たち」と長居植物園で恐竜時代の植物たちを探してみました!〈大阪市立自然史博物館〉
スペイン 奇跡の恐竜たち。
残すは1ヶ月もありません。
今回はちょっと恐竜から離れます。
テーマは植物。
◆「スペイン 奇跡の恐竜たち」の
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恐竜展なのに植物というのは、かなり意外な感じがするかもしれません。
しかし。
恐竜を生き物として見るとき、どのような環境で生きていたかを知ることは大切です。
その一つの目安となるのが植物。
ですから、恐竜展では同じ時代の植物化石が展示されることがよくあります。
もちろん「スペイン 奇跡の恐竜たち」でも。

↑と反対でも会場に行けます
動物は中生代と古生代の境で大型爬虫類から鳥類・哺乳類に交代しますが、植物は白亜紀の間にシダ植物・裸子植物と被子植物が交代します。
ということで、ラス・オヤスとロ・ウエコの時代、中生代白亜紀の年表を簡単にまとめてみました。
百万年前 | 代 | 紀 | 世 | 階 | 植代 | 産地 |
56.0 | 新生代 | 古第三紀 | 暁新世 | 新植代△被子植物の時代▽ | ||
66.0 | 中生代 | 白亜紀 | 後期 | マーストリヒチアン | ||
72.1 | カンパニアン | ロ・ウエコ | ||||
83.6 | サントニアン | |||||
86.3 | コニアシアン | |||||
89.8 | チューロニアン | |||||
93.9 | セノマニアン | |||||
100.5 | 前期 | アルビアン | 中植代△裸子植物の時代▽ | |||
113.0 | アブチアン | |||||
125.0 | バレミアン | ラス・オヤス | ||||
129.4 | オーテリビアン | |||||
132.9 | バランギニアン | |||||
139.8 | ベリアシアン | |||||
145.0 | ジュラ紀 | 後期 |
このようにラス・オヤスとロ・ウエコの間で植物の交代が起こっているのですが、残念ながら植物が見つかっているのはラス・オヤスだけ。
白亜紀前期の地層です。
比較できないのは残念ですが、今と違って裸子植物とシダ植物に覆われていた時代の化石を見てみましょう。
自然史博物館があるのは植物園の中。
ということで、今回も植物園にある恐竜時代の植物の子孫と並べてみました。
よく似た種類を並べましたが、必ずしも種や属が近いものではありません。
同じというわけではありませんが、コンカベナトールが歩いていた大地はどんな感じだったのか、想像してみましょう。
モントセキア・ヴィダリ
原始的被子植物水草 |
クラヴァトラキシス・
車軸藻植物 シャジクモ類ロブスタス |
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シャジクモの仲間は今も水中に生えている緑色の藻類です。 陸上植物に近いと言われています。 モントセキアはシャジクモ類のクラヴァトラキシスと似ていますが、原始的被子植物の水草。 被子植物は裸子植物から進化したと言われていますが、原始的被子植物がシャジクモ類に似ている水草というのは不思議です。 この部分だけ見ていると、被子植物は裸子植物とは別にシャジクモ類から進化したしたかのようです。 その点についてはとても重要なことだと思うのですが、展示にも図録にも書かれていないようなのが残念。 それとも、見落としていた? |
シダ植物 | |
ウェイクセリア・レディキュラタ
シダ植物 ウラジロ類 | |
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ヒカゲヘゴ
ヘゴ目 ヘゴ科 | |
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ウェイクセリアは、木性シダの1メートルくらいある大きな葉の化石。 この葉が幹の先から四方八方に広がるように生えていたようです。 恐竜時代には当たり前のようにあった木性シダは、今でもわずかに残っています。 ただし温暖な地域、日本では沖縄や小笠原に。 温室のない長居植物園では、会場隣のアトリウムにヒカゲヘゴが置かれています。 さすがに恐竜時代と比べると小さく屋内に収まっていますが、それでも見上げるほどの大きさ。 雰囲気は感じることができそうです。 | |
シダ類
シダ綱アトリウム内
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ルッフォルディア・
シダ植物 フサシダ類ゴエッペルティ |
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恐竜時代のシダというとウェイクセリアのような大きな木性シダのイメージがありますが、草サイズもあったようです。 裸子植物の草が恐竜時代にあったのかどうかわかりませんが、もしかしたら草本ニッチ(生育環境)はシダ植物だったのかもしれません。 中心の軸から分かれた軸に小さな葉がつく2回羽状複葉は、シダのよくある葉。 この時代から変わっていないようです。 長居植物園は園内にシダは見当たりません。 ということで、暖かいアトリウムに置かれているシダ。 ここは植物園扱いでないのか、名札がないので種名は不明。 | |
裸子植物 | |
ソテツ
ソテツ目 ソテツ科ライフガーデン
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ザミテスの一種
ベネチテス類(キカデオイデア類)
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ベネチテス類は中生代で絶滅した植物。今はありません。 外観は今も残る同じソテツ綱のソテツとよく似ていました。 ただ、同じ裸子植物でも細かいところは違っていたようなので、あくまで似てるのは見た目だけ。 | |
アカマツ
マツ目 マツ科 |
ブラキフィルムの一種
裸子植物 球果類 |
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大きめのスギナのようですが、球果植物、つまりマツなどの仲間。 確かに球果の化石をみると、新しいマツカサみたいに鱗片が重なっているようです。 下から見上げるマツの木。 コンカベナトールも同じ景色を見ていたのでしょうか。 いや、真上を向くことはできなかった? | |
コウヨウザン
マツ目 ヒノキ科 |
パジオフィルムの一種
裸子植物 球果類 |
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謎の虫のようですが、球果植物。 となると、細長い三角の葉ならスギ。 パジオフィルムがスギに近い仲間かどうかわかりませんが、コウヨウザンの仲間は白亜紀の地層から見つかっていますので、可能性は0ではないかも。 | |
被子植物 | |
ムラサキケマン
キンポウゲ目 ケシ科 |
イテロフィルム・ロバタム
キンポウゲ類 ケシ科 |
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ケシの仲間はラス・オヤスの化石が生きていた時代にはもう登場していました。 結構古い植物です。 イテロフィルムの化石は違う形をしていますが、同じ種類のちがう成長段階のものの可能性もあるそうです。 現在でも成長段階や付く位置で葉の形が変わることは、草ではよくあること。 ムラサキケマンは林床にまとまって生えていました。 特に囲みもありませんので、植栽されたものでなく勝手に生えたものかもしれません。 2000年前には海だった大阪市内にちょっと意外な感じもしますが、植物園は上町台地の上にありますので、住宅地になる前には当たり前の野草だったのかもしれません。 |
ラス・オヤスの時代は裸子植物の時代と書きました。
ところが見つかった植物はほとんどがシダ植物。
意外です。
裸子植物がシダ植物よりも化石が残りにくいとは思えません。
どのような理由でこのようなちがいが生まれたのかわかりませんが、ちょっと想像してみましょう。
ラス・オヤスは水辺で石灰岩にうもれてできた地層。
つまり、水がたくさんあったところ。
シダ植物は性質上乾燥したところは苦手。
ですから水辺のニッチはシダ植物のものだったのかもしれません。
裸子植物が増えたのは、シダからニッチを奪ったからではなく、シダ植物が進出できなかった乾燥地へ進出したからでしょうか。
数を大きく減らした裸子植物の中で、現在唯一繁栄している球果植物は、乾燥地や寒冷地など植物には厳しい環境に育つ種類が少なくありません。

長居植物園でもっとも恐竜時代に近そうな風景の小池
針葉樹のメタセコイアやラクウショウの間からシダ植物のトクサが見えます
ただしラス・オヤスでは針葉樹ではなく木性シダのようです
水中から現れた植物は、2億年かけてやっと水辺から離れることができるようになりました。
それまでは、水辺から離れるとどこも砂漠のような状態だったのかもしれません。
恐竜が出現したのは、シダよりも乾燥に強い裸子植物が現れてから。
そして恐竜が滅ぶ前には、動物と関係の深い被子植物が現れています。
まるで、恐竜の絶滅に関係しているように。
本当のことはわかりませんが、おもしろいですね。
タグ♦ スペイン 奇跡の恐竜たち 白亜紀
■参考外部リンク■
スペイン 奇跡の恐竜たち/2015年3月21日(土・祝)~5月31日(日)/大阪市立自然史博物館
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タグ: スペイン奇跡の恐竜たち モントセキア クラヴァトラキシス ウェイクセリア ルッフォルディア ブラキフィルム パジオフィルム イテロフィルム spaindino-osaka 恐竜ビオトープ

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