靫草 赤く縮かむ蓮座草 (七十二候第六十四候「乃東生」を過ぎて)
1年を72に分けて季節を表す七十二候(しちじゅうにこう)。
12月下旬、冬至の最初の七十二候が「乃東生」。
よみは「なつかれくさしょうず」。
乃東(なつかれくさ)が生える時期、という意味です。
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夏枯草(かごそう)の古い呼び名が「乃東」。
夏枯草は、シソ科のウツボグサ(靫草)の花穂の漢方生薬としての呼び名です。
ということで、「乃東生」は、ウツボクサが芽吹く頃、という意味になります。
ところが。
ウツボグサは多年草。
多年草でも冬に地上部分が枯れる植物もありますが、ウツボグサはロゼットの状態で冬を越します。
芽吹いたようには見えないでしょう。

「ロゼット」は、植物が茎を伸ばさず、地面の上に貼り付くように四方八方に葉をのばした状態のこと。
中国語では「蓮座叢(リェヌゾゥツォン))」。
「蓮座」は「蓮華座(れんげざ)」のことで、仏像が座っている蓮の花を模した台座のこと。
何重にも葉を重ねる様子を見立てたものでしょう。
ということで、この七十二候の「乃東」は、ウツボグサではないとする説もあります。
しかし、今のところ、ウツボグサ以外に「これだ!」というのは見つかっていないようです。

6月中旬の下赤阪の棚田のウツボクサの花
七十二候は、1年を24に分ける二十四節気(にじゅうしせっき)と同じように中国が発祥。
中国のものをそのまま使っている二十四節気とちがい、七十二候は日本オリジナルのものが少なくありません。
「乃東生」も日本オリジナル。
明治時代の暦(こよみ)の要約に書かれていたものですが、わずか百年ちょっとでなにかわからなくなってしまったというのは、おもしろいですね。

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