冬の池の赤潮? 実は……ちょっとややこしいシダ
冬。
溜池の水面が真っ赤に染まっていることがあります。
水が真っ赤に染まるというと、イメージするのが赤潮。
プランクトンが異常発生して海に赤い帯ができ、養殖の魚などが大量に死んでしまいう現象です。
原因のひとつは海の栄養が増えすぎたため、と言われています。
周りから隔てられた小さな池。
田畑の肥料などが流れ込んで栄養が増え、赤潮が発生したのでしょうか。

真っ赤に染まった池(花の文化園のひょうたん池)
しかしよく見ると表面が鱗のようにでこぼこザラザラしているようで、プランクトンよりももっと大きいもののようです。

よく見ると水面がザラザラしています
実は、これはプランクトンではなくて、植物。
水面に浮かんでいるアカウキクサの仲間。
ウキクサはサトイモ科に属する花が咲いて種ができる被子植物。
ところがこれはシダ。
名前には「ウキクサ」とありますが、ウキクサではありません。
花も咲きませんし種もできません。
アカウキクサとウキクサの分類を比べてみるとこんな感じです。
表は下に向かって大きな分類にまとまっていきます。
ワラビ(参考) | アカウキクサ | ウキクサ | イネ(参考) |
---|---|---|---|
ワラビ属 | アカウキクサ属 | ウキクサ属 | イネ属 |
コバノイシカグマ科 | アカウキクサ科 | サトイモ科 | イネ科 |
シダ目 | サンショウモ目 | オモダカ目 | イネ目 |
シダ綱 | 単子葉植物綱 | ||
シダ植物門 | 被子植物門 | ||
植物界 |

シダには見えないアカウキクサの仲間

種子植物のアオウキクサ
似たような生活をしていますが、見ての通り1番大きな分類の「植物界」以外共通しているところはありません。
まったくちがう植物です。
シダ植物のアカウキクサには「アカウキクサ」や「オオアカウキクサ」などの種があります。
ところが大阪では「アカウキクサ」は絶滅。自然の状態では見ることができない植物。
「オオアカウキクサ」は絶滅危惧 II 類。めったに目にできない植物。
ところが大阪で冬の赤い池は珍しくはありません。
それは「アメリカオオアカウキクサ」「ニシノオオアカウキクサ」またはこの雑種と思われます。
これらは名前のように外来種で、アメリカオオアカウキクサは外来生物法で規制・防除の対象になる「特定外来生物」に指定されています。

アップにしたアカウキクサの仲間
重なりあったうろこ状の葉が意外ときれい。
植物園の池でしたので通路から観察することができました。
溜池などでは立入禁止になり、水面まで急角度の斜面になっていることがあります。
接近しての観察は禁止されていない安全な場所で。
在来種のアカウキクサ、オオアカウキクサの減少と外来種のアメリカオオアカウキクサの増加がどのように関係しているのかわかりません。
外来種のアカウキクサは有機的農法の一つのアイガモ農法とともに広がったという経緯もあり、賛否両論あるようです。
残念ながら、生き物の関係というのはとても複雑なもので、専門家といえどもわかるのはその中のほんの少しだけ。
それも正しいかどうかもあやふやだったりします。
専門家の方は立場上そういうことを言わない人も少なくありませんが。
このアカウキクサの問題もそういうことの一つのようです。
アカウキクサの仲間は、見た目の生きている環境もよく似ていて区別が難しいこともあり、全てまとめて学術的な属名の「アゾラ」と呼ばれることもあります。

タグ: アカウキクサ アゾラ アメリカオオアカウキクサ シダ 冬のシダ

- 関連記事
-
- 金剛山モミジ谷の萌黄の滝はだいじょうぶ (2014/09/03)
- 冬の池の赤潮? 実は……ちょっとややこしいシダ (2014/04/11)
- 下赤阪の棚田の2014年 3月下旬には つくし (2014/03/30)
スポンサーサイト