【 2013年12月】

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〔よりぬきタグ〕 ◊巨古老樹◊金剛◊恐竜◊高野◊棚田◊錦織

七十二候第六十五候「麋角解」 冬に角を落とす大きな鹿ってどんな鹿?

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 一年で一番昼間が短い冬至(とうじ)
 二十四節気(にじゅうしせっき)ではおよそ15日間のことになります。

 その6日目から10日目あたりが七十二候(しちじゅうにこう)の65番目の「麋角解」。
 よみは「さわしかのつの おつる」。

 大きな鹿の角が落ちる季節ということです。

 鹿は牛と同じように頭に角がありますが、鹿は牛とちがって毎年生え変わります。
 それが晩秋や初冬。



 「さわしか」の由来はよくわかりませんが、「麋(び)」はオオシカのことで、今の呼び名では「ヘラジカ」になります。

 ヘラジカは日本在来種のニホンジカよりもはるかに大きく、角の大きさは2メートル、肩までの高さが2メートルを超えるものもいます。
 巨大な馬(「北斗の拳」の黒王)のような鹿です。

 分布は現在の北アメリカや中国東北部にシベリアから北ヨーロッパの北部ユーラシア。
 日本にはいません。

 七十二候の本家中国でも同じ「麋角解(ミジャォジェ)」。

 中国では一般的ではなくても、その存在は知られていたでしょうし、絶大な権力を持った乾隆帝(けんりゅうてい)のような皇帝なら飼っていたかもしれません。




ニホンジカの角は細くてとんがっています(奈良公園)




 しかし江戸時代の日本人がどのように認識していたのでしょうか。

 おそらく本草学で扱う想像上の動物に近い感覚ではなかったかと思います。

 ともあれ、日本に実在しない動物を持ちだして季節の移り変わりを表すというのは奇妙です。

 ということで、イメージしていたのは日本在来種のニホンジカの事だったのかもしれません。

 ただ、冬至というのはニホンジカの角が落ちる時期としてはちょっと遅いような気もします。

 日本風の七十二候を考えきれず、江戸文化によくある勢いで乗り切ったのかな、とも思います。



 ヘラジカは寒い地域の生き物で体も大きいから日本での飼育が難しいのでしょうか。
 2013年8月に神奈川県の夢見ケ崎動物公園のヘラジカが亡くなり、現在日本にはいないそうです。



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タグ: 七十二候麋角解ヘラジカニホンジカ冬至

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genre : 学問・文化・芸術

錦織公園で大阪の里山の樹木を考えてみました。[キーワード編]

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 大阪南部にある府営の錦織公園(にしこおりこうえん)。

 河内(かわち)地方の里山(さとやま)を利用した公園です。

 園内には2箇所に様々な遊具を設置した広場がありますが、それ以外の場所の多くに河内地方の里山のビオトープが残されています。

 そんな錦織公園の里山ビオトープに生える木を調べてみました。



 といっても錦織公園は広すぎて全体を調べるにはものすごい時間がかかります。
 というか、個人でやるのは現実的に無理です。

 そこで、河内地方の伝統的農家を再現した「河内の里」にある里山を通る道の「山辺の道」で調べてみました。

 調べるといっても本格的にやるほど時間もありませんし、許可も必要になるでしょう。

 ということで、道沿いにある木のみを対象としました。



 錦織公園の里山の植物の紹介はこちらになります。
【錦織公園で大阪の里山の樹木を考えてみました。[樹木編]】



子どもたちが喜ぶ遊具がいっぱいの水辺の里
子どもたちが喜ぶ遊具がいっぱいの水辺の里




 まず里山を知るためのキーワードをいくつか紹介します。


里山

 「里山」は、簡単にいえば人の手が入った山や丘陵の林のことです。

 自然というのは常にその場所で最終的に安定した状態の「極相(きょくそう)」に向かって変化していきます。
 変化に応じて生える植物も住む動物も変わっていきます。

 それを人間にとって都合のいい状態に留めるように手入れを行っているものが「里山」です。


 地域によって利用方法は変わると思いますが、近畿ではシイタケのホダ木や炭の材料に薪(まき)、落ち葉は肥料に利用されています。
 もちろん、山菜を収穫する場所としても使われています。


 農業から離れる人が増え、肥料も量産されるものを使いはじめるようになった現在、里山には人の手が入らなくなってきました。

 そういう里山は、その場所で安定した植物が茂る極相(きょくそう)に向かって変化していきます。

 このように里山が自然の状態に近づいていくことは、普通「山が荒れる」といわれます。

 しかし自然の視点で見れば、変化を止められている里山のほうが「山が荒れている」と言えるかもしれません。



池あり山ありの錦織公園
池あり山ありの錦織公園




植物群落

 そして自然の山であっても、人工的な里山であっても、草原などからいきなり森林がはじまるわけではありません。

 様々な段階のビオトープが連なって変化していきます。
 その隣り合った環境(ビオトープ)の変化していく境界のことを「エコトーン」といいます。

 草原は木が生えず草ばかりの場所です。

 それに対して森や林の中は高い樹木が枝葉を広げ、光は地面に届かず草もあまり生えません。
 草原とはまったくちがう環境です。


 森林のまわりの草原との境目あたり(エコトーン)には、低い木が生え蔓(つる)植物などが覆い、光や風が森林の中に入りにくいようにして、森林の中の乾燥を防いでいます。

 そういった部分を「マント群落」といいます。

 マント群落のまわりにはもっと丈の低い草を中心とした植物が茂り、マント群落の足元を固めています。
 これは「ソデ(袖)群落」といいます。


 低山をよく歩く人なら、ちょっとマイナーな道などで、登山口のまわりが低木や蔓植物などに覆われ、まるでバリケードのように中が見えなくなっていた経験があると思います。

 でも、そのバリケードを超えて中に入ると、背の高い木が並び、低木も蔓植物もなくなり、見通しが良くなります。

 このバリケードが森林を守っているマント群落。

 このようにマント群落とソデ群落で森林の中に必要以上の光や風が入ることを防ぎ、安定した環境が守られているのです。

 ですから森林の入り口と中とでは植物の種類が変わってきます。



河内の里のマント群落・ソデ群落(西側入り口)
河内の里のマント群落・ソデ群落(西側入り口)




陽樹と陰樹

 森を作る樹木は「陽樹(ようじゅ)」と「陰樹(いんじゅ)」に分けることができます。

 「陽樹」は発芽してから大きく育つまで明るい光を必要とする樹木です。

 ですから森が出来る前、まだ草原だったころに生え、大きく育ちます。
 ただ一度森ができてしまって地面に太陽に光が届かなくなると、種から育つことができなくなってしまいます。

 「陰樹」は発芽してから大きく育つまでは陽樹ほど光を必要としません。

 陽樹が育つことができないような薄暗いところで育つことができますが、大きくなるためには光が必要ですので、大きな木が倒れるなどして隙間ができるのを待つことになります。

 また直射日光が当たらなくても、明るい日陰程度で育つことができる陽樹と陰樹の中間のような性質を持つものが「半陰樹」です。


公園の代表的陽樹のコナラ
公園の代表的陽樹のコナラ



 ですから、森林は陽樹からはじまり、極相になるころには陰樹ばかりになります。

 陽樹が多いのはまだ新しい森林、陰樹が多いのは極相に近い森林ということができます。

 ただしどの場合でも陰樹中心になるわけではありません。
 環境によって変わってきます。

 日本の里山の場合、普通は陽樹中心になりますので、長い間手入れをしなければ陰樹が多くなり、“荒れて”いきます。



 次は、錦織公園河内の里の里山にある山辺の道の簡単な説明です。


出入口(マント群落)

 山と山でない場所の境目には、山の中に必要以上の風や光が入らないように丈の低い木などが生えています(マント群落)。

 河内の里では刈り込まれた草の場所から、丈の低い木と草が生え、地面の上から覆うように葉を茂らせています。
 高くならない低木が多く、高木になる木も若くてまだ低い木が多い部分です。



河内の里の里山への入り口(東側)
河内の里の里山への入り口(東側)




途中の下と上

 里山のメインとなるところで、もちろん一番広い範囲になりますので、上と下に分けました。

 「下」はマント群落に繋がる部分、「上」は開けた頂上に繋がる部分です。

 この部分の木々は光を求めて上へ上へと伸び、天井のように葉を茂らせますので、地面には光はほとんど届きません。
 そのため常緑樹・落葉樹とも高木ばかりで、種類としてはコナラが飛び抜けて多くなります。

 コナラはクヌギと並んで西日本の里山で好まれる樹木で、薪やシイタケのホダ木、木炭の材料などに使われ、落ち葉は腐葉土にして肥料になります。

 つまりコナラが異様に多いのは、里山の証拠になります。



コナラの木に覆われた山辺の道の途中
コナラの木に覆われた山辺の道の途中




頂上

 「頂上」といっても標高差わずか10mほど。

 展望台から「展望台東峰(仮称)」につながるので、地形的には尾根になります。

 この部分は平らになっていて草が短く刈られているので小さな広場になっています。
 つまり日当たりが良い場所。

 頂上部分は開けているので本来ならマント群落が発達すると思うのですが、斜面に丈が低い木が生えることでマント群落のかわりになっているようです。



開けた頂上部分
開けた頂上部分




 ということで、錦織公園の里山の植物の紹介はこちらになります。
【錦織公園で大阪の里山の樹木を考えてみました。[樹木編]】



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タグ: 里山錦織公園陽樹半陰樹陰樹マント群落ソデ群落

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干さなかったら吊るし柿? 予想通りに熟柿になりました。 干し柿2013

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 吊るしておよそ半月。

 皮をむいた干し柿は、もう十分食べることができそうです。

 皮をむいていない柿もやわらかくなってきて、トマトみたいな感じになっています。
 熟柿(じゅくし,ずくし)のようです。



9日目

全部皮をむいた干し柿
全部皮をむいた干し柿
半分皮をむいた渋柿
半分皮をむいた渋柿
皮をむかない渋柿
皮をむかない渋柿



15日目

全部皮をむいた干し柿
全部皮をむいた干し柿
半分皮をむいた渋柿
半分皮をむいた渋柿
皮をむかない渋柿
皮をむかない渋柿


 ためしに皮をむいた干し柿をちょっと切り取って食べてみると、十分甘くなっています。

 ただかすかに渋みが残っています。
 この柿の渋はちょっと手強いようです。



 いよいよ吊るし柿を食べましょう。

 まずはヘタを切り落としました。

 中もトマトのようにやわらかく、みずみずしくなっています。

 どうやって皮をむこうかと思っていると、手で簡単にむくことができました。

 全部皮をむいたら、中から出てきたのはいつも見ている柿とちがったやわらかくて濃いオレンジ色のくだもの。



 熟柿になった吊るし柿を切り分け、食べました。

 干し柿と同じようにちょっとだけ渋が残っていましたが、甘くて美味しい!

 味は干し柿と同じですが、みずみずしさがちがいます。
 とろりとした舌触りと、口の中に広がる甘い果汁。

 干し柿はもちろん、甘柿ともちがいます。



みずみずしくて美味しい熟柿になった15日目
みずみずしくて美味しい熟柿になった15日目




 柿のように果肉が多い実は、動物にやわらかい果肉を食べてもらい、かたくて食べられない種をばらまいてもらうことが目的と考えられます。

 そうすると、渋柿はまだ種が完成していないので果肉を食べられないほど渋くしている状態。
 種が完成すると食べてもらえるように渋くなくなる。

 そう考えると、ぴったり。
 渋柿は食べてもらいたくなると自然に甘くなるのです。



 柿はもともと渋柿で、甘柿は日本で発見された突然変異を増やしたものと言われるのも納得できます。

 つまり干し柿は甘くするために干すのではなく、長い間保存できるよう水分を抜くために干すのです。

 今ではそのまま食べられる甘柿や、渋を抜く加工をしたかたい柿を食べるのが普通になっていますが、昔は自然に渋を抜いたやわらかい熟柿を食べることもありました。



 自然に渋が抜けた熟柿。

 水分が多いだけに干し柿よりも日持ちはしないでしょうが、美味しい柿の食べ方にはちがいありません。

 まだ吊し柿は残っていますので、もう少し吊るしてから食べたいと思います。



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タグ: 干し柿渋柿干し柿2013熟柿

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ちょっとかわった魚の使い方 実は“いきもの”がいっぱい!国立民族学博物館


 世界中に住む人々の文化が展示されている大阪の万博(ばんぱく)記念公園の国立民族学博物館。
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 東アジア北部の民俗展示コーナーにはユニークな服が展示されています。
 革の服です。



万博記念公園の国立民族学博物館通称「民博」
万博記念公園の国立民族学博物館通称「民博」




 もちろん、牛や馬のようによく使われる革でも、ミンクやウサギなどの毛皮でもありません。
 当然、ヘビやワニの革でもありません。

 もっとユニークな革の服です。



 それは日本人にとっては馴染み深いもの。

 魚の革です。

 魚もそんなに珍しい種類ではありません。

 日本のどこにでもいるわけではありませんが、だれでも食べたことはあるような魚です。



民博に展示されている謎の革の服
民博に展示されている謎の革の服




 それは。

 サケ。

 塩鮭、新巻鮭のサケです。

 昔の北海道は魚の皮で服を作らなければならないほど獣(けもの)の皮が不足していたのでしょうか。

 それはわかりませんが、サケが季節が限られますが手に入れやすい大きな生き物であること、そして皮が丈夫で衣服に使えるからなのでしょう。

 展示されているものは見た目も丈夫そうで、立派な外套(アウター)になりそうです。
 実際サハリンアイヌは雨や雪を防ぐために使ったそうです。

 今でもサケの皮はいろいろなものに加工されて使われています。



サケの革で作られたサハリンアイヌの服のアップ
サケの革で作られたサハリンアイヌの服のアップ



 鮭というと北海道のイメージが強いですが、川を遡上するのは日本海側では島根県、太平洋側では千葉県が南限とされます。

 関東を流れる利根川(とねがわ)などは今でも風物詩となっていて、京阪神よりも身近な生き物だったのでしょう。

 一年を72等分して日本の季節の移り変わりを表す七十二候でも、12月の下旬、冬至の直前が「鱖魚群(さけのうお むらがる)」。
 「*鱖」はサケのこと。読みは「けい」。

 淡水魚を表し、近畿ではポピュラーなオイカワのこととする説もあります。
 ただ現在の七十二候は江戸時代に作られたものですので、サケと考えたほうがしっくりするでしょう。

 ともあれ、サケは北海道だけでなく、日本の多くの場所で初冬に恵みをもたらす生き物だったようです。

*鱖:魚偏に厥[魚厥]



 サケは川で産卵して寿命を終えますが、一生のほとんどは海で生活をします。

 つまり、海のものを川の上流に運んでいく役割を担っています。

 陸上で生活する人間もその恩恵を受ける生き物のひとつ。

 鮭の革の服もそう言う海の賜物(たまもの)のひとつなのです。



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タグ: 国立民族学博物館アイヌサケ鮭魚群七十二候非生物系muse.人文社会muse.

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標高差のない長い尾根道をトレッキング 天野街道陶器山

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 大阪南部の泉州(せんしゅう)と河内(かわち)を分けるようにある泉北丘陵(せんぼくきゅうりょう)。

 その泉北丘陵の中で大阪狭山市と堺市の境になっているのが陶器山(とうきやま)から南に伸びる尾根。

 そこには古来、河内長野市にある天野山金剛寺(あまのさんこんごうじ)への参詣道として利用された尾根伝いの道があります。

 今も天野街道として整備され、ウォーキングなどに使われています。



木々に覆われてるけど明るい街道
木々に覆われてるけど明るい街道
大阪の里山っぽくコナラが多い




 天野街道の陶器山付近は泉北ニュータウンと狭山ニュータウンの二つの住宅エリアに挟まれる形で、林は街道沿いにかろうじて残っているだけ。

 しかし人家が近いということは逆に言えばエスケープルートがいっぱいあるということで、標高差がほとんどない整備された道は比較的安全に歩くことができます。

 ということで、ウォーキングの人、遊ぶ子供、散歩する人、多くの人と出会います。




陶器山トンネルの休憩所
トイレもあります




 この日はロケハンを兼ねて道を知ることをメインにしましたので、じっくり観察できませんでした。

 幅が狭いとはいえ、延々数キロも続いている森は、様々な植物が茂り、鳥もいろいろ訪れるようです。
 ということは、虫もいろいろいるということになります。

 住宅地に開発されてきた泉北丘陵東地域としては貴重なビオトープにちがいありません。

 そしてほとんどアップダウンのない道は、自然を観察しながら歩くビオトープトレッキングにはピッタリの道です。


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 また日を改めて、じっくりとビオトープトレッキングをしてみたいと思います。



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タグ: 天野街道陶器山ビオトープビオトープトレッキングトレッキング

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七十二候第六十ニ候「熊蟄穴」 クマも冬眠するほど寒くなってきました。


 七十二候の第六十ニ候「熊蟄穴」。

 12月の初旬、冬至のおよそ10日前からはじまる候。

 よみは「くま あなにこもる」。

 クマが冬眠(とうみん)を始めるころ、です。



 クマは恒温動物(こうおんどうぶつ)。

 気温と関係なく、体温を一定に保つ生き物。
 人間と同じ哺乳類(ほにゅうるい)と鳥類が含まれます。

 体温が気温の影響を受けて変化しやすいのが変温動物(へんおんどうぶつ)です。
 哺乳類と鳥類以外の動物になります。



日本の本州と四国にいるニホンツキノワグマ(みさき公園)
日本の本州と四国にいるニホンツキノワグマ(みさき公園)




 恒温動物は寒い冬でも自由に動き回ることができますが、体温を維持するために大量の食べ物が必要になります。

 しかし、冬には植物が葉を落とし、木の実もなくなり、草食動物の食べ物がなくなってしまいます。

 ということは、肉食動物にとっても食べ物がなくなるということです。

 冬にも自由に動けても食べ物がなくなってしまえばたいへんです。



 ところが、一部の恒温動物は体温を下げ、エネルギーを使わないようにすることができます。

 それが冬眠です。

 冬眠することで食べ物の少ない時期を、なにも食べないで過ごすことができます。

 寝ているのではありませんのでその間は動くどころかおしっこもうんちもしません。

 もちろん動けないうちに襲われないように穴の中などに隠れます。



木にだって登れる機動力の高さ(みさき公園)
木にだって登れる機動力の高さ(みさき公園)




 すべての哺乳類が冬眠を行うわけではありません。
 寒いところに住んでいても冬眠をしない哺乳類もたくさんいます。

 しかし様々な種類が冬眠を行うので、哺乳類の共通の祖先が持っていた能力かもしれません。

 哺乳類の登場は恐竜と同じくらい古いのですが、今のように繁栄するようになったのは恐竜が絶滅してから。

 恐竜が滅んでからの新生代(しんせいだい)は、寒い冬があり、一年中溶けない氷がある、「氷河期」の時代がはじまります。

 恐竜が一度も体験しなかったような寒さをくぐり抜け、今の哺乳類の繁栄があるのです。



 緯度の高い地域に住み、体が大きいクマにとっては冬眠は冬を乗り切る大切な方法に違いありません。

 それと同時に、冬眠が七十二候に使われるほどクマは身近な存在だったようです。



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海遊館のリニューアル その1 見上げればワモンアザラシ


 2013年の7月に一部リニューアルした海遊館。

 生物多様性をコンセプトにした、「新・体感エリア」が新しくできたのです。

 ちょっと時間がたちましたが、見に行ってきました。



いっぱい人がやってくる海遊館
いっぱい人がやってくる海遊館




 いつものようにエスカレーターで8階まで上がり、新しいエリアはどこかなと思いながら回っていきますが、なかなかありません。

 大水槽が終わってクラゲ館も終わって、エントランスビルに移動したところにやっとありました。

 天井から氷山のようなものが飛び出ている廊下を通って入った部屋は、天井の真ん中にドーム状の水槽があり、そこにアザラシがやってくるのです。

 体中に模様があるのでゴマフアザラシのようですが、よく見ると模様は丸い輪になっています。

 そう、ワモンアザラシ(輪紋海豹)です。

 なんかゴマフアザラシに似てるなぁ、と思っていたら、同じゴマフアザラシ属でした。



気持ちよさそう
気持ちよさそう




 アザラシは入れ替わりにやってきて、目を閉じてドーム水槽の下にへばりついています。

 そしてどういうわけか目を閉じ、それが笑っているように見えます。

 よく見るとアザラシは足のヒレを動かし泳いでいます。

 止まっているように見えるのは、ドームに沿うように水の流れと同じ早さで泳いでいるからのようです。

 ですからどのアザラシも同じ方向に顔を向けます。



入れ代わり立ち代わりやってきます
入れ代わり立ち代わりやってきます



 入れ替わり立ち代りアザラシがやってくることからすると、この場所が気持ちいいのでしょうす。

 そして目を閉じるのも、なにか水の流れと関係がありそうです。

 ドームの底にやってくるアザラシ。
 なぜか目を閉じるアザラシ。

 半球になったアクリルガラス越しに見るためか笑っているように見えます。

 よく考えてデザインされています。



笑うワモンアザラシ
笑うワモンアザラシ




 アザラシを間近に見ることができるのはおもしろいことです。
 しかも下から見上げるのは、めったにないことでしょう。



 大水槽ブームの火付け役になり、海遊館を超える大水槽の水族館がどんどんできる中、水族館トップクラスの人気を20年以上持ち続け、日本中からリピーターがやってくる海遊館。

 リニューアルで新しい魅力が増えました。

 もちろん、リニューアルはこれだけではありません。

 それはまた次回!



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いよいよ収穫したのですが……タルサトイモ2013


 ゴールデンウイーク前に樽に植えたサトイモ。
 タルサトイモ。

 半年たって収穫を迎えました。

 邪魔な葉を切り落として、樽をひっくり返してとりだしてから、土を落としていきます。



 今年のタルサトイモはちょっと気になることが。

 残暑がたたったのか、秋になっても葉に元気がなく、芋がどれだけできているか心配です。



芋茎を切って準備中の今年のタルサトイモ
芋茎を切って準備中の今年のタルサトイモ




 果たして。

 豊作で芋同士が絡み合い収穫が発掘になってしまった去年とちがい、作業は粛々と進み、あっという間に終わってしまいました。



 結果。

 4株で合計25個。
 いままでで一番少ない数。

 去年なら大きな1株分にも及びません。



これでも今年一番11個できたタルサトイモ
これでも今年一番11個できたタルサトイモ




 サトイモは暑い国の出身のくせに、真夏の直射日光には弱いというちょっとかわった植物。

 毎年夏には葉が焼けて元気がなくなりますが、秋には復活していました。

 ところが今年の残暑はサトイモにも辛かったようです。
 結局冬まで元気になることはありません。

 ちょっと残念な2013年のタルサトイモでした。



 種芋を残し、あと半年間お休みです。

 来年は、いつもどおりたくさんとれますように。



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雪虫と 後を追いかけ しろかげろう


 紅葉を見に行った初冬の錦織公園(にしこおりこうえん)。

 里山の尾根道を歩いていると、小さな雪のようなものがふわふわ舞っています。

 雪虫(ゆきむし)です。



この記事にはの画像があります。




 雪虫はアブラムシの仲間で、いくつかの種類がいます。

 東北や北海道ではトドノネオオワタムシが有名です。

 雪虫は多くのアブラムシと同じように普通は翅(はね)を持っていません。

 寒くなってくるとおしりに綿のようなものをつけフワフワと飛びます。

 北の地域では、初雪の前触れとされるところもあるようです。




去年の雪虫




 雪虫はふわふわ飛んでいます。

 追いかけていき、照葉樹の葉にとまったところで、写真を撮りました。

 近くでじっくり見ていると、おしりのふわふわ綿毛がありません。

 雪虫の体は黒く翅は透明ですが、この無視は体全体が白く翅まで白い色をしています。

 全身真っ白の虫が飛んでいる様子が雪虫のように見えたのでしょう。




雪虫じゃない白い虫



 画像を拡大すると、体が細く雪虫どころかアブラムシでもなさそうです。

 アブラムシと同じカメムシ目のコナジラミのようにも見えます。

 タバココナジラミのようですが、薄いからだ、途中が太くなる脚、黒くて前に伸びた触角は、コナジラミではなさそうです。

 顔や触角を見ていると、クサカゲロウなどのアミカゲロウ目のようにも見えます。

 調べてみると、やっぱりアミカゲロウ目コナカゲロウ科のコナカゲロウのようです。




コナカゲロウだった白い虫




 雪虫もコナジラミも不完全変態のカメムシ目。

 コナカゲロウは完全変態のアミカゲロウ目。

 ちょっと遠い種類になります。


 今年最初の雪虫の写真と思ったのですが、ちちがう虫でした。



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真っ赤に燃える初冬の山 二上山雄岳


 大阪は山に囲まれていますが、みんな低山。
 金剛山を除いて1000mに満たない山々です。

 歴史が古い上に都市部に近いため標高の高いところは杉の植林、低いところは里山。
 人の手が入っています。

 杉は常緑樹ですから、冬でも緑色。

 里山に植えられているのはコナラやクヌギの落葉樹。

 ちょうど葉が落ちる季節です。



 大阪と奈良を分ける低山の一つ、二上山(にじょうざん)。
 万葉集も詠まれた歴史のある山。

 名前の通り2つの山が並んでいます。

 高いほうが雄岳、ちょっとだけ低いほうが雌岳。

 雄岳の方はコナラに覆われ、綺麗に黄葉(おうよう,こうよう)しています。



雌岳から見た褐葉する雄岳
雌岳から見た褐葉する雄岳




 山登りの最大の欠点は、登っている山を見ることができないこと。

 いや、山にいるのですから見えるものすべて目的の山ですが、山そのものの姿形を見ることはできません。

 雄岳と雌岳の間の四つ辻となっている峠の馬の背から雄岳山頂への登山道は、コナラに覆われています。

 登山道には落ち葉がたまっていますが、まだ黄色に染まった葉がついています。

 光が透ける黄色い葉を見上げながら山頂を目指すことになります。



雄岳の黄葉するコナラ
雄岳の黄葉するコナラ




雄岳の褐葉気味のコナラ
雄岳の褐葉気味のコナラ




コナラの落ち葉など
コナラの落ち葉など

コナラはミズナラと同じようなところに生え、同じような見た目です。
わかりやすいのは葉柄(ようへい)(葉の柄の部分)の長さ。
葉柄がはっきりと見えればコナラ。
葉柄が極端に短かったらミズナラ。
近畿ではミズナラは標高の高いところに生えますが、二上山程度(517m)ではまだミズナラはないようです。



 ところが二上山から離れて、南河内地域を流れる石川の河原から見ると褐葉(かつよう)のほうが目立ち、真っ赤に燃えているように見えます。

 山を見るのために、山の懐に入るのと、山から離れるのでは、見える色がちがいます。

 木を見て山を想像しても、山を見て木を想像しても、現実とは違っていました。



石川の河原から見た二上山
石川の河原から見た二上山
赤く燃える雄岳(左)に対して緑が多い雌岳(右)が印象的




 そんなことに気づいた、紅葉も終わりかけの初冬の二上山です。



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タグ: 紅葉褐葉黄葉二上山コナラ

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