花が少ない初冬の萬葉植物園の金色の花
今からおよそ1300年前の奈良時代に作られた日本で最も古い歌集の万葉集(まんようしゅう)。
その歌に詠(よ)まれた植物が集められた万葉植物園。
日本中にある万葉植物園の中で最初に開かれたのが、奈良公園にある「春日大社 神苑 萬葉植物園」。
木々の葉が色づき始めた初冬の奈良公園。
といっても真っ赤に染まっているのは外来種のナンキンハゼ。

紅葉したナンキンハゼと観光客とシカ
奈良公園のはずれには春日大社(かすがたいしゃ)の鎮守(ちんじゅ)の杜(もり)の春日山原始林があります。
神域として長い間ほとんど人の手が入らなかったため、森林の移り変わりがとまる「極相(きょくそう)」という状態です。
奈良公園は気候区分では「暖帯(だんたい)」と呼ばれる「わりと温かいところ」に区分されていますので、奈良公園の自然林は冬でも葉が落ちない照葉樹(しょうようじゅ)の森になっています。

極相に近づいている奈良公園の森の林床
草がないのはシカが食べるせいでもあります。
照葉樹が目立つ奈良公園で、いろいろな植物が植えられている植物園はちょっと雰囲気の違う場所になっています。
しかし稲刈りも終わり、秋の七草もナンバンギセルも咲き終わり、かといってツバキにはまだまだ早すぎる初冬の萬葉植物園。
ほとんど花がないなかで、小さな花が咲いていました。
いや、正しくは花ではありませんが、まるで花のように見えます。
しかも金色の。

花が少ない初冬にたくさん咲いている萬葉植物園の金色の“花”
それはハナワラビ。
冬に葉が茂る冬緑性のシダ植物。
正門から入って右側、椿園の入り口付近のあまり日の当たらない木の陰、コケのじゅうたんの中に生えています。
下の方に広がるのは、光合成をして栄養を作り出すことを役目にしている栄養葉(えいようよう)。
花のように見えるのは、胞子が詰まった胞子嚢(ほうしのう)をたくさんつけた胞子葉(ほうしよう)。
よく見かけるのはフユノハナワラビ(冬の花蕨)とオオハナワラビ(大花蕨)。
これは葉のふちにあるギザギザの鋸歯(きょし)が細かいのでオオハナワラビ。
![]() 花のようなオオハナワラビの胞子葉 |
![]() 細かい鋸歯の栄養葉 |
手入れされるときに刈られてしまうのか、小さいものばかり。
でも、花が少ない初冬の植物園で咲く数少ない花。
しかも金色の花です。

春日大社神苑萬葉植物園のオオハナワラビ
ただ、万葉植物じゃないでしょうから、毎年ここに咲いているのかどうかは、わかりません。
オオハナワラビも植物園の一員になってくれれば、うれしいな。

タグ: 萬葉植物園 オオハナワラビ ハナワラビ 奈良公園 シダ 冬のシダ 冬の奈良公園 植物園

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