梅雨ごろ、金剛山で咲くマムシグサ。
漢字で書くと「蝮草」。
まっすぐ立ち上がった茎の先でにょろりと垂れ下がった花びらが鎌首をもたげたマムシを想像させるとか、茎の縞模様がマムシを連想させるとかいろいろといわれてますが、名前の由来はよくわかりません。
ただ、「マムシグサ」というのは特定の種の名前に使われるだけでなく、サトイモ科テンナンショウ属の植物一般に使われる場合もあります。
このテンナンショウ属は専門家でも区別の難しいところがあります。
そこで今回は種を特定せず、テンナショウ属の話として、この属の一般的な名前の「マムシグサ」と呼ぶことにします。

マムシグサとマムシグサの“花”
これがマムシグサの“花”です。
実は花びらのようにも見えるのは、花を包む
苞と呼ばれるもので、サトイモ科では大きく発達したので
仏炎苞ぶつえんほうとよばれています。
テンナショウ属ではちょっとわかりにくいかもしれませんが、同じサトイモ科のミズバショウ属のミズバショウだとわかりやすいと思います。
![黄色い花を白い仏炎苞で包んだミズバショウ[六甲高山植物園]](http://blog-imgs-17.fc2.com/i/k/i/ikimono8000/058702.jpg)
黄色い花を白い仏炎苞で包んだミズバショウ[六甲高山植物園]
そして仏炎苞に包まれているのが本当の花です。
マムシグサの場合は、筒になった仏炎苞の中に棒のようなものが見えます。
この下に小さな花がまとまって咲いています。

マムシグサの“花”
マムシグサは、
雄株おかぶと
雌株めかぶに分かれています。つまり、雄株は雄花だけ、雌株は雌花だけしか咲かないということです。
雄花と雌花ば別ということは、花粉を運ばないといけません。
雄花と雌花が別々の植物の多くは、風か虫をつかって花粉を運びます。
マムシグサは虫を使う植物です。
花に入った虫は仏炎苞の奥、花粉のあるところへ下りて行きます。
そこは狭くなっていて、虫は逆戻りができません。
そのまま下へ下へと行って花粉だらけになって底にたどりつくとすき間があって虫はやっと外にでることができます。
そして雌花へ花粉を運ぶことになるのですが、雌花も中は狭くなっているので花粉はちゃんと
雌蕊めしべに届きます。
しかし。
雌花には隙間はありません。

隙間が開いたマムシグサの雄花
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隙間が無いマムシグサの雌花
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そうです。
外に出ることができない虫たちは雌花の奥で……

マムシグサの雌花の奥で……
マムシグサの雌花怖ろしや。
しかし、虫が最初に雌花に入ってしまったら、どうするのでしょうか。
雌花もすき間があるほうが効率がいいような気が……
梅雨時のハイキングでマムシグサを見かけたら、仏炎苞の付け根を見てみましょう。
雄花か雌花かわかります。
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