大阪展は終わってしまいました。
でも期間中に書けなかったことがまだ少しあります。
ブロガー招待していただいた自然史博物館には申し訳なく思いますが、すでに4つ書いていますし、入場券でも見に行っていますので、大目に見てもらえると信じています。
そして生命大躍進展は岡山会場ではじまりましたので、見逃した方はまだだいじょうぶです。
●今までの「生命大躍進展」の記事
【生命誕生から人類まで40億年の本物の証拠がたくさん!】
【5億年分のいろんな動物がたくさん!】
【カンブリア爆発のいろんな動物がたくさん!】
【巨大ウミサソリとぞわぞわの節足動物がたくさん!】
しょくぽんといっしょ
生命大躍進展の見どころはとてもたくさんありますが、その一つは6メートルのダンクルオステウスの実物大生態復元模型。
化石の実物でもレプリカでもありませんが、現在の知識で復元した生き物は、専門家でない者にとっては、ある意味化石以上に意味のあるもの。
クジラも首長竜もいなかった時代にも、こんな大きな生き物が海を泳いでいたということを実感できます。
文字や絵ではちょっとわかりにくいことです。
迫力ある6メートルのダンクルオステウス!
ただ、このダンクルオステウスはちょっとクセモノ。
なぜなら、頭の骨しか見つかっていないのです。
大きな頭の化石を残していながら、軟骨魚類という骨が柔らかい種類。
体の骨が化石になりにくいのです。
そもそも大きな生き物の全身が化石に残ることはとてもまれなこと。
さらに骨自体が化石になりにくい。
そして大きな生き物は数がものすごく少ないとしたら。
ですから、このダンクスオステウスの胴体は、100%想像なのです。
ダンクルオステウスの頭の化石のレプリカ
といっても、まったくのデタラメにつくったわけではありません。
近い種類の魚の化石などから推測して復元していくことになります。
ということは、復元をする人の知識やセンスが大きく影響します。
つまり、10人いれば、10種類の復元があるわけです。
とはいえ、ダンクルオステウスに恐竜のうような体をつけるわけはなく、概ね似たような姿になります。
ダンクルオステウスは古生代の巨大魚ということで結構有名ですから、復元図はよく目にします。
それらの多くは細長い尾の上下にヒレがつくオタマジャクシのような姿。
ヒレの形はオタマジャクシよりもスマートな形が多いですが。
生命大躍進展のダンクルオステウスもスマートなオタマジャクシ型。
鏃のようなダンクルオステウスの尾とヒレ
残念ながら、今回の復元に至るまでの経緯は図録にも載っていませんのでわかりません。
ただ、今は一般的な復元された姿ということは言えるでしょう。
ところが、オリジナルグッズを販売している売店で売られているフェバリットのダンクルオステウスのフィギュア。
ビニールモデルとソフトモデルの2種とも尾ヒレはサメのような形をしています。
もちろん、このデザインも適当につくったものではありません。
原型デザインは古生物復元模型作家の徳川広和さん。
ご本人から直接お聞きしたこともありますが、ブログによると、ダンクルオステウスに近い種類と考えられ全身の化石が見つかっているコッコステウスを参考にしたものだそうです。
ただコッコステウスは小型魚なので、同じ軟骨魚類で今も生きている巨大サメ類も参考にし、研究者の監修のもとつくりだされた姿です。
専門家ではないので、どちらの復元が正しいのかはわかりません。
しかし、会場に展示されているコッコステウスの化石を見ればなんか納得できます。
全身残ったコッコステウスの化石
コッコステウスの化石では、背骨が尾の方で急に上向きに曲がっています。
これはサメと同じ。
サメの場合、この向きが変わっているところから尾ビレがはじまります。
つまり、この上に曲がった背骨は、ブーメラン型の尾の上側。
そして下側は細長い軟骨が支えています。
タイやイワシなどの魚の尾ビレには背骨はなく、細い鰭条で支えられています。
このように見た目は似ていても、尾のつくりはまったくちがいます。
コッコステウスは、サメのように背骨で上のヒレを支え、下のヒレを細長い軟骨で支えていたと考えられています。
当然、近い種類のダンクルオステウスも同じと考えてもおかしくありません。
タイやイワシの尾に近い形のユーステノプテロンの化石の尾
魚の尾ヒレというと、どうしても胴の後端から扇形に広がったものを想像してしまいますが、泳ぐための尾ヒレの形として考えると、むしろ少数派になります。
たとえは今もいる魚類でも、軟骨魚類はエイのように尾になっているか、サメのようなブーメラン型。
また尾をヒレに変化させた生き物でも、このブーメラン型の尾は少なくありません。
魚竜とかモササウルスのように。
と考えると、ブーメラン型の尾ヒレは進化としてはよくある形なのかもしれません。
会場には、ほかにも古代魚の化石がたくさん。
見くらべてみると、おもしろい発見があるかもしれません。
そしてグッズコーナーもチェックです。
2016/07/19加筆
【年代層序表〈顕生代〉β2 動物と植物】
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大阪市立自然史博物館
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