里山の道を歩いていると、ちょっとかわった杉林と出会いました。
いや、杉というにはちょっと変です。
下生えの平たい草の中からすっくと天を突くように伸び上がった姿は杉ですが、枝葉があるように見えません。
緑色ですから、幹に沿わして枝を張る新種の杉でしょうか。

ちょっとかわった杉の林
というのが真っ赤なウソなのは、言うまでもないでしょう。
この“杉”の高さは数センチ。
5センチもありません。
生き物ですが、植物ではありません。
もちろん動物でもありません。
それは、地衣類(ちいるい)。
地衣類はカビと藻類(そうるい)がひとつになったもので、藻類が光合成して作った栄養でカビは生きています。
カビが藻類に住むところを提供して、家賃で生活しているようなもの。
ですから、共生している藻類がいなくなると地衣類のカビは生きていけません。
二つの生き物ですが、一つの生き物のようになっているのが地衣類の特徴。

実はちっちゃな地衣類の林
ちょっとかわっているようですが、人間も腸の中にもいろいろな微生物がいて、その力を借りて生きています。
そういった微生物がいなくなると、人間は病気になってしまいます。
ですから、生き物の中ではあたりまえのことなのかもしれません。
地衣類の説明は閑話休題。
この枝のような地衣類はヤリノホゴケのようです。
名前に「コケ」とついていますが、もちろんコケではありません。
コケは自分で光合成ができる植物です。
ヤリノホゴケは山地から里山のわりと日当たりがいい倒木や土の上に生えます。
根本の鱗(うろこ)のようなものは基本葉体(きほんようたい)と呼ばれ、これもヤリノホゴケ。
ニョキッと生えている方は子柄(しへい)といって、胞子が入った子器(しき)をつけます。
ヤリノホゴケ(槍穂苔)
真核生物 菌界 子嚢菌門(ここまではカビやキノコも含みます)
チャシブゴケ菌綱 チャシブゴケ目 ハナゴケ科 ハナゴケ属
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よく見ると、変なヤリノホゴケがあります。
先が枝分かれして、赤くて丸いものが付いているものもあります。
色もちょっと灰色がかっているようにも見えます。
根本の鱗のような基本葉体も小さいようです。

変なヤリノホゴケ?
こちらはコアカミゴケのようです。
ヤリノホゴケと同じハナゴケ属ですが、ちがう種類。
コアカミゴケ(小赤実木毛)
真核生物 菌界 子嚢菌門(ここまではカビやキノコも含みます)
チャシブゴケ菌綱 チャシブゴケ目 ハナゴケ科 ハナゴケ属
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緑色に見える地面も近くからじっくり見てみれば、小さな大森林が広がっているかもしれません。

地衣類が生えていたのはこんなところ
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