大阪湾の生き物と、それにまつわる人々の文化が展示されている大阪市立自然史博物館の「いきもの いっぱい 大阪湾」。
大阪湾でみつかった生き物の標本がいろいろと展示されています。
その中でびっくりしたのがナメクジウオ(蛞蝓魚)。

長居公園の植物園分岐の角に立つ看板
ナメクジウオは5センチあるかないかの大きさの動物で、魚のようで魚でなく、名前のようにナメクジが魚に進化したとも思えるような生き物です。
ナメクジウオは頭索動物(とうさくどうぶつ)に分類され、人間も含まれる脊椎動物(せきついどうぶつ)と同じ脊索動物門(せきさくどうぶつもん)。
親戚です。
ところが最近、ナメクジウオの遺伝子の解析の結果、頭索動物は脊椎動物の先祖だったことがわかったのです。
つまり、脊椎動物は頭索動物から分かれたことがわかったのです。

神戸垂水区で採取されたナメクジウオの標本
ナメクジウオのような頭索動物は、動物の基本的な種類がいきなり増えたカンブリア紀に登場したと考えられています。
有名なバージェス動物群のピカイアなども頭索動物と考えられています。
復元された絵は、ナメクジウオそっくり。
ナメクジウオは生きた化石だったのです。
しかしナメクジウオは原始的な魚のように見えないこともありませんが、体の作りはかなりちがっています。

自然史博物館「OCEAN! 海はモンスターでいっぱい」で
展示されていたバージェス動物のピカイアの化石
「ウオ(魚)」と名前にありますが、魚ではありません。
例えば、目はありませんし、心臓もありませんし、脳もありません。
光を感じる器官や、血液を流す器官、神経はありますが、特定の機能を持つまでの形になっていないのです。
例えば魚にある脊椎がありません。
かわりにあるのが脊索。

自然史博物館の第39回特別展「ホネホネたんけん隊」で
生体展示されていたナメクジウオ
なんとなく似ているようですが、脊索は神経の管、脊椎は中枢神経(ちゅうすうしんけい)の一つ脊髄(せきずい)を守る骨のこと。
骨で覆われているかいないかの違いのようですが、脊椎動物の多くは最初は脊索を持っていますが生まれてくる前に消えてしまいかわりに脊椎ができます。
つまり、脊索と脊椎は役割は似ていてもちがうものであることと、脊椎動物は脊索動物から進化したことがわかります。
そんな人間のご先祖様が大阪湾にも住んでいたのす。
大阪湾に接する府県のレッドデータも兵庫県で絶滅危惧II類に指定されているだけで、大阪府も和歌山県も指定されていません。
ナメクジウオはそんなに深くない砂地に住んでいます。
普通に海水浴に来ただけでは出会うチャンスはなさそうですが、人間のご先祖様が大阪湾に住んでいるというのは、おもしろい!
「いきもの いっぱい 大阪湾」には、ほかにもいっぱい「大阪湾にこんなのいたの!?」というような生き物が展示されています。
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