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生き物としての恐竜のリアルな生きている姿を鳥から考えてみましょう!『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』川上和人著 技術評論社刊

 ストレートで、わかりやすく、ワクワクするようなタイトルで、内容もその通り。
 そして以前から読んでみたいと思っていたテーマの本です。

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

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恐竜と鳥の関係

 鳥が恐竜から進化したというのは、恐竜好きの人にとっては説明の必要のない常識のようなことかもしれません。
 でも恐竜に興味のない人にとっては、鳥好きでも今ひとつ「?」となってしまうかもしれません。

 それもそのはず、現在の分類学では恐竜は爬虫類の中のグループの一つで、鳥は爬虫類とはちがうグループ。
 つまり、鳥は恐竜から人間と同じくらい遠い動物で、ワニやトカゲのほうがずっと恐竜に近い動物ということになります。
 あれ、ヘンです。

空から再び地面の上に戻った恐竜みたいな鳥のダチョウ(天王寺動物園)
ダチョウ

恐竜のグループ 鳥のグループ

 今の分類学は見た目や体の構造などで分けるのではなく、進化で分かれていった生き物たちを、近いグループごとにまとめるようになってきています。
 恐竜と鳥を中心に、さまざまな情報を参考にしてまとめてみると、こんな感じになりました。

鳥従来 鳥進化 恐竜 ワニ カメ トカゲ・ヘビ 哺乳類

脊索動物門




脊椎動物亜門




顎口上綱



鳥綱 爬虫綱


哺乳綱
鳥類 双丘亜綱




主竜形下綱

鱗竜形下綱

主竜類
カメ類


恐竜上目 ワニ形上目



竜盤目 鳥盤目 ワニ目



獣脚亜目
ワニ類



テタヌラ下目





エウマニラプトル類





鳥群 トロオドン等





鳥類





鳥従来 鳥進化 恐竜 ワニ カメ トカゲ・ヘビ 哺乳類

 今の分類と鳥の進化の道筋では、ぜんぜんちがってきます。
 恐竜から鳥が進化したのなら、鳥は爬虫類の中の恐竜の中のグループの一つに収まらなければなりません。
 それだけ鳥の特徴が今いる爬虫類とかけ離れています。
 恐竜の研究が進んだおかげで、鳥が恐竜から進化した、つまり鳥は爬虫類の一部だったということがわかってきたのです。

恐竜というかなんか翼竜っぽいアオサギ(天王寺動物園)
アオサギ

恐竜の専門家 鳥の専門家

 ということで、鳥の専門家が恐竜について語るということは、「今の常識」ではヘンですが、実はとても当たり前なことなのです。
 というか、鳥の専門家は恐竜の専門家でもあるのです。
 意識している人は少ないかもしれませんが。

 では、鳥の専門家が恐竜について語ると、どうなるでしょうか。
 鳥と恐竜の大きなちがいは何かというと、たとえば今生きている姿を観察できるか、それとも骨しかみることができないか。
 それも、生きているときの様子を残していない化石となった骨を。

日本の獣脚類の恐竜のフクイサウルス(福井県立恐竜博物館)
フクイサウルス

骨から生きている時の様子を想像してみると

 骨から生きている姿を考えるのはどういうことでしょうか。
 その1例が冒頭にあります。
 鳥の骨格の写真。
 スマートな体、小さく丸い頭に、先がカギ状に曲がった太いクチバシ。
 そして鋭いカギヅメを持った力強い趾(あしゆび)。
 見るからに猛禽。
 さあ、この鳥は一体何でしょう。

 ワシやタカの仲間にちがいありません。
 と多くの人は思うかもしれませんが、ちがいます。
 正解はコノハズク。フクロウの仲間です。
 フクロウというのは、丸くて大きな頭に、コロコロでもふもふとした体が特徴。
 こんなスマートではありません。

日本にもいる猛禽のオジロワシ(天王寺動物園)
オジロワシ

 ところが、あのコロコロでもふもふした姿は、ふくらんだ羽毛がつくりだしたもの。
 「中身」はあんなにコロコロしていません。
 それがわかるのは、生きているときの姿を知っているから。
 知っていなければ、骨からあのコロコロでもふもふを想像できたでしょうか。
 これが骨から生きていた姿を想像する難しさです。

 骨から生きていた姿を想像するのが恐竜学者。
 恐竜の研究者は、こんなにすごいことに挑戦し、少しずつですが確実に答えを見つけ出しているのです。
 今まではわからないと思われていた恐竜の色も、ほんの少しですがわかってきました。
 これは、とてもすごいことです。
 しかし、それでもわからないことのほうが多いのが現実。

飛んでる状態で復元されたウミネコの骨(大阪市立自然史博物館)
ウミネコ

恐竜のリアルな姿

 そこで、少し視点を変えて、生きている恐竜である鳥から、鳥以外の恐竜の生きていた姿を考えるのが、この本。
 ただ、骨を見ただけでも恐竜と鳥はちがうところがたくさんあります。
 もちろん同じように生活していたわけではありません。
 ということで、鳥とのちがいから恐竜が生きていた姿を推理していきます。
 「はじめに」で「鳥の研究者が現生鳥類の形態や生態を介して恐竜の生活をプロファイリングした御伽噺」と書かれていますが、とてもリアリティと説得力がある恐竜の生きている姿が描かれています。

 なかほどにとても興味深い言葉があります。
  「行動は形態を進化させる。しかし、行動は必ずしも形態に束縛されない。」
 鳥の専門家ですから、鳥がどのようにして恐竜から進化したのかという話もあります。
 もちろん、鳥の進化をなぞるということは、その元になる恐竜の姿を描く事にもなります。
 リアルの鳥から恐竜のリアルな姿を考える鳥の専門家の本は、今までの恐竜の専門家の本とはちょっとちがう視点で新しい発見があります。

想像で作らざるをえない生きた姿のティラノサウルス(福井県立恐竜博物館)
ティラノサウルス

 どのような経緯で、鳥から恐竜が生きている姿をプロファイリングしていくのかは、ぜひ本をドキドキ・ワクワクしながら読んでいってください。
 今までの恐竜の本にちょっと不満を持っている人はもちろん、満足してる人も読んでみると興味深い本にちがいありません。

■参考外部リンク■
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る:書籍案内|技術評論社

天王寺動物園HOMEPAGE
FPDM: 福井県立恐竜博物館
ようこそ大阪市立自然史博物館へ

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特別展「スペイン 奇跡の恐竜たち」で恐竜と鳥の境界をさがしてみました!〈大阪市立自然史博物館〉


 大阪市長居公園の自然史博物館で開催中の「スペイン 奇跡の恐竜たち」。

 タイトルのように「恐竜」が展示されているので恐竜に興味がある人しか楽しめないのかな、と思ってしまうかもしれません。

 いえいえ、決して恐竜だけではありません。



◆「スペイン 奇跡の恐竜たち」の記事をまとめてみる
【「スペイン 奇跡の恐竜たち」が大阪ではじまりました!】
【「スペイン 奇跡の恐竜たち」で恐竜にも肉球があるのか見てみました!】
【「スペイン 奇跡の恐竜たち」ででっかい恐竜が歩く姿を想像してみました!】




会場までの道を教えてくれる特別展恒例の幟




 多くの恐竜が見つかっているスペインのラス・オヤスでは、恐竜以外に鳥の化石も見つかっています。

 鳥です。

 恐竜が含まれる爬虫類の爬虫綱と別の鳥綱に分類されていますが、鳥が恐竜から進化したというのは、専門家でなくても知っている人は少なくないと思います。

 恐竜から鳥への変化を見られるように、世界中で見つかった鳥みたいな恐竜、恐竜みたいな鳥、そして鳥の化石や復元模型もが並べられています。



 ということで、恐竜→鳥コーナーに展示されている化石と復元模型を展示順に並べてみました。

 それに会場の展示や図録に書かれていた説明などもまとめてみました。

 さあ、恐竜と鳥の境界は、どこにあるでしょうか。




羽毛がある復元に変わったペレカニミムス




 会場では恐竜から鳥への変化については、このように説明されています。
1.羽毛が生える
 例)シノサウロプテリクス

2.翼ができる
 例)カウディプテリクス

3.羽ばたける
 例)アーケオプテリクス

4.飛べる
 例)コンコルニス

5.上手に飛べる
 例)現在の鳥


 鳥としては「3.羽ばたける」と「4.飛べる」が重要でしょう。

 飛ばない恐竜にとっては羽ばたく、つまり前肢を左右に広げて体の前後に動かす必要はないはず。

 翼で推力と揚力を生み出すために必要な風切羽(左右非対称の羽毛)が発達したのも「3.羽ばたける」。

 「4.飛べる」では低速時の安定を生み出す小翼羽の発達と、軽量化のためでしょう、尾が短くなります。

 「5.上手に飛べる」は羽ばたくための強力な筋肉をつけるための胸の竜骨突起の発達があります。



シノサウロプテリクス
分類:獣脚類 コンプソグナトゥス類
時代:白亜紀前期
分布:中国
羽毛:チューブ状羽毛
顎:クチバシはなく細かい歯
尾:長い尻尾
後肢第1趾:後ろ向きだが小さく枝はつかめない
これはどう見ても毛が生えた恐竜。
鳥には見えません。
分類:獣脚類 オヴィラプトル類
時代:白亜紀前期
分布:中国
羽毛:左右対称の羽
顎:クチバシになっているが上顎に小さな歯
尾:羽が生えた尻尾
後肢第1趾:後ろ向きだが小さく枝はつかめない
前肢には羽が生えてますが、やはり鳥というより違和感がある恐竜って感じ。
分類:獣脚類 ドロマエオサウルス類
時代:白亜紀前期
分布:中国
羽毛:風切り羽
顎:クチバシはなく小さい歯
尾:長い尻尾
後肢第1趾:後ろ向きだが小さく枝はつかめない
これだけ大きな羽がつくと復元模型ではかなり鳥っぽくなってます。
でも化石を見ると、まだ恐竜みたい。

分類:獣脚類 アーケオプテリクス類
時代:ジュラ紀後期
分布:ドイツ
羽毛:風切り羽
顎:クチバシはなく鋭い歯
尾:長い尻尾
後肢第1趾:後ろ向きで枝をつかめる
飛んでる姿は鳥ですが、顔はまだ恐竜。
趾(あしゆび)は、かなり鳥っぽい。
分類:鳥類 コンフキウソルニス類
時代:白亜紀前期
分布:中国
羽毛:風切り羽
顎:クチバシで歯は無い
尾:尾端骨
後肢第1趾:後ろ向きで枝をつかめる
化石はわかりにくいですが、復元模型ではもう鳥。
飾り尾羽の有無でオスとメスのちがいがわかるそうです。
ちなみに、この復元模型はオス。
コンコルニス・ラクストリス
分類:鳥類 エナンティオルニス
時代:白亜紀前期
分布:ラス・オヤス
羽毛:風切り羽
顎:クチバシに歯?
尾:尾端骨
後肢第1趾:後ろ向きで枝をつかめる
ラス・オヤスで見つかったのですが、復元模型はありません。
残念。
趾は鳥そのものですが、足の骨の長さは鳥よりも獣脚類の恐竜っぽい。
アホウドリ(信天翁)
分類:鳥綱 ミズナギドリ目 アホウドリ科 キタアホウドリ属
時代:現代
分布:北太平洋
羽毛:風切り羽
顎:クチバシで歯は無い
尾:尾端骨
後肢第1趾:退化
大阪市立自然史博物館オリジナルの展示。
木にとまらない水鳥の例にもれず第1趾は退化しています。
もちろん、樹上を生活の場にしている鳥には長い第1趾があります。



 さあ、どうでしょう。

 会場の表示ではアーケオプテリクスまでが「獣脚類」。

 コンフキウソルニスから「鳥類」。

 Dに恐竜と鳥の境界があるようです。

 復元模型を見てみると、アーケオプテリクスは鳥のふりをしている恐竜のようですが、コンフキウソルニスはもう鳥。



 もちろん鳥と恐竜はなんとなく「雰囲気」で分けているのではありません。

 「鳥」としての特徴の有無も大切。

 ということで、図録に書かれていた鳥の特徴です。
1.脳が大きくなり、頭骨の癒合が進んでいる
2.手の骨が癒合し、骨の数が少なくなる
3.腰の骨が癒合している
4.尾椎が癒合し尾端骨になっている
5.胸骨が大きくなり竜骨突起が発達する
6.(肋骨に)かぎ状の突起がある
 確かにこれからすると、コンフキウソルニスから当てはまりそうです。




オニオオハシの全身骨格
趾の第4趾が後ろをむいて、樹上生活に適応しています。




 ただ前足に風切羽が生え、後ろ足の親指がほかの指と向き合うようになったものを「鳥」とする場合もあります。

 樹上生活になり、飛ぶことができるようになったのが「鳥」ということでしょう。

 その場合は、足の第1趾のちがいでミクロラプトルまでが恐竜、アーケオケオプテリクスからが鳥、境界はCになります。

 図録でも、アーケオプテリクスから鳥綱に含まれています。



 このように会場ではいろいろな恐竜や鳥が並べられ、鳥の進化の様子を見ることができます。

 しかし気をつけなければならないことがあります。

 展示は段階的な特徴を持った化石を並べているだけで、恐竜から鳥へと変化していく途中の化石を時代の順番に並べたものではありません。

 「進化の順」ではなく、恐竜から鳥への試行錯誤の結果が段階的に並べられているのです。




ネイチャースクエアのオオタカ




 実際、この中で一番古い化石は、ほとんど恐竜のシノサウロプテリクスではなく、かなり鳥のアーケオプテリクスだったりします。

 ですからよく見てみると、単純に恐竜から鳥へと変わっていったのではなく、それぞれ特徴がいろいろと混ざっています。

 それでも、少しずつ鳥に近づいているようにみえるのが、おもしろいところです。



 こんな感じで、恐竜は詳しくないけど、鳥に興味があるという人も楽しめるのが「スペイン 奇跡の恐竜たち」。

 化石は鳥の骨格の知識がないとわかりにくいかもしれませんが、直感的にわかるように生体復元模型も展示されています。

 足や羽のちがいは会場でじっくり見てください。



 そして会場の下のネイチャースクエアや本館の展示室には、鳥をはじめ様々な動物の剥製や骨格標本が展示されています。

 もちろん恐竜の化石もあります。

 いろいろ比べてみると新しい発見があるかもしれません。

 ネイチャースクエアは無料。
 本館も特別展のチケットがあれば当日は無料。

 行かないのはもったいない!



タグ♦ スペイン 奇跡の恐竜たち 白亜紀

■参考外部リンク■
スペイン 奇跡の恐竜たち/2015年3月21日(土・祝)~5月31日(日)/大阪市立自然史博物館
ようこそ大阪市立自然史博物館へ


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