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大阪南部にある府営の錦織公園(にしこおりこうえん)。
河内(かわち)地方の里山(さとやま)を利用した公園です。
園内には2箇所に様々な遊具を設置した広場がありますが、それ以外の場所の多くに河内地方の里山の
ビオトープが残されています。
そんな錦織公園の里山ビオトープに生える木を調べてみました。
といっても錦織公園は広すぎて全体を調べるにはものすごい時間がかかります。
というか、個人でやるのは現実的に無理です。
そこで、河内地方の伝統的農家を再現した「河内の里」にある里山を通る道の「山辺の道」で調べてみました。
調べるといっても本格的にやるほど時間もありませんし、許可も必要になるでしょう。
ということで、道沿いにある木のみを対象としました。
錦織公園の里山の植物の紹介は
こちらになります。
【錦織公園で大阪の里山の樹木を考えてみました。[樹木編]】

子どもたちが喜ぶ遊具がいっぱいの水辺の里
まず里山を知るためのキーワードをいくつか紹介します。
里山
「里山」は、簡単にいえば人の手が入った山や丘陵の林のことです。
自然というのは常にその場所で最終的に安定した状態の「極相(きょくそう)」に向かって変化していきます。
変化に応じて生える植物も住む動物も変わっていきます。
それを人間にとって都合のいい状態に留めるように手入れを行っているものが「里山」です。
地域によって利用方法は変わると思いますが、近畿ではシイタケのホダ木や炭の材料に薪(まき)、落ち葉は肥料に利用されています。
もちろん、山菜を収穫する場所としても使われています。
農業から離れる人が増え、肥料も量産されるものを使いはじめるようになった現在、里山には人の手が入らなくなってきました。
そういう里山は、その場所で安定した植物が茂る極相(きょくそう)に向かって変化していきます。
このように里山が自然の状態に近づいていくことは、普通「山が荒れる」といわれます。
しかし自然の視点で見れば、変化を止められている里山のほうが「山が荒れている」と言えるかもしれません。

池あり山ありの錦織公園
植物群落
そして自然の山であっても、人工的な里山であっても、草原などからいきなり森林がはじまるわけではありません。
様々な段階のビオトープが連なって変化していきます。
その隣り合った環境(ビオトープ)の変化していく境界のことを「エコトーン」といいます。
草原は木が生えず草ばかりの場所です。
それに対して森や林の中は高い樹木が枝葉を広げ、光は地面に届かず草もあまり生えません。
草原とはまったくちがう環境です。
森林のまわりの草原との境目あたり(エコトーン)には、低い木が生え蔓(つる)植物などが覆い、光や風が森林の中に入りにくいようにして、森林の中の乾燥を防いでいます。
そういった部分を「
マント群落」といいます。
マント群落のまわりにはもっと丈の低い草を中心とした植物が茂り、マント群落の足元を固めています。
これは「
ソデ(袖)群落」といいます。
低山をよく歩く人なら、ちょっとマイナーな道などで、登山口のまわりが低木や蔓植物などに覆われ、まるでバリケードのように中が見えなくなっていた経験があると思います。
でも、そのバリケードを超えて中に入ると、背の高い木が並び、低木も蔓植物もなくなり、見通しが良くなります。
このバリケードが森林を守っているマント群落。
このようにマント群落とソデ群落で森林の中に必要以上の光や風が入ることを防ぎ、安定した環境が守られているのです。
ですから森林の入り口と中とでは植物の種類が変わってきます。

河内の里のマント群落・ソデ群落(西側入り口)
陽樹と陰樹
森を作る樹木は「陽樹(ようじゅ)」と「陰樹(いんじゅ)」に分けることができます。
「陽樹」は発芽してから大きく育つまで明るい光を必要とする樹木です。
ですから森が出来る前、まだ草原だったころに生え、大きく育ちます。
ただ一度森ができてしまって地面に太陽に光が届かなくなると、種から育つことができなくなってしまいます。
「陰樹」は発芽してから大きく育つまでは陽樹ほど光を必要としません。
陽樹が育つことができないような薄暗いところで育つことができますが、大きくなるためには光が必要ですので、大きな木が倒れるなどして隙間ができるのを待つことになります。
また直射日光が当たらなくても、明るい日陰程度で育つことができる陽樹と陰樹の中間のような性質を持つものが
「半陰樹」です。

公園の代表的陽樹のコナラ
ですから、森林は陽樹からはじまり、極相になるころには陰樹ばかりになります。
陽樹が多いのはまだ新しい森林、陰樹が多いのは極相に近い森林ということができます。
ただしどの場合でも陰樹中心になるわけではありません。
環境によって変わってきます。
日本の里山の場合、普通は陽樹中心になりますので、長い間手入れをしなければ陰樹が多くなり、“荒れて”いきます。
次は、錦織公園河内の里の里山にある山辺の道の簡単な説明です。
出入口(マント群落)
山と山でない場所の境目には、山の中に必要以上の風や光が入らないように丈の低い木などが生えています(マント群落)。
河内の里では刈り込まれた草の場所から、丈の低い木と草が生え、地面の上から覆うように葉を茂らせています。
高くならない低木が多く、高木になる木も若くてまだ低い木が多い部分です。

河内の里の里山への入り口(東側)
途中の下と上
里山のメインとなるところで、もちろん一番広い範囲になりますので、上と下に分けました。
「下」はマント群落に繋がる部分、「上」は開けた頂上に繋がる部分です。
この部分の木々は光を求めて上へ上へと伸び、天井のように葉を茂らせますので、地面には光はほとんど届きません。
そのため常緑樹・落葉樹とも高木ばかりで、種類としてはコナラが飛び抜けて多くなります。
コナラはクヌギと並んで西日本の里山で好まれる樹木で、薪やシイタケのホダ木、木炭の材料などに使われ、落ち葉は腐葉土にして肥料になります。
つまりコナラが異様に多いのは、里山の証拠になります。

コナラの木に覆われた山辺の道の途中
頂上
「頂上」といっても標高差わずか10mほど。
展望台から「展望台東峰(仮称)」につながるので、地形的には尾根になります。
この部分は平らになっていて草が短く刈られているので小さな広場になっています。
つまり日当たりが良い場所。
頂上部分は開けているので本来ならマント群落が発達すると思うのですが、斜面に丈が低い木が生えることでマント群落のかわりになっているようです。

開けた頂上部分
ということで、錦織公園の里山の植物の紹介は
こちらになります。
【錦織公園で大阪の里山の樹木を考えてみました。[樹木編]】
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陰樹
マント群落
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