3月下旬、山焼直前の岩湧山(いわわきさん)山頂のキトラの茅場(かやば)。
大阪の南部にある低山の山頂に作られた茅場です。
「茅」は白川郷の合掌造りのように伝統的な建物の屋根などに使われるイネ科の数種類の植物で、岩湧山ではススキが育てられています。

山焼前の岩湧山山頂キトラの茅場
茅場ではほかの植物が育たないように定期的に焼きます。
岩湧山では3月の下旬から4月上旬に行われます。
山焼の直前ということでススキの多くは刈り取られていました。
お陰で山頂尾根に立つと見通しが良くなっています。
ここは野草の多いところなので、なにかないかなと思っていると、枯れ草が丸くなっているものが落ちていました。
何かの巣のようです。

ススキが刈られた後に“落ちていた”巣
これによく似た写真を見たことがあります。
カヤネズミの巣。
カヤネズミは背の高い草原に住む日本在来種の小さなネズミです。
名前のように「カヤ」原によく住んでいます。
カヤネズミ(萱鼠)
哺乳綱 ネズミ目 ネズミ科 カヤネズミ属
日本で一番小さなネズミ
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天王寺動物園のカヤネズミとカヤネズミの巣
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というわけでカヤネズミというと、下流の河原の芦原に住む生き物と思い込んでいました。
まさか川から離れた山の頂上に住んでいるとは思いもしません。
それに巣はカヤの上の方に作るのですが、見つけたのは刈られた根本。
複数の茅を取り込んで巣を作るので、刈られた衝撃で落ちできたとは考えにくく、これもイメージとは違います。

幅10センチほど
調べてみると、岩湧山の茅場にカヤネズミが住んでいることは確認されているようです。
また冬には根本に巣をつくるらしいということも。
ということでカヤネズミの巣でいいようです。
山頂でカヤネズミというのは変な感じがしますが、カヤネズミは水辺が好きなのではなく、カヤが生い茂る場所が好きなのだと思うと納得できます。
つまり、カヤネズミは水辺ビオトープの住人ではなく、茅場ビオトープの住人ということです。

高さ?5センチほど
しかし気になるのは、この茅場はこれから焼かれます。
もちろん、カヤネズミもただでは済みません。
どうなるのでしょう。

裏側には広葉樹の葉っぱが使われています
茅場の南側には焼かれないススキの原が帯状にあります。狭いですが。
きっと今はそこに逃げ込み、ススキが再び伸びてくるのをまっていることでしょう。
もちろん、逃げる場所があるからこそこの茅場に住み着いているわけです。

巣の中は細くて柔らかそうな葉が使われています
山頂のカヤネズミ。
ちょっと意外でしたが、よくよく考えれば納得もできます。
しかしこんな杉の植林の中にぽつんとある茅場に、一体いつどこからやってきのか。
謎は残りますが、そろそろススキも伸び、カヤネズミも戻ってきていることでしょう。
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