「恐竜博2016」ティラノサウルスとスピノサウルスの骨からわかることもたくさんあります!〈大阪文化館・天保山〉
いよいよ大阪会場の閉会が近づいてきました。
しかも日本最後の開催地ということで、泳ぐスピノサウルスと出会えるのもあとわずか。
グッズショップでは海洋堂フィギュアのガチャガチャを4種類コンプリートのセット販売もはじめていました。
もしかしたら、ほかにもお得なセットがあるかもしれませんが、きっと早い者勝ち! でしょう。
今までスピノサウルスのことばかりだったのですが、大人気のティラノサウルスもいます。
カナダで見つかった最大のティラノサウルス「スコッティ」。
大阪会場ではスピノサウルスと同じ部屋、向き合うように展示されていますので、二大肉食恐竜を見比べる事ができます。

概ね同じ“大きさ”の獣脚類肉食恐竜。
でも片方は陸上を二足歩行し、恐竜を食べる。
片方は水中を泳ぎ、魚を食べる。
同じ獣脚類の恐竜ですが、まったくちがう生活を送っています。
生活のあり方は、動物の姿を決めます。
ティラノサウルスとスピノサウルスの復元骨格にも生活のちがいが表れているか、くらべてみました。
まず全体を見ると、T字型に立っているティラノサウルスと、寝そべったような形のスピノサウルス。
2つの恐竜の生活のちがいをはっきりと表した姿です。

泳ぐスピノサウルス

全体の雰囲気は、重量級のティラノサウルスと、ちょっと華奢というかスリムなスピノサウルス。
ということは、ティラノサウルスよりもスピノサウルスのほうが軽いのでしょうか。
恐竜は大きな体を支えるため骨に空洞を多くして軽量化していますが、スピノサウルスは例外的に骨がつまっています。
これは水中での行動時間が長い鳥のペンギンや、哺乳類のカバなどに似た特徴。
これもスピノサウルスが水中で生活していた証拠の一つ。
ということは、意外と同じくらいの重さか、もしかしたらスピノサウルスのほうが重いかもしれません。
獣脚類の体重を支える2本の足(後肢)。
骨盤から大腿骨(ふともも)にその下の脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)に指と、足の骨は全体がティラノサウルスのほうが太くて大きい。
「スコッティ」とちがってスピノサウルスはいろいろな化石の寄せ集めで、足りない部分は近い種類の恐竜の化石を使い、それでも足りないところは予想して作られたもの。
ですから本当に足が細かったのかと疑ってしまいまそうですが、骨盤と足の骨が一緒に見つかったので、体に対して小さいことがわかっています。


ほかにも人間でいうと足の甲のところにある中足骨(ちゅうそくこつ)。
獣脚類の恐竜には3本ありますが、ティラノサウルスは3本が一体化し、真ん中だけが細くなっています。
これは重い体重で二足歩行する恐竜の特徴。
ところが、スピノサウルスはまとまっていますが、、真ん中はティラノサウルスほど細くはなっていません。


足に対して小さな手(前肢)のティラノサウルスと、足とそれほどかわらない長さのスピノサウルス。
ティラノサウルスはどう考えても歩くのには使っていたとは思えません。
それどころか、巨体にこの大きさでは使える用途は限られるでしょう。
それに対してスピノサウルスは足と手がよく似た大きさなので、水から出たときは四足で歩いていたと考えられます。

スピノサウルスの手と頭

恐竜を最も特徴つける、頭。
これも圧倒的に大きなティラノサウルス。
すべての方向に大きく、見るからに頑丈そう。
スピノサウルスは、長さはそれほど変わらないものの、小さく、特に幅が狭く、先の方へ細くなっていきます。
口の先まで太いのがティラノサウルス。
恐竜の頭蓋骨(頭骨)にはいろいろな穴が開いていますが、その一番後ろの穴は顎を動かす筋肉が通る側頭窓(そくとうそう)。
この穴のおかげで顎を動かす筋肉がたくさんつき、顎を大きく開けられたり噛む力が強くなったりします。
ティラノサウルスはこの穴が大きいのですが、スピノサウルスはそれほど大きくはありません。
ティラノサウルスは大きな恐竜の肉を噛み切るため強い力が必要で、スピノサウルスは小さな魚を丸飲みするのでティラノサウルスほど大きい必要はなかったでしょう。

小さいスピノサウルスの側頭窓

そしてスピノサウルスの特徴、背中の長い骨。神経棘(しんけいきょく)。
ティラノサウルスは、特に目立つほど大きくはありません。
恐竜によっては重い尾が垂れないように支えるため、神経棘を大きくして筋肉をたくさんつけることもあります。
しかし、人間の身長を超えるような骨をたくさんつけたスピノサウルスは、いくらなんでも全体に筋肉がついていたとは考えられません。
いろいろな説がありつつも、まだ謎が解けていないところの一つ。

ものすごく長いスピノサウルスの神経棘

雌にアピールするためとも言われますが、いくらなんでも大きすぎるでしょう。
しかもみんな骨。無駄が多すぎるように思います。
ですから、体温がどんどん逃げていく水中にいるので、太陽の光を受けて体を温めるほうが理にかなっているように思えます。
しかし骨に血管が通る穴や筋が少ないので否定されています。
いや、血を温めて全身に送るのなら、血管は骨の中じゃなくて皮膚の表面の方がいいのでは。
スピノサウルスの時代は、陸上にも神経棘を大きくした恐竜が現れました。
暖かいと言われる中生代でも寒冷化した時期ですので、体を温めた説は完全な外れ、ではないと思うのですが。

わからないこともありますが、骨は生き物の生活の様子を表し、化石からでもわかることは少なくありません。
ティラノサウルスとスピノサウルスの骨を比べてみると、まったくちがう生活をしていたことがよくわかります。
ただ、ちょっと気をつけなければならないこともあります。
展示されているのは化石の復元骨格。
もちろん、専門家が復元したのですから、ちゃんとした理由があってのこと。
しかし専門家とはいえ、生きている恐竜を見たことがありませんので、100%真実の姿というわけにはいきません。
その証拠に、私たちが知っている恐竜の姿は、常に変わり続けています。
たとえば尻尾を浮かせてT字型に立つティラノサウルスの姿も、昔は尻尾を引きずった「ゴジラ立ち」でした。
そのティラノサウルスも今では羽毛が生えてることもあります。

最新の研究成果による復元ですが、恐竜博2016のびっくりするようなスピノサウルスも、数年後にはもっとびっくりする姿に変わっているかもしれません。
その時にはきっと「恐竜博20XX」があるでしょう。

タグ: スピノサウルス ティラノサウルス スコッティ 恐竜博2016 大阪文化館・天保山 恐竜 化石

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