酸素と二足歩行の謎 「地球最古の恐竜展」と『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』
恐竜と二足歩行
謎に思っていることがありました。中生代のはじめに二足歩行をはじめた恐竜は、陸上で大繁栄しました。
しかし恐竜絶滅後の哺乳類は、ほとんどが二足歩行を選ばなかったというのに陸上で大繁栄しています。
ということは、二足歩行というのは陸上で繁栄するためには必要なものではなかったのでしょうか。
それならどうして恐竜は二足歩行で繁栄したのでしょうか。
「地球最古の恐竜展」

三畳紀の直立した二足歩行の
恐竜類のフレングエリサウルス
[地球最古の恐竜展(大阪)]
さらに驚いたことがありました。
去年から日本中をまわっている「地球最古の恐竜展」です。
メジャーな恐竜がひしめく白亜紀やジュラ紀ではなく、恐竜が出現した三畳紀がテーマの恐竜展です。
この三畳紀には、なんとワニの先祖やそれに近い仲間も二足歩行やその前段階かもしれない直立の四足歩行を始めていたのでした。
三畳紀に繁栄を始めた爬虫類は直立し、一部が二足歩行を始めていたのです。
謎が深まりました。
『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』

三畳紀の直立した二足歩行の
クルロタルシ類のシロスクス
[地球最古の恐竜展(大阪)]
そのなぞに答えてくれる本が見つかりました。
ピーター・D・ウォード著『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』です。
この本は地球の大気や海水の酸素濃度という視点で生物の進化をとらえたちょっと変わった内容です。
この本によると、恐竜が誕生した三畳紀は、生物が多様化したカンブリア紀以降で最低とも呼べるほど酸素濃度が低かったのです。
それが直立歩行を促したというのです。
直立した歩行

三畳紀の直立した四足歩行の
クルロタルシ類のファソラスクス
[地球最古の恐竜展(大阪)]
爬虫類の多くはワニやトカゲのように関節の形のせいで手足をあまり自由に動かせません。
そのため体を左右に曲げながら手足を前に出して進んでいきます。
体を大きく曲げますから、中に入っている肺の形も変わります。
これでは獲物を追いかける時も敵から逃げる時も、呼吸が動作に左右されてしまいます。
空気が必要な走って逃げているときに、自由に空気が吸えないのです。
しかし直立、しかも二足歩行をすると体を左右に曲げなくても手足を自由に動かすことができ、移動する動作が呼吸に影響しにくくなるのです。
薄い酸素をとにかくいっぱい取り込んですばやく動くためには、体の動きに左右されない呼吸が必要だったというわけです。
だから陸上の脊椎動物のなかで、空気の薄い三畳紀に二足歩行の爬虫類が出現したのです。
もしかしたら
もしかしたら、化石が見つかっていないだけで、恐竜などに限らずもっと多くの種類の陸上脊椎動物が二足歩行していたかもしれません?二足歩行のカエルとか? (まあ、そんなのはいないとおもいますが)
この低酸素状態の三畳紀の爬虫類化石を一望できる展覧会「地球最古の恐竜展」は2011年8月28日まで北海道の札幌で開催中です。

タグ: 地球最古の恐竜展 フレングエリサウルス シロスクス ファソラスクス 恐竜 クルロタルシ類 化石

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