フィールドワーク だけど専門家にはなったほうがいい
複雑な自然や環境のことを知るためには、専門だけにとどまらず、広い視野を持つことも大切と書きました。
でも、専門家になることも大切とも書きました。

専門家になることの欠点はすでに書きました。
有名な“ことわざ”にぴったりのものがあります。
「井の中の蛙大海を知らず。されど空の深さを知る」
専門家に求められることは「空の深さを知る」こと。
専門家が空の深さを語るときはきっと素晴らしい話でしょう。
でも、空の深さを知るだけでは、海のことなど想像もできません。
専門家が、海の話をはじめたときはトンデモになるかもしれません。

もちろん、専門家が職業として長い歴史があるということは、社会に求められているから。
また学問をはじめいろいろなことが発展するのは、専門家の方々の長年の積み重ねがあるから。
ですから、専門家は必要で、専門家になることもとても大切なことです。
専門家になるためには、専門的な知識と、様々な技術を学ばなければなりません。
たとえば、天気の専門家の気象予報士。
天気予報をするためには様々な天気に関係する知識だけでなく、気象庁が発表する様々なデーターから気象の状態を読み取り、天気を予測する技術が必要です。
普通の人にはない知識と技術が必要なのです。
もちろん、こういったことは天気予報以外にも様々な分野にも共通すること。
そういうった知識と技術を身につけるためには、専門の勉強が必要です。

専門の勉強をすると、専門家にならないよりも遥かに多くのことを知ることができます。
専門家になることは、とても大切なことなのです。
だめなのは、専門家になることではなく、専門家の狭い枠に収まって視野が狭まることなのです。
「井の中の蛙」になってしまっては、空の深さのことを知っても、海の広さのことはわかりません。
というわけで、今までの記事を読んで「専門家なんて勉強が難しいだけで、ならなくていいんだ!」と思ったのなら、それは大きな間違いです。
むしろ、専門家になるべき!
なのです。
もちろん、視野と知識は専門の枠をはるかに超え、いろいろな世界をイメージできる豊かな想像力がなければ、平気でトンデモ発言をする「井の中の専門家」になってしまうかもしれません。
概説書を読めばわかるようなことすら知らず、専門外の地衣類に罪をなすりつける一部の樹木医や造園業者。
自分が好きなチョウだけを守るために、専門外の地球環境を守っているかのように言うあるチョウの保護活動家。
このようなトンデモになってはいけません。

オオムラサキのように本来は身近だったチョウを保護するほうが
環境にはいいように思います。
専門家であっても、専門家でなかったとしても、「井の中の蛙」にならないよう、広い視野を持つようにしたいと思います。
ちなみに。
「井の中の蛙大海を知らず」は古代中国の思想書「荘子(そうし)」の言葉ですが、後半の「されど空の深さを知る」は後に日本で付け加えられたものと言われています。


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