棚田のいきもの 2016年2月の植物いろいろ
2月の下赤阪の棚田ビオトープで出会った生き物たち。
その植物で、花でも実でもロゼットでもないものを集めてみました。

春の七種(春の七草)は、1月7日に七種類の野草と野菜を入れたおかゆを食べ、一年の無病息災を願う行事です。
それがどうして2月の棚田なのでしょう。
それは、もともと旧暦の行事ということ。
旧暦の正月はだいたい1月下旬から2月中旬にかけて。
今年は2月14日。
そしてもう一つ。
春の七種のうち、5種類の野草は田んぼに生える雑草と言われます。
それならば、野草が多い下赤阪の棚田にもあるはず。
ということで、春の七種を探してみました。
芹 せり
和名:セリ
学名:Oenanthe javanica
セリ目 セリ科 セリ属
多年草
分布:北海道~九州
適地:湿地や畦道
タグ:セリ
水分が多いところを好み、棚田ではいつも水が染み出るようなところや水路の中などに生えています。


薺 なずな
和名:ナズナ 学名:Capsella bursa-pastoris
アブラナ目 アブラナ科 ナズナ属
越年草
分布:北海道~九州
適地:道端,公園,畑
タグ:ナズナ


別名「ペンペングサ」は、ハート型の果実を三味線のバチにみたてたもの。
空地にも生えるような結構しぶとい雑草。
御形 ごぎょう
和名:ハハコグサ 学名:Gnaphalium affine
キク目 キク科 ハハコグサ属
越年草
分布:北海道~沖縄
適地:人里の道端、田の畦
別名:おぎょう
タグ:ハハコグサ

植物っぽくないグニャグニャとした形と、綿毛に覆われて白っぽく見えるのが特徴。
棚田ではあまり多くない野草。

繁縷 はこべら
和名:コハコベ
学名:Stellaria media
ナデシコ目 ナデシコ科 ハコベ属
越年草
分布:北海道~九州
適地:道端,公園,畑
タグ:コハコベ
外来種のミドリハコベがよく似ています。
茎が赤いのがコハコベ。緑はミドリハコベ。

仏の座 ほとけのざ
和名:コオニタビラコ 学名:Lapsana apogonoides
キク目 キク科 ヤブタビラコ属
越年草
分布:本州~九州
適地:湿地を好む
タグ:コオニタビラコ

湿り気のあるところを好みますが、棚田ではあまり見かけません。
これは小さい葉が羽のように並んでいないので、コオニタビラコでないかもしれません。
菘 すずな
和名:カブ 学名:Brassica rapa var. rapa
アブラナ目 アブラナ科 アブラナ属
越年草
分布:アフガニスタン原産
適地:代表的な野菜
タグ:カブ

野菜のカブ。野生化はしていません。
葉の形からカブじゃないかと思いますが、自信はありません。
畑に植えられています。多くはありませんので自家用でしょう。
蘿蔔 すずしろ
和名:ダイコン 学名:Raphanus sativus var. longipinnatus
アブラナ目 アブラナ科 ダイコン属
越年草
分布:地中海原産
適地:代表的な野菜
タグ:ダイコン

ダイコン。野菜で野生化はしていません。
カブの隣りにありました。
こちらは葉の形からダイコンだと思います。
アジサイ(紫陽花)の冬芽
Hydrangea macrophylla
var. macrophylla
ミズキ目
アジサイ科
アジサイ属
落葉低木
タグ:アジサイ
春が待ち遠しそうにふくらんできています。

クヌギエダイガフシ(椚枝毬五倍子)
クヌギ(櫟)Quercus acutissima
ブナ目 ブナ科 コナラ属
落葉高木
タグ:クヌギ

クヌギにできたこぶ。
植物は寄生した生き物を覆うようにコブを作ることがあります。
「虫嬰(ちゅうえい)」「虫こぶ」とよばれ、古くは「五倍子(ふし)」と呼ばれていました。
これはクヌギエダイガタマバチというハチが寄生しています。
なぜかクヌギのドングリにそっくり。

虫嬰・虫こぶは専門的な本などでは「ゴール(gall)」と書かれることがあります。
虫こぶを作らせる寄生生物は昆虫からダニ、線虫にカビにウイルスと様々。
それで「虫」という言葉は適切ではない、ということのようです。
ところが、「虫」の旧字体「蟲」は、人間よりずっと小さい動物全般を指し、昆虫はもちろんトカゲやミミズだって含みます。
さら「三尸の虫」のように、得体のしれない見えない寄生生物のようなものも含みます。
『蟲師』の「蟲」ですね。
ということで、虫こぶに「虫」の字を使うことはまったく問題ありません。
虫こぶの専門家の方にとって「虫」=「節足動物」なのかもしれませんが、さにあらず。
ということで、専門家ではありませんのでわかりやすい「虫嬰」「虫こぶ」を主に使っていきます。
ヤマヤブソテツ(山藪蘇鉄)
Cyrtomium fortunei var. clivicola
ウラボシ目 オシダ科 ヤブソテツ属
常緑性

細かく切れ込んだ葉というシダのイメージを壊すシダ。
短剣のような先が尖った葉が並ぶシダ。
ヤブソテツの仲間はよく似たものが多いので、まちがっているかもしれません。
小さな葉の大きさや長さ、数、光沢の有無など色々なちがいがあります。
イノモトソウ(井の許草)Pteris multifida
ウラボシ目 イノモトソウ科 イノモトソウ属
常緑性

こちらも葉が切れ込まないシダ。
胞子ができる葉(胞子葉)と胞子ができない葉(栄養葉)があります。
上は胞子葉。
胞子は葉の裏、くるりと曲がった葉の縁にできます。
下の葉の縁がギザギザなのが栄養葉。


ノキシノブ(軒忍)Lepisorus thunbergianus
ウラボシ目 ウラボシ科 ノキシノブ属
常緑性
タグ:ノキシノブ

ただ細長いだけの葉のシダ。
家の軒に生えることが名前の由来。
でも、樹の幹や岩の上などいろんなところに生えます。
ネズミノオゴケ(鼠の尾蘚)Myuroclada maximowiczii
シトネゴケ目 アオギヌゴケ科 ネズミノオゴケ属

スギゴケのような蘚類のコケ。
小さな葉が茎にはりつくようになっていて、それがウロコに覆われたネズミの尾に見立てたことが由来といわれます。
葉を広げるほかの蘚類とはちょっとちがった雰囲気です。

冬だから植物はみんな枯れちゃう、ということはありません。
根雪にならないところでは。
さすがに目立つ花はありませんが、いろんな植物がしっかりちゃっかり生きています。
タグ♦ 下赤阪の棚田のいきもの目次
■参考外部リンク■
下赤阪の棚田 | 千早赤阪村観光協会
タグ: 下赤阪の棚田2016 下赤阪の棚田2016/2 2月の下赤阪の棚田の植物 カブ ダイコン アジサイ ヤマヤブソテツ イノモトソウ ネズミノオゴケ 春の七種

- 関連記事
-
- 棚田のいきもの 2016年4月中旬の乾果とシダ (2016/05/30)
- 棚田のいきもの 2016年2月の植物いろいろ (2016/03/22)
- 特別展「たまごとたね」は空を飛んで旅するタネがたくさん!〈大阪市立自然史博物館〉 (2015/09/04)