稲穂が色付く9月の下赤阪の棚田で出会った生き物も、これで終わりです。
今回は植物だけでなく、地衣類(ちいるい)という生き物も登場します。

よく実った9月下旬の下赤阪の棚田
掲載ページ数は文一総合出版『ポケット図鑑 田んぼの生き物400』初版第1刷のものです。
「出会った時期」は写真を撮ることができた時期のことで、その時期以外にはなかったということではありません。
植物界
被子植物門
双子葉植物綱
ゲンノウショウコ(現の証拠)
フウロソウ目 フウロソウ科 フウロソウ属
多年草
掲載:P229
出会った時期:中旬・下旬
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山でばかり見ていたのですが、田んぼにも生える雑草でもあります。
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ツリガネニンジン(釣鐘人参)
キキョウ目 キキョウ科 ツリガネニンジン属
多年草
掲載:P291
出会った時期:中旬・下旬
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名前のように釣り鐘のような小さな花は、薄紫できれいです。
棚田の梅畑のところで咲いていました。
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ヘクソカズラ(屁糞葛)
リンドウ目 アカネ科 ヘクソカズラ属
蔓性多年草
出会った時期:上旬・下旬
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茎や葉がくさい臭がするというのが由来です。
確かに葉をちぎると青臭い中に何か腐ったような臭がします。
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メヤブマオ(雌薮苧麻)
バラ目 イラクサ科 ヤブマオ属
多年草
出会った時期:上旬
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よく見かける雑草のカラムシとよく似ていますが、メヤブマオは茎に左右同じ所につく対生(たいせい)、カラムシは葉が茎に互いちがいにつく互生(ごせい)です。
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ウンシュウミカン(温州蜜柑)
ムクロジ目 ミカン科 ミカン属
常緑低木
出会った時期:上旬
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棚田の北側にはみかん畑が広がっています。
棚田には数本植えられていますが、棚田を作っている人の自家用でしょうか。
休憩の時に食べる用?
でも食べごろになるのは稲刈りのあとでは?
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カキノキ(柿の木)
ツツジ目 カキノキ科 カキノキ属
落葉広葉樹
出会った時期:上旬・中旬・下旬
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上は上旬で下は下旬。
あまり色は変わっているように見えません。
この後カキは稲刈りの頃から急に色づき始めます。
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クヌギ(櫟)
ブナ目 ブナ科 コナラ属
落葉高木
出会った時期:下旬
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どんぐりの袴(はかま)と言われる殻斗(かくと)はまだ緑色で柔らかそうです。
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単子葉植物綱
イネ目
イヌビエ(犬稗)
イネ科 ヒエ属
一年草
掲載:P217
出会った時期:中旬
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田んぼに生える厄介な雑草のひとつです。
無農薬栽培では根絶の難しい雑草ですが、逆に除草剤が多く使われていない証拠でもあります。
栽培ヒエの原種です。
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タイヌビエ(田犬稗)
イネ科 ヒエ属
一年草
掲載:P218
出会った時期:上旬
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こちらもポピュラーな田んぼの雑草です。
イヌビエと同じように除草剤が多く使われていない証拠でしょう。
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エノコログサ(狗尾草)
イネ科 エノコログサ属
一年草
掲載:P223
出会った時期:上旬・下旬
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「猫じゃらし」で有名な雑草。
田んぼではなく道端に生えていました。
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ススキ(薄)
イネ科 ススキ属
多年草
出会った時期:下旬
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道端に生えていました。
どこからか種が飛んできたのでしょう。
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メヒシバ(雌日芝)
イネ科 メヒシバ属
一年草
出会った時期:上旬
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どこにでも生えている雑草の一つ。
エノコログサと同じように道端に生えていました。
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クサスギカズラ目
ユリ目
その他の目
シダ植物門
ノキシノブ(軒忍)
ウラボシ綱 ウラボシ目 ウラボシ科 ノキシノブ属
出会った時期:上旬
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葉っぱが細かく分かれた(羽状複葉)イメージのあるシダですが、葉が1枚(単葉)がノキシノブの特徴。
家の軒に生えるのが名前の由来ですが、今は家よりも石垣や大きな木の幹に生えているのをよく見かけます。
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ヒメノキシノブ(姫軒忍)
ウラボシ綱 ウラボシ目 ウラボシ科 ノキシノブ属
出会った時期:上旬
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名前の通りノキシノブを小さくしたようなシダ。
草のように見えますが、花が咲かず種もできませんので、種子植物ではありません。
胞子で増えるのはコケと同じですが、茎の中に水や栄養を送る管の集まり(維管束)があり、その点では種子植物と同じです。
コケとちがい維管束(いかんそく)があるので大きく育つことができ、種子植物が繁栄するまでは数十メートルの高さまで育つシダがありました。
現在でも暖かい地域には高さ数メートルにもなるシダ植物が残っています。
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菌界
地衣類
地衣類にはちょっと説明が必要かもしれません。
あまり聞き慣れないだけでなく、ちょっとかわった生き物だからです。
地衣類は簡単に云うと、カビと光合成生物(シアノバクテリアや緑藻)が一緒になったものです。
細胞の中に光合成をする葉緑体がいる植物に対して、光合成生物を細胞に入れずに菌糸で囲い込んで共生させているのが地衣類。
高い山や南極など他の生き物が生きられないようなところにもいます。
その分成長はとても遅く、1年かけても数ミリから1センチくらいと言われています。
体を作っているのはカビやキノコの仲間ですが、見た目も育つところもどちらかと言うとコケの方に近いふしぎな生き物です。
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コガネゴケ(黄金木毛)
コガネゴケ科 コガネゴケ属
痂状地衣類
出会った時期:上旬
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粉をまぶし長に見える痂状地衣類(かじょうちいるい)。
樹皮につく地衣類です。
ノキシノブがついていた同じクヌギについていました。
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ヒメレンゲゴケ(姫蓮華木毛)
ハナゴケ科 ハナゴケ属
樹状地衣類
出会った時期:上旬
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草のように立ち上がった樹状地衣類。
「樹」とついていますが実際は2~3センチほどの大きさです。
先についている赤い部分には胞子が詰まっています。
小屋の横に倒れていた丸太についていました。
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4回続いた9月の棚田の生き物もこれが最後。
生き物の種類が多く、農薬や除草剤も少なく丁寧に守られていることがわかります。
作業者が通れるように舗装された道をちょっと歩いただけでこれだけの生き物と出会うことが出来ました。
専門的にじっくり探すともっとたくさんの生き物がいることでしょう。
棚田は景観だけでなく、生物の多様性でも大切なビオトープのようです。
タグ:
9月の下赤阪の棚田の植物
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下赤阪の棚田2013
下赤阪の棚田201309
棚田の植物1309
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