ちょっとかわった魚の使い方 実は“いきもの”がいっぱい!国立民族学博物館
世界中に住む人々の文化が展示されている大阪の万博(ばんぱく)記念公園の国立民族学博物館。
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東アジア北部の民俗展示コーナーにはユニークな服が展示されています。
革の服です。
万博記念公園の国立民族学博物館通称「民博」
もちろん、牛や馬のようによく使われる革でも、ミンクやウサギなどの毛皮でもありません。
当然、ヘビやワニの革でもありません。
もっとユニークな革の服です。
それは日本人にとっては馴染み深いもの。
魚の革です。
魚もそんなに珍しい種類ではありません。
日本のどこにでもいるわけではありませんが、だれでも食べたことはあるような魚です。
民博に展示されている謎の革の服
それは。
サケ。
塩鮭、新巻鮭のサケです。
昔の北海道は魚の皮で服を作らなければならないほど獣(けもの)の皮が不足していたのでしょうか。
それはわかりませんが、サケが季節が限られますが手に入れやすい大きな生き物であること、そして皮が丈夫で衣服に使えるからなのでしょう。
展示されているものは見た目も丈夫そうで、立派な外套(アウター)になりそうです。
実際サハリンアイヌは雨や雪を防ぐために使ったそうです。
今でもサケの皮はいろいろなものに加工されて使われています。
サケの革で作られたサハリンアイヌの服のアップ
鮭というと北海道のイメージが強いですが、川を遡上するのは日本海側では島根県、太平洋側では千葉県が南限とされます。
関東を流れる利根川(とねがわ)などは今でも風物詩となっていて、京阪神よりも身近な生き物だったのでしょう。
一年を72等分して日本の季節の移り変わりを表す七十二候でも、12月の下旬、冬至の直前が「鱖魚群(さけのうお むらがる)」。
「*鱖」はサケのこと。読みは「けい」。
淡水魚を表し、近畿ではポピュラーなオイカワのこととする説もあります。
ただ現在の七十二候は江戸時代に作られたものですので、サケと考えたほうがしっくりするでしょう。
ともあれ、サケは北海道だけでなく、日本の多くの場所で初冬に恵みをもたらす生き物だったようです。
*鱖:魚偏に厥[魚厥]
サケは川で産卵して寿命を終えますが、一生のほとんどは海で生活をします。
つまり、海のものを川の上流に運んでいく役割を担っています。
陸上で生活する人間もその恩恵を受ける生き物のひとつ。
鮭の革の服もそう言う海の賜物(たまもの)のひとつなのです。
タグ: 国立民族学博物館 アイヌ サケ 鮭魚群 七十二候 非生物系muse. 人文社会muse.
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