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〔よりぬきタグ〕 ◊巨古老樹◊金剛◊恐竜◊高野◊棚田◊錦織

コールド・ケース 骨は語る アスファルトの上に残った骨から

 山を歩いていると、時折事件と出会ってしまいます。
 その日もそうでした。
 2年前の10月。
 天見富士と呼ばれる大阪府河内長野市の旗尾岳(はたおだけ)と周囲の尾根をつなぐトレッキングルートを歩き、千早口駅へ向かう道の途中。

この記事には動物の骨の画像があります。


ここから少し行ったところが現場

 歩道のアスファルトの上に白骨が散らばっていました。
 時間がたっているのでしょう、毛は残っていますが、筋肉や内蔵はもうありません。
 1メートルほどの範囲に散らばっていること、毛が骨の下で地面にはりついているようなことから、この場所で死んだか、死んでそれほど時間が立たないうちにこの場所に置かれたかのどちらかでしょう。
 下山も終わって駅へ向かっている途中なのでどうしても早く帰りたくなってしまいます。
 とりあえず写真を撮り、その日は帰りました。

まるで恐竜の産状化石のように多くが失われています

 そして2年後。
 写真をもとにプロファイリングをはじめました。
 動物の種類は、哺乳類の解剖学的な知識を持つ人ならこれだけ骨が残っていればすぐわかるでしょうが、専門家ではありませんので考えていきます。
 毛があるので哺乳類。

尾のあたりには多くの毛が残っていました

 手足と思える骨の太さや長さなどからすると、中型犬くらいの大きさ。

 手のひらの骨の中指骨と足の甲の骨の中足骨の4本がほぼ同じ長さ同じ太さ、そしてなにより3つの突起のある裂肉歯をもっていることなどからも、食肉目(ネコ目)であることがわかります。

おそらく手

 この条件で日本の都市部周辺で一般的な食肉目の哺乳類となると、数種類に絞れます。

 大阪の金剛山地の西端の麓にいそうな食肉目は、イエイヌ、イエネコ、ホンドタヌキ、ニホンイタチ、テン、ハクビシン、アライグマくらいでしょうか。
 それにいないことになっていますが、目撃情報があるホンドキツネにニホンアナグマ。
 橈骨・尺骨(肘・膝から手首・足首までの骨)の長さからすると、イエネコ、ニホンイタチ、テンはなさそうです。

おそらく足

 候補はみんな同じ食肉目なので、骨も似ています。
 ましてや、生きている姿ばかり見ているので、骨から姿を想像することは困難。
 骨の細かいちがいを見ていくことになります。

 同じ食肉目の種のちがいを見分けやすい骨の一つは顎。
 上顎は頭蓋といっしょに無くなっていますが、下顎が残っています。
 先は失われていますが、裂肉歯から付け根まで残っています。
 下顎の頭骨につながる部分の形は種類によってちがいがあります。

先が欠けた右下顎

 この骨は頭骨に繋がるところが少し後ろに飛び出ています。
 そして下の部分が段になって先の方へ伸びています。
 この特徴が当てはまるのは。
 タヌキ。
 このあたりにいるとすればホンドタヌキ。

タヌキの剥製〈兵庫県立人と自然の博物館〉

 次は死因ですが、ここまでいろいろなものが無くなっていれば死因はわかりません。
 実は、ちょうど2ヶ月前に同じ道を歩きましたが、そのときにはまだありませんでした。
 死亡時期はこの2ヶ月の間でしょう。

 交通量はそれほど多くありませんが、対向2車線で他の集落とつながる道の歩道。
 夜間であれば道路の上のタヌキに気づくのはかなり近づいてからかもしれません。
 車にひかれた(轢死)ことは容易に想像できます。

 おそらく2ヶ月以内で文字通り骨と皮だけになっています。
 最初は肉食の哺乳類が体の筋肉や内臓を食べたのかもしれません。
 そのとき、いくらかの骨も無くなったでしょう。
 ただ、肉食哺乳類がここまできれいに骨と皮だけにすることはむずかしいでしょうから、あとは昆虫の出番。
 哺乳類の肉を食べる昆虫たちが集まってきて、徹底的に骨と皮だけにしたのでしょう。

 しかし、この骨がタヌキであること以外はすべて推測の域を出ません。
 今回も迷宮入りせざるを得ないようです。

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タグ: タヌキホンドタヌキプロファイリングフィールドサイン旗尾岳コールド・ケース

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コールド・ケース 跡は語る 数多くの足跡と羽毛から

 山を歩いていると、時折事件と出会ってしまいます。
 その日もそうでした。
 3年前の12月。
 その日は雪が薄く積もっていた金剛山。

現場近く

 谷筋を詰め、山頂を目指して斜面を登ったところで、出会ってしまいました。
 たくさんの、異常なつき方をした足跡。
 普通、山で出会う足跡は、山から登山道を横切って、また山に消えます。
 ところが、踏み荒らすようについています。

踏み荒らされたような足跡

 そして、幾つもの遺留品。
 事件です。
 しかも雪が積もっていない足跡。
 それほど時間がたっていないようです。

羽毛の上に残る謎の遺留品

 現場に出会った時にすること。
 情報収集と、プロファイリング。
 現場に残されたものなどから、行動を推定し、犯人を特定します。

 まず、被害者。
 遺体は見当たりません。
 遺留品は、羽毛。

様々な羽毛が飛び散る

 被害者は鳥です。
 しかも、赤褐色の長い羽根。
 まちがいありません。
 ヤマドリです。

長いヤマドリの雄の尾羽根

 ここで、ヤマドリが何者かに襲われ、羽根がむしり取られたのです。
 そして、別の場所に持って行って、食べられたのでしょう。

 そして、犯人は。
 金剛山は大阪平野と奈良盆地と紀の川に挟まれた衝立のような山地の山。
 住んでいる中型以上の脊椎動物の種類は限られます。
 ヤマドリを襲うような動物は、食肉目の哺乳類か、猛禽類。

 犯人特定の有力な証拠となるものの一つは、残された足跡。
 まだ雪が少なかったので、足跡は雪を踏み抜き落葉が見え、指や肉球の跡がわかりません。
 雪が残っている足跡も、不明瞭。

足痕がが重なっているのか不鮮明

 しかし、ただ通り過ぎただけかもしれません。
 羽毛のまわりに執拗についている足跡は、その主が犯人であることを示唆していますが、もっと証拠が必要です。

 食肉目と猛禽類では鳥を食べる時のちがいがあります。
 それは羽毛のむしり方。
 ワシタカ類の大型猛禽は、羽毛をクチバシでくわえて引き抜きます。
 それに対して、食肉目のイタチやキツネなどは口で噛みむしりとります。
 そのちがいがわかるのが、羽毛の付け根の羽根の部分。

 猛禽類が引き抜いた羽根はそのまま残ります。
 食肉目が噛みちぎった羽根は途中でちぎれます。
 そこで、このヤマドリの羽根は。


 

 羽毛の毛が終わるところで軸が終わっています。
 そこはギザギザ。
 見るからに噛みちぎったよう。
 猛禽類ではなく、食肉目です。

 ヤマドリはキジの仲間で、ニワトリくらいの大きさの鳥。
 日本にいる鳥としては、大きい方。
 ヤマドリを襲うだけの大きさの食肉目。
 ネコ、イタチ、キツネ、テンでしょうか。

金剛山のヤマドリの雄

 山なので、ネコではないでしょう。
 イタチは平野部の里山周辺の水辺を好みます。
 キツネは、金剛山地と周辺にはいないことになっています。
目撃情報がないわけではありませんが、いたとしてもかなり数が少ないでしょう。
 最後に残ったのは、テン。
 山に住むイタチの仲間で、山頂のライブカメラにもよく映っています。
 そして、足跡の大きさとも合います。

 見つけたすべての証拠や情報がテンに集約しています。
 犯人は、テンの可能性が極めて高そうです。
 ただ、金剛山に住むどのテンか、特定は極めて困難。
 迷宮入りせざるを得ないようです。

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タグ: ヤマドリテンフィールドサインプロファイリング金剛山冬の金剛山足跡コールド・ケース

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