特別展「スペイン 奇跡の恐竜たち」で恐竜と鳥の境界をさがしてみました!〈大阪市立自然史博物館〉
大阪市長居公園の自然史博物館で開催中の「スペイン 奇跡の恐竜たち」。
タイトルのように「恐竜」が展示されているので恐竜に興味がある人しか楽しめないのかな、と思ってしまうかもしれません。
いえいえ、決して恐竜だけではありません。
◆「スペイン 奇跡の恐竜たち」の記事をまとめてみる
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会場までの道を教えてくれる特別展恒例の幟
多くの恐竜が見つかっているスペインのラス・オヤスでは、恐竜以外に鳥の化石も見つかっています。
鳥です。
恐竜が含まれる爬虫類の爬虫綱と別の鳥綱に分類されていますが、鳥が恐竜から進化したというのは、専門家でなくても知っている人は少なくないと思います。
恐竜から鳥への変化を見られるように、世界中で見つかった鳥みたいな恐竜、恐竜みたいな鳥、そして鳥の化石や復元模型もが並べられています。
ということで、恐竜→鳥コーナーに展示されている化石と復元模型を展示順に並べてみました。
それに会場の展示や図録に書かれていた説明などもまとめてみました。
さあ、恐竜と鳥の境界は、どこにあるでしょうか。

羽毛がある復元に変わったペレカニミムス
会場では恐竜から鳥への変化については、このように説明されています。
1.羽毛が生える
例)シノサウロプテリクス
2.翼ができる
例)カウディプテリクス
3.羽ばたける
例)アーケオプテリクス
4.飛べる
例)コンコルニス
5.上手に飛べる
例)現在の鳥
鳥としては「3.羽ばたける」と「4.飛べる」が重要でしょう。
飛ばない恐竜にとっては羽ばたく、つまり前肢を左右に広げて体の前後に動かす必要はないはず。
翼で推力と揚力を生み出すために必要な風切羽(左右非対称の羽毛)が発達したのも「3.羽ばたける」。
「4.飛べる」では低速時の安定を生み出す小翼羽の発達と、軽量化のためでしょう、尾が短くなります。
「5.上手に飛べる」は羽ばたくための強力な筋肉をつけるための胸の竜骨突起の発達があります。
シノサウロプテリクス
分類:獣脚類 コンプソグナトゥス類時代:白亜紀前期 分布:中国 羽毛:チューブ状羽毛 顎:クチバシはなく細かい歯 尾:長い尻尾 後肢第1趾:後ろ向きだが小さく枝はつかめない | |
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これはどう見ても毛が生えた恐竜。 鳥には見えません。 | |
A | |
分類:獣脚類 オヴィラプトル類
時代:白亜紀前期 分布:中国 羽毛:左右対称の羽 顎:クチバシになっているが上顎に小さな歯 尾:羽が生えた尻尾 後肢第1趾:後ろ向きだが小さく枝はつかめない | |
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前肢には羽が生えてますが、やはり鳥というより違和感がある恐竜って感じ。 | |
B | |
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これだけ大きな羽がつくと復元模型ではかなり鳥っぽくなってます。 でも化石を見ると、まだ恐竜みたい。 | |
C
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飛んでる姿は鳥ですが、顔はまだ恐竜。 趾(あしゆび)は、かなり鳥っぽい。 | |
D | |
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化石はわかりにくいですが、復元模型ではもう鳥。 飾り尾羽の有無でオスとメスのちがいがわかるそうです。 ちなみに、この復元模型はオス。 | |
E | |
コンコルニス・ラクストリス
分類:鳥類 エナンティオルニス時代:白亜紀前期 分布:ラス・オヤス 羽毛:風切り羽 顎:クチバシに歯? 尾:尾端骨 後肢第1趾:後ろ向きで枝をつかめる | |
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ラス・オヤスで見つかったのですが、復元模型はありません。 残念。 趾は鳥そのものですが、足の骨の長さは鳥よりも獣脚類の恐竜っぽい。 | |
F | |
アホウドリ(信天翁)
分類:鳥綱 ミズナギドリ目 アホウドリ科 キタアホウドリ属時代:現代 分布:北太平洋 羽毛:風切り羽 顎:クチバシで歯は無い 尾:尾端骨 後肢第1趾:退化 | |
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大阪市立自然史博物館オリジナルの展示。 木にとまらない水鳥の例にもれず第1趾は退化しています。 もちろん、樹上を生活の場にしている鳥には長い第1趾があります。 |
さあ、どうでしょう。
会場の表示ではアーケオプテリクスまでが「獣脚類」。
コンフキウソルニスから「鳥類」。
Dに恐竜と鳥の境界があるようです。
復元模型を見てみると、アーケオプテリクスは鳥のふりをしている恐竜のようですが、コンフキウソルニスはもう鳥。
もちろん鳥と恐竜はなんとなく「雰囲気」で分けているのではありません。
「鳥」としての特徴の有無も大切。
ということで、図録に書かれていた鳥の特徴です。
1.脳が大きくなり、頭骨の癒合が進んでいる確かにこれからすると、コンフキウソルニスから当てはまりそうです。
2.手の骨が癒合し、骨の数が少なくなる
3.腰の骨が癒合している
4.尾椎が癒合し尾端骨になっている
5.胸骨が大きくなり竜骨突起が発達する
6.(肋骨に)かぎ状の突起がある

オニオオハシの全身骨格
趾の第4趾が後ろをむいて、樹上生活に適応しています。
ただ前足に風切羽が生え、後ろ足の親指がほかの指と向き合うようになったものを「鳥」とする場合もあります。
樹上生活になり、飛ぶことができるようになったのが「鳥」ということでしょう。
その場合は、足の第1趾のちがいでミクロラプトルまでが恐竜、アーケオケオプテリクスからが鳥、境界はCになります。
図録でも、アーケオプテリクスから鳥綱に含まれています。
このように会場ではいろいろな恐竜や鳥が並べられ、鳥の進化の様子を見ることができます。
しかし気をつけなければならないことがあります。
展示は段階的な特徴を持った化石を並べているだけで、恐竜から鳥へと変化していく途中の化石を時代の順番に並べたものではありません。
「進化の順」ではなく、恐竜から鳥への試行錯誤の結果が段階的に並べられているのです。

ネイチャースクエアのオオタカ
実際、この中で一番古い化石は、ほとんど恐竜のシノサウロプテリクスではなく、かなり鳥のアーケオプテリクスだったりします。
ですからよく見てみると、単純に恐竜から鳥へと変わっていったのではなく、それぞれ特徴がいろいろと混ざっています。
それでも、少しずつ鳥に近づいているようにみえるのが、おもしろいところです。
こんな感じで、恐竜は詳しくないけど、鳥に興味があるという人も楽しめるのが「スペイン 奇跡の恐竜たち」。
化石は鳥の骨格の知識がないとわかりにくいかもしれませんが、直感的にわかるように生体復元模型も展示されています。
足や羽のちがいは会場でじっくり見てください。
そして会場の下のネイチャースクエアや本館の展示室には、鳥をはじめ様々な動物の剥製や骨格標本が展示されています。
もちろん恐竜の化石もあります。
いろいろ比べてみると新しい発見があるかもしれません。
ネイチャースクエアは無料。
本館も特別展のチケットがあれば当日は無料。
行かないのはもったいない!

タグ: スペイン奇跡の恐竜たち シノサウロプテリクス カウディプテリクス ミクロラプトル 始祖鳥 孔子鳥 コンコルニス 鳥 大阪市立自然史博物館 spaindino-osaka

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