晩秋の錦織公園で見られるどんぐりの木(ブナ科)8種類の記事を公開した直後、もう1種類のどんぐりの木を見つけました。
ということで、新たに出会ったものを含めて錦織公園の9種類(IWO調べ)のどんぐりの木をあらためて紹介します。
ブナ科
┣クリ属
┃┗【クリ(栗)Castanea crenata】
落葉高木
モンブランケーキの材料にもなる食べる栗です。
「どんぐり」というイメージではありませんが、ブナ科の立派などんぐりの木。
里山では定番の木の一つなので、公園にもあちこちにあります。
元からあったものと植栽されたもの、両方があるのかもしれません。
ただ、盛んに集める人がいるので、クリの実を目にすることはありません。
中身の無いイガ(殻斗)は山のように見かけますが。
もちろん、公園の管理者の許可無くクリを大量に持ち帰るのは、やってはいけないことです。
普通にスーパーなどで目にするクリよりも小さいクリもあります。
山などに自生していて、「柴栗(しばぐり)」と呼ばれます。
クリの野生種と言われ、つまりお店で売っているクリは実が大きくなるように改良された栽培品種。
でも植物学的には、同じ「クリCastanea crenata」。
錦織公園では、小さなクリは未舗装の林の中で見かけますので、こちらは元から生えていたクリかもしれません。
┣シイ属
┃┗【ツブラジイ(円椎)Castanea crenata】
常緑高木
旧記事を書いた直後に見つけたどんぐりの木。
アク抜きをしないで食べられるどんぐりなので、里山で不作の時の食べ物(救荒植物)として育てられることもあります。
錦織公園では、食べられるどんぐり3種のひとつ。
ただし、ほかの2種はどんぐりができなかったり、木が小さく量が少なかったりで、それなりの量が集められるのはこのツブラジイだけ。
ブナのように殻斗(どんぐりのぼうし)が全体を覆っているのがツブラジイ。
ただ、ブナとイヌブナは殻斗の中にはどんぐり二つ。
ツブラジイやスダジイは、一つだけ。
同じシイ属のスダジイとは、同じ種とされることもあるほどよく似ています。
スダジイとくらべると、名前のようにどんぐりが丸くて小さい(上左)のがツブラジイですが、中には長め(上右)のもあり、ほかの特徴と合わせて考える必要があります。
ほかには、樹皮が平滑(ツブラジイ)と縦に裂ける(スダジイ)、幹は真っ直ぐ伸びる(ツブラジイ)とよく分枝する(スダジイ)などがあります。
錦織公園では、北東の山谷千樹の径の竹林の近くと、河内の里つつじの丘の鉄塔の近くにあります。
鉄塔付近は公園以前からの木が残されているとききましたので、救荒用に植えられていたものかもしれません。
錦織公園のものは、成長した木でも樹皮が平滑、途中での分枝がほとんどない、どんぐりは丸いものが多い、ということで、ツブラジイとしました。
┣ブナ属
┃┗【イヌブナ(犬椈)Fagus japonica】
落葉高木
大阪では山の標高の高いところに生える樹木。
ほんとうに高いところにはブナが生えますので、その周囲、杉が植林されていないところにブナやミズナラなどと混ざって生えているようです。
そんな木がどうして標高100メートル余りの里山公園にあるのかはわかりません。
ほかの種類の樹木のようですが、葉脈から分かれた支脈の先が凹むという、普通の葉と逆の葉縁はブナの仲間の特徴。
少なくとも、ブナ属なのはまちがいないでしょう。
標高の低いところでも育つことはできるようですが、ほかの樹木に負けてしまうので自生していない、ということも聞きます。
しかし、錦織公園ではほかの木々にあまり邪魔されない日当たりの尾根に生えているというのに、花もどんぐりも見たことがありません。
そしていつ見ても調子が悪そうで、気になります。
やはり温かいところは苦手なのでしょう。
ということで、このどんぐりを食べることは不可能です。
┣マテバシイ属
┃┗【マテバシイ(馬刀葉椎)Lithocarpus edulis】
常緑高木
温暖な沿岸部に自生する常緑樹。
街路樹に使われますが、ここには自生していなかったと思います。
ということで、石畳の里でしか確認できていません。
どんぐりが細長いのが特徴。
そしてアク抜きしなくても食べることができるどんぐり。
むかしは炒って食べたそうです。
ただ、どんぐりが熟すのには、およそ1年半が必要。
小さいのに時間がかかります。
錦織公園のどんぐりの内、アク抜きがいらない数少ないどんぐり。
木が小さく1箇所でしか確認されていませんので、誰かがどんぐりをまいたのかもしれません。
┗コナラ属
┣コナラ亜属
┃┣コナラ節
┃┃┗【コナラ(小楢)Quercus serrata】
落葉高木
公園内で一番多い樹木と言われるどんぐりの木。
大阪の里山では最もポピュラーな樹木で、葉は肥料、幹はホダ木や薪や炭などいろいろ利用されていました。
引き伸ばしたラグビーボールのようないかにもどんぐりらしい形。
ただし、形にはバリエーションがあり、アラカシのように丸いものからマテバシイのように細長いものまでいろいろあります。
殻斗(どんぐりの帽子)にはウロコのような模様があり、アラカシやシラカシと見分けることができます。
元から生えていたものもあると思いますが、多くが植林されたものでしょう。
里山ではよくある、切られた幹の周りから枝がたくさん伸びたおもしろい形の台場切りされたコナラは見られません。
┃┣クヌギ節
┃┃┗【クヌギ(櫟)Quercus acutissima】
落葉高木
近畿の里山ではコナラと並んでポピュラーな樹木ですが、錦織公園ではコナラほど多くありません。
どんぐりが大きく横から見ると四角、殻斗が反り返った太いトゲに覆われているのが特徴。
近縁のアベマキ似ていますが、ここにはないようです。
葉や樹皮はクリに似ています。
┃┗ウバメガシ節
┃ ┗【ウバメガシ(姥目樫)Quercus phillyraeoides】
常緑高木
常緑で、強い刈り込みにも耐えることができるので、垣根によく使われます。
ただ、そういうウバメガシにどんぐりはあまりできません。
鱗状の殻斗はコナラに似て、どんぐりはコナラ以上にラグビーボールのような形をしています。
2個セットで枝につき、マテバシイと同じように熟すのに1年半ほどかかります。
上質な木炭の材料としても有名で、炭焼きの盛んなところでは里山にもよく植えられるようです。
大阪南部や和歌山などでは海岸林によく生えます。
園内でも垣根に使われているところもありますが、大きく育っているところもあります。
特にどんぐりの森のはずれには、大きなウバメガシの小さな林があります。
┗アカガシ亜属
┣【アラカシ(粗樫)Quercus glauca】
常緑高木
人の手が入った照葉樹林でよく見かける常緑樹。
大阪丘陵部のほったらかしのままの森(極相)の主要な樹木と考えられます。
ということで、園内ではあちこちに大きいのから小さいのまでいろいろ生えています。
園内のコナラは植樹されて30年以上。
老木が多く、このままではアラカシだらけになると言われています。
どんぐりは心なしが真ん中より先のほうが一番太くなっているのが特徴。
でも、どんぐりによって差が大きいので単純にどんぐりの形だけでは見分けられません。
殻斗は横縞模様で、シラカシと同じ。
ウバメガシと同じ刈り込みにも強いようで、河内の里では垣根に使われています。
┗【シラカシ(白樫)Quercus myrsinifolia】
常緑高木
アラカシによく似た常緑樹どんぐりですが、錦織公園では少数派。
限られたところにしか生えていません。
どんぐりは中央あたりが一番太くなりますが、そんな感じのアラカシのどんぐりもありますので、ちょっと注意が必要。
葉もどんぐりもアラカシによく似て、なれないと見分けるのがむずかしい。
そんなとき、公園ではとりあえず「アラカシ」とすれば大体あっていると思います。
どんぐりがたくさんがまとまってつくのはシラカシの特徴。
名前は葉や幹が白いのではなく、木材になる部分(材)が白いことが由来。
「白」に惑わされないように。
ということで、新しく追加された錦織公園のどんぐり。
まだ生えていても不思議じゃないどんぐりはありますので、これからも新しい発見があるかもしれません!
■参考外部リンク■
錦織公園 | 大阪府富田林市 大阪府営公園
タグ:
どんぐり
クリ
ツブラジイ
イヌブナ
マテバシイ
コナラ
クヌギ
ウバメガシ
アラカシ
シラカシ
- 関連記事
-
theme : 樹木・花木
genre : 趣味・実用