万葉の昔の人々に愛された、日本の秋の花。
自然の中ではなかなか目にしなくなりましたが、植物園ではよく展示されています。
大阪南部の河内長野市にある花の文化園でも、ちょうど今、展示されています。

花の文化園の入口で出迎えてくれる大テラコッタ
「秋の七草」は今から1200年前の奈良時代に編纂されたの『万葉集(まんようしゅう)』に掲載された奈良時代初期の歌人の山上憶良(やまのうえのおくら)の2首(しゅ)の歌に詠まれた花々のことです。
その歌です。
秋の野に 咲きたる花を 指折(およびを)り かき数ふれば
七種(ななくさ)の花
(1537番)
そして次に7種類の花が詠まれます。
萩の花 尾花(をばな)葛花(くずはな)瞿麦(なでしこ)の花
姫部志(をみなへし)また藤袴(ふぢはかま)
朝顔(あさがほ)の花
(1538番)
萩(はぎ)
標準和名:ハギ
双子葉植物綱 マメ目 マメ科 ハギ属
落葉低木
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ツクシハギ
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いろいろな園芸品種が有り、わりと公園などに植えられていたりします。
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尾花(をばな)
標準和名:ススキ
単子葉植物綱 イネ目 イネ科 ススキ属
多年草
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種名不明
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荒れ地を好む植物なので、長い間ほったらかされた空き地などによく生えています。
秋の七草通りのススキはまだ咲いてなかったので、草食花壇の奥のススキです。
葉っぱが斑入りなので園芸品種のようです。
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葛花(くずはな)
標準和名:クズ
双子葉植物綱 マメ目 マメ科 クズ属
多年草
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これだけ金剛山で撮影
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駆除が難しい雑草王です。
ですから植物園で栽培しているのを見たことがありません。
秋の七草コーナーでも、クズを除いた6種が植えられているのが普通です。
ということは、鉢植えにしても管理が難しいほどの雑草王ぶりなのでしょうか。
ということでクズのみ金剛山で撮影したものです。
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瞿麦(なでしこ)
標準和名:カワラナデシコ
双子葉植物綱 ナデシコ目 ナデシコ科 ナデシコ属
多年草
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エゾカワラナデシコ
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「ヤマトナデシコ」と呼ばれることもあります。
ふつう「ナデシコ」と呼ばれるのは「カワラナデシコ」のことです。
エゾカワラナデシコはカワラナデシコと同じナデシコ属です。
カワラナデシコはまだつぼみでした。
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姫部志(をみなへし)
標準和名:オミナエシ
双子葉植物綱 マツムシソウ目 オミナエシ科 オミナエシ属
多年草
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藤袴(ふぢはかま)
標準和名:フジバカマ
双子葉植物綱 キク目 キク科 ヒヨドリバナ属
多年草
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朝顔(あさがほ)
標準和名:キキョウ
双子葉植物綱 キキョウ目 キキョウ科 キキョウ属
多年草
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「朝顔」についてはいろいろな説がありますが、現在はキキョウとすることが一般的なようです。
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そして秋の七草ではありませんが、同じように万葉集に詠まれた花です。
作者不明の歌です。
道の辺の尾花が下の思ひ草、今さらさらに何か思はむ
(2270番)
「道端の尾花(ススキ)の下に咲いている思草(ナンバンギセル)のようにいまさらなにを悩んでいるのですか」。
というような意味です。
思ひ草(おもいぐさ)
標準和名:ナンバンギセル
双子葉植物綱 ゴマノハグサ目 ハマウツボ科 ナンバンギセル属
一年草
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イネ科の植物を宿主とする寄生植物です。
こちらはヤドリギなどと違い緑色をしていませんので、栄養は完全に宿主に依存しているようです。
ススキの多さの割に野外では見かけないのですが、栽培はしやすいようで植物園でよく見かけます。
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今は身近でなくなった花も植物園では栽培展示してることがけっこうあります。
近くの植物園へ行って万葉の時代の秋を感じてみてもいいかもしれません。
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