【 ウミサソリ】

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特別展「生命大躍進展」には巨大ウミサソリとぞわぞわの節足動物がたくさん!〈大阪市立自然史博物館〉

 40億年の生き物が展示されている「生命大躍進展」。大阪展も残すはあとわずか。
 入ってすぐ、最初は虫の世界。
 5億年前のカンブリア紀の虫、バージェス動物群には今生きている動物のほとんどのご先祖さまがいます。

●今までの「生命大躍進展」の記事
【生命誕生から人類まで40億年の本物の証拠がたくさん!】
【5億年分のいろんな動物がたくさん!】
【カンブリア爆発のいろんな動物がたくさん!】

この記事にはの化石の画像があります。


右へ行っても左へ行ってもだいじょうぶ

 こういった生き物を見て思うのは、「虫」が多いこと。
 それも節足動物っぽい虫が。
 人類に繋がる脊椎動物(せきついどうぶつ)の進化がテーマなので、虫はちょっとずれてしまいますが、貴重な化石がこれだけたくさん見られる機会はそんなにないでしょうから、ちょっと脱線してみます。

 「虫」の中の節足動物は、単純なつくりのからだを特徴的に変化させて5つの大きなグループに分かれました。
 昆虫類とムカデの仲間(多足類)とエビの仲間(甲殻類)とクモの仲間(鋏角類)、そして絶滅した三葉虫類。
 ただ、カンブリア爆発の頃は、三葉虫以外はまだまだ発展途中で、かろうじて甲殻類(こうかくるい)や鋏角類(きょうかくるい)が現れつつあるくらいでした。

カンブリア爆発の三葉虫オレノイデス

 カンブリア紀に動物の種類が爆発的に増えた理由の一つが目の獲得にあることは、生命大躍進展のテーマでもあります。
 この時期、様々な種類の動物達が独自に目を獲得していきました。
 そしてその後の脊椎動物の大躍進には顎(あご)の発達があります。
 それは節足動物の発展にも関係があったのです。

大きな目を獲得したアノマロカリス

 「顎(あご)」は食べ物に噛み付いたり噛み切ったりする器官で、動物によって形や由来は様々です。
 脊椎動物は、魚の時期にエラ周辺の骨を顎に変化させました。
 節足動物は、たくさんあった足を変形させながら口のまわりに集めて顎にしました。
 昆虫やカニの口にある動くギザギザしたものがそうです。

カンブリア紀にすでに大きな顎を持っていたアノマロカリスの「顎」

ただし硬い三葉虫は噛み砕けなかったとも言われています
ちなみに足を変化させたものではないので
アノマロカリスは今の「節足動物」ではないともいわれます

 ところが、三葉虫とクモの仲間の鋏角類は、足を顎に変化させませんでした。
 顎がないということはどういうことかというと、硬いものや口より大きい物は食べることができません。
 噛み切るあごがありませんから。
 鋏角類はハサミ状の鋏角を口の近くに持ち、顎のかわりにしました。
 三葉虫は顎のかわりになるものがなかったので、泥の中の有機物を食べていたと考えられています。
 節足動物の中で最後まで顎を持たなかった三葉虫のみ絶滅したのも、顎の有無が関係しているかもしれません。

初期の節足動物の特徴を残していると思われるリーンチョイリア

「レアンコイリア」とされることもあります

 会場には最大の節足動物と言われる巨大ウミサソリの化石と復元模型が展示されています。
 ウミサソリは絶滅した鋏角類の仲間と考えられ、今いる生き物では、クモやサソリの仲間になります。
 鋏角類の特徴は、6対12本の「足」があること。
 6対の「足」は種類によって役割が変わってきますが、6対12本はかわりません。
 クモの足は4対8本というのが常識ですが、よく見えると頭の方に触角のように使っている足が1対2本。
 そしてもっとよく見てみると、口の周りに短い足のようなものが1対2本。
 合計6対12本です。

 展示されている人間より大きなウミサソリ。
 化石はちょっとわかりにくいので、復元模型を見てみましょう。
 先にハサミが付いた長い手が1対2本、歩く足が4対8本、ヒレのような足が1対2本。
 合計6対12本。
 確かに鋏角類です。

生態復元された巨大ウミサソリ

左側の足が数えやすい

 ところが、復元模型を下からのぞくと、口のところにギザギザの顎が1対。
 節足動物の顎は足が変化したもの。
 ですから、顎は足として数えると、7対14本。
 鋏角類ではなくなってしまいます。
 ヘンです。
 化石を見ても口がありそうなところに同じようなギザギザが見えますから、うっかり間違いではないようです。

復元模型のウミサソリの「顎」


巨大ウミサソリのアクチラムスの頭部のギザギザ(中央左の少し下)

上のギザギザは折れ曲がった鋏角?

 実は、鋏角類の前の2対の足(鋏角と次の足)の付け根が顎のように変化しています。
 内側に向かってギザギザの「歯」が生えているのです。
 なんか違和感があります。昆虫をひっくり返してもそんなもの見えません。
 節足動物は足は体の左右から生えているようなイメージがありますが、実は体の中心から左右に分かれてはえています。
 そして、歩く足以外にも、エラがつき、本当は2種類で1セット。
 それが無くなったり体の中に入ったりしたのが、今の多くの節足動物たちです。

 甲殻類でもカブトエビのような古い姿を残しているものは、左右の足の付け根で食べ物を挟めるようになっています(食溝)。
 カブトエビは甲殻類で顎を持っていますので、足の付け根の「顎」は食べ物をつかんだり、味見をしたりするようです。
 前の2対の足にのみ「顎」が残ったのが鋏角類なのでしょう。
 ただ、鋏角類の口は鋏角と次の足の付け根辺りにありますから、模型のウミサソリの「顎」の位置は後ろすぎることになると思います。
 生きているウミサソリは見たことがないので、あくまで今の鋏角類からの推測ですが。

拡大模型のカブトエビの顎と足の付け根の食溝(本館第5展示室)

 鋏角類のウミサソリが現れるのは今から4億6000万年前のオルドビス紀後期。
 カンブリア爆発から1億年以上も後。
 カンブリア爆発の動物たちの中には、鋏角類と考えられるサンクタカリスは、まだエビのような見た目をしていました。
 この1億年の間に今につながる姿の鋏角類が誕生したのでしょう。
 ちなみに、今回はサンクタカリスは展示されていません。残念。

 そんなことを考えながら、カンブリア爆発のバージェス動物と澄江(チェンジャン)動物とウミサソリを比べてみるのもおもしろいかもしれません。
 そして本館の常設第5展示室には、カブトエビの巨大模型があります。
 特別展のチケットで入れますので、時間があればぜひバージェス動物と見くらべてみてください。

■参考外部リンク■
生命大躍進展 人類誕生に至る40億年の壮大な生命進化の展覧会
ようこそ大阪市立自然史博物館へ

【年代層序表〈顕生代〉β2 動物と植物】

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タグ: 生命大躍進アクチラムスウミサソリオレノイデスアノマロカリスレアンコイリア鋏角類節足動物大阪市立自然史博物館seimeidaiyakusin

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サソリと「萬」とミクソプテルス


 先日、ある書道家の作品を見て気づきました。
 その作品は古代の甲骨文(こうこつぶん)甲骨文字(こうこつもじ))と呼ばれる今わかっている中で最も古い漢字を使った作品です。



この記事にはサソリ虫の化石の画像があります。





 先がちょっと尖った楕円形の中には模様のような×印。

 下には伸びた線は、シッポのように先が曲がっています。

 楕円の先からは左右にカニのハサミのように線が飛び出し先は内側に向かって何本も線が生えています。

 全体の雰囲気はサソリですが、手の爪が二本のサソリに対してまるでクシのようで、サソリというにはちょっと違和感があります。



ダイオウサソリの拡大模型 橿原市昆虫館常設展示(2011年)
ダイオウサソリの拡大模型 橿原市昆虫館常設展示(2011年)




 サソリのようでちょっとサソリとちがう生き物は、います。
 いや、いました。

 そうです。

 ウミサソリ。



ウミサソリのユーリプテルス(OCEAN! 海はモンスターでいっぱい2012年)
ウミサソリのユーリプテルス(OCEAN! 海はモンスターでいっぱい2012年)




 ウミサソリはいまから4億年くらいから2億年くらい前の古生代の海にいた節足動物の仲間です。
 名前に「サソリ」とついていますが、サソリの先祖というわけでもないようで、古生代に絶滅していまい、今はいません。

 そのウミサソリの中でも人間よりも大きい大型の種類の一つ。

 ミクソプテルスにそっくりです。



人間くらい大きいウミサソリのミクソプテルス(OCEAN! 海はモンスターでいっぱい2012年)
人間くらい大きいウミサソリのミクソプテルス
(OCEAN! 海はモンスターでいっぱい2012年)




 甲骨文(甲骨文字)というのは、百年くらいまえに見つかった数千年前の中国で使われていた文字で、今私達が使っている漢字の祖先です。

 甲骨文は2000年前の漢の時代にはすでに存在が忘れられていたことは間違いなく、失われていた文字です。

 古代エジプトのヒエログリフとよく似ていますが、ロゼッタストーンが見つかるまで数百年の間まったく解読できなかったヒエログリフに対して、見つかってわずか20年くらいで解読できるようになったのは、現在の漢字につながる文字だったから。

 形こそまるで絵のようですが、すでに漢字と同じ構造を持っていた立派な文字なのです。

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 よく漢字は「象形文字(しょうけいもじ)」と言われます。

 これは「六書(りくしょ)」と言われる漢字の分類のひとつですが、実は正しくなく、漢字のほとんどが複数の漢字パーツを組み合わせてできた形成文字(けいせいもじ)や会意文字(かいいもじ)で、象形文字はそれほど多くありません。

 それでも物の形を象った象形文字は漢字の基本。

 甲骨文ですらすでに「絵」というにはかなり簡略化されていますが、まだまだ元の形の雰囲気を残しています。



 そこで巨大ウミサソリのミクソプテルスそっくりの甲骨文です。

 もしかすると、実は2億年前に絶滅したと思われたウミサソリが4000年前の中国で生きていたのでしょうか!

 なんと漢字はオーパーツだったのでしょうか?!



甲骨文の「萬」殷(商)時代その1
甲骨文の「萬」殷(商)時代その1
甲骨文の「萬」殷(商)時代その2
甲骨文の「萬」殷(商)時代その2
殷(いん)は今から3000年以上前の中国の王朝です。
現在確認されている中で最も古い中国王朝になります。
中国では「商(しょう)」とされます。
甲骨文字は王朝の吉凶の占いなどに使われたシカの骨やカメの甲羅に刻まれていました。
※甲骨文字は四川辞書出版社の『甲金篆隷大字典』を参考にしました。



 この文字は「萬(まん)」。「万」の旧字。
 残念ながらサソリを象った象形文字と考えられています。

 草冠の「艸(そう)」は草のことではなく、サソリのハサミを表していたのです。

 実は「屮(さ)」は象形文字で、それが並んだ「艸」は両手をかざしている状態になります。

 それが時間を経て字体が変わっていくうちに草冠と同じ形になってしまったのです。

 草と関係がなさそうなのに草冠が付いている文字は、手を表していることもあります。



 ということで「萬」はウミサソリではなく、普通のサソリ。

 ウミサソリは中国ができるはるか以前に絶滅していたようです。



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